『24-TWENTY FOUR-レガシー』声優・鈴木達央さんインタビュー 偉大な先輩方あってのプロ意識とは?
海外テレビドラマの金字塔とも呼ばれる『24-TWENTY FOUR-』。1話で1時間、物語がリアルタイムで進行し、24話で24時間のドラマが完結するそのスタイルは、日本でも多くのファンが熱狂しました。
放映開始の2001年からシーズン8を経て、2015年、12話で描く「リブ・アナザー・デイ」まで続いたこのシリーズが熱心なファンの要望に応え、『24-TWENTY FOUR-レガシー』として復活。
新しく主人公になったのが、エリック・カーター。陸軍部隊の精鋭です。このエリックの声優を務めることになったのがアニメや吹替のみならず、様々な舞台で活躍されている声優・鈴木達央さん。最近では、アニメだけでなく、映画『パワーレンジャー』のザック/ブラック・レンジャー役を務めていらっしゃることも記憶に新しいと思います。
今回、アニメイトタイムズでは、事前に読者の皆さんから質問を募集しました。それらの質問を踏まえて、実際のアフレコ現場の様子や、普段の鈴木さんのストイックな姿勢の秘密など、たっぷり語っていただきました!
【プロフィール】
すずき・たつひさ 愛知県出身。出演作:アニメの代表作として『SERVAMP』椿、『Free! 』橘真琴、『うたの☆プリンスさまっ♪』黒崎蘭丸など。OLDCODEXのTa_2としても幅広いアーティスト活動を行っている。
先輩方が作ってくださったアフレコ現場
――たくさんのキャストの方とのアフレコだったと思いますが、現場はいかがでしたか?
鈴木達央さん(以下、鈴木):まずは、今までの『24』に出られている方がたくさんいらっしゃったので、「吹替版『24』としての流れをどういう風に作っていくか」という地固めを皆さんが最初にしてくださったというのがとても大きかったですね。
『24』のシリーズは『24レガシー』で初めて関わらせていただいたんです。その中でオレ自身がどうやってエリックとして声を出したらいいか、というところに対して、皆さんに「まずはここにどんと座ってくれれば大丈夫だから」っていうお膳立てをしていただいた感じです。といっても、別に物理的に何かをやっていただいたというわけではないんですけれども、気持ちの面で物凄くやりやすいように、スタジオに迎え入れていただけたなと思ってます。
『24』は、シリーズとしても長い歴史があり、なおかつシリーズがひと段落しており、転換に差し掛かるところでもあったので、「どのように関わって行けば良いのか?」という、本当に大きな不安がありました。
その空気を察してか、みなさんに「楽しいシーズンにしていこうね」っていう現場を作っていただけた感じです。
それはもう、加瀬(康之)さん(エリックの兄、アイザック・カーター役)や、山像(かおり)さん(CTUの元局長でエリックの指揮官、レベッカ・イングラム役)。そして今まで演出として『24』シリーズの吹替を録っている神尾さんを始めとする、スタッフの皆さん。それぞれの方に受け入れていただいたっていうところが凄く大きかったですね。
試されるのは「人間力」――背中から学ぶこと
――今回のインタビューは、読者の方から鈴木さんに聞きたいことを募って質問を作ってきました。その中からいくつか質問させていただきます。まず最初に、「アニメと吹替の違いはありますか?」と頂いています。
鈴木:テクニック的な違いっていうのは大きくあります。
声を当てるという部分だと、吹替の場合は、「僕らと同じように息をしている、ただ国籍の違う役者たちが作ってきたものを我々が日本語に吹替る」という作業なので、(画からくる)呼吸にあわせることから始めます。
まずはエリックが持っている、彼独自の息の仕方のタイミングに合わせました。
キャラクターを作るという部分では、ジャック・バウアー(『24』シリーズの主人公。CV:小山力也)との違いであったりだとか、後はエリックの所属しているレンジャー部隊とはどういう仕事をしているのか、エリックはどういう任務を請け負うのか、という点も含めて、細かな部分を自分で調べました。その中でエリックの「声」のどこに説得力を乗せられるのかを探すこともやりました。
キャラクターの事を考え抜くという事は、アニメでも同じことをやります。なので、アニメと吹替の厳密な違いっているのは無いんです。けれども、吹替の方は「人が演じている」という真実味みたいなバランスが、アニメよりも多いと思います。吹替の方が「演じる役者の人間力みたいなものが試されている」という実感はありますね。
お世話になっている先輩方の偉大なる背中を見ていても「人間力」の部分は感じますね。皆さん、人としての立ち振る舞いや、力強さみたいなものがある。なので、その人間力の強さがあってこそ、どんな仕事をされてもブレることなく自分本来の良さを出し切っていると思うんです。
今回、『24レガシー』という作品に参加して、アニメと吹替の違い、自分が見えていなかった部分、無自覚であった部分を改めて確認できました。
『24レガシー』は、「自分の持っている一個人としての人間力」の大切さを強く実感させてくれた作品ですね。
▲鈴木さんの吹替は、こちらのビデオで確認できます。
ベストなパフォーマンスのために――プロ意識とは!?
――次も読者の方からの質問です。今回の収録も長かったと思うのですが、喉のケアはどのようにされていますか?
鈴木:喉のケアは特にしていなかったですね。プロとしてこの仕事を16年ほどやらせていただいてはいますが、まだまだ見えてない部分もあります。
それよりも、より良いパフォーマンスを出すために「どう体を作るのか」や「どのように声をいたわるのか」、「どうやって、より身体を強くしていくのか」みたいな部分を日常的に考えるようになりました。
これは、プロ野球選手のトレーニングに近い感じです。シーズンオフで体を作り、シーズン中は試合で体を作りつつも、並行して必要な休息をとる。そして、つねにベストなパフォーマンスを発揮するという感じです。なので、特別な喉のケアをすることは無いですね。
ケアというよりも、パフォーマンスを大切にしていて、日常的な体との向き合い方だとか、声が出る原理や、どういった状態での声が安定して出るのかとかいつも考えています。
――なるほど。鈴木さんからみて、体を鍛えることと声を出すことって繋がっているんですか?
鈴木:繋がります。
――全身鍛えている、ということでしょうか?
鈴木:全身というか、ポイントポイントですね。
専任のトレーナーについてもらっていて、その人と話し合いながら調整しています。ボディコントロールのプロなので、身体のバランス、筋肉の使い方、そのすべてを分かってますね。なので、今の自分の調子と照らし合わせながら、ベストコンディションをつねに作っていっている感じです。
――読者の方からの「なぜそんなにストイックなんですか」と質問も頂いているのですが、鈴木さんは本当にストイックですね。
鈴木:そうですか?
でも、オレはそれがプロっていうものだと思ってます。というのも、それは先輩方の姿を見てきたからなんです。
中には国民的アニメと呼ばれているようなシリーズも、たくさんありますがみなさん何十年も演じているんです。続いている事が普通になりすぎて、あまり注目されませんが、そういった方々は、何十年もの間、同じ声を毎週出し続けているんですよね。
『24』シリーズのジャック・バウアーだと、小山力也さんは10年近く演じているんです。
これって、凄いなって思うし驚異的だとも感じます。同じ声優としては「怖いな」っていう想いもあります。
――確かに、自分は歳を取るけれども、キャラクターによっては歳をとりませんしね。
鈴木:そうなんですよ。しかも、演じるキャラクターによっては、毎週収録があります。怖いですよね。
後輩からすると、そんな大先輩を超えないといけないんです。もし、ボディコンディションができていないと、先輩たちに食らいつくことも難しいんです。もし、追いつけないとなると、役者として自分から舞台から降りることになってしまう。そう考えると、自己管理してより高い舞台を目指すのが「プロ」という仕事だと思うんです。
例えば、プロ野球選手の場合、何度も調子を崩していると故障者リストに入ってしまう。故障者になると一軍には上がれず二軍に行ってしまいますよね。再度、一軍あがってもつねにベストコンディションを求められる。これは、プロとして当然のことです。
――声優業務もプロスポーツ選手を変わらない意識が必要ということですね。
鈴木:この仕事って、言い訳がきかないんです。作品が世に出たら、やり直しはできませんよね。だからそういうところはすごく、ストイックになってしまうんです。
こういった考えに行き着いたのも、やはり偉大な先輩方の背中を見て、「先輩方と並びたい」という想いと、「先輩方ができているんだから自分にもできる」という決意が、自分の中にあるからでしょうね。
エリックのブレてしまうからこその人間味
――それでは最後に、『24-TWENTY FOUR-レガシー』で、好きなシーンを教えてください。
鈴木:エリックは、元レンジャー部隊で、恋人のために平穏な暮らしをしていたのですが、そんな中で事件に巻き込まれていくんです。巻き込まれていく中で、闘争の中で生きる「銃を持っていたい自分」と、恋人のために日常を続けたい「銃を持ちたくない自分」が混在しているんです。
そんなエリックだからこそ、「恋人の元に帰りたい」といったどこか甘えにも似た部分があるのが愛らしく、人間味を感じられます。そういった彼の、日常への憧れというのが垣間見えるシーンを数話のうちにポツポツと観られます。エリックの選択は必ずしも良い方向に行くわけではないのですが、そういった「悩みの中で覚悟の無い選択をするシーン」が、個人的には凄く好きですね。
――ありがとうございました!
[取材・文章:山川温]
作品情報
「プリズン・ブレイク」と海外ドラマの双璧として今なおファンを魅了し続けている大ヒットリアルタイム・サスペンス「24 -TWENTY FOUR-」が再始動!
全米で放送されるや否か「24」史上最高視聴者数獲得!
キーファー・サザーランドを含む最強のオリジナルスタッフが、注目の若手スター コーリー・ホーキンズ(映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』、映画『キングコング: 髑髏島の巨神』、「ウォーキング・デッド」ほか)、ミランダ・オットー(映画『ロード・オブ・ザ・リング』ほか)、ジミー・スミッツ(映画『スター・ウォーズ』ほか)らを迎え、史上最高のスケールとパワーで、“リアルタイム進行”はそのままの12話完結で描く。史上最凶のテロリストに主人公エリックとCTU(テロ対策ユニット)が挑む。エドガー・スタイルズのいとこやトニー・アルメイダが登場し、前作との関係も続々と明かされる。
【キャスト】
エリック…コーリー・ホーキンズ(CV:鈴木達央)
レベッカ…ミランダ・オットー(CV:山像かおり)
ジョン…ジミー・スミッツ(CV:土師孝也)
アイザック…アシュリー・トーマス(CV:加瀬康之)
アンディ…ダン・ブカティンスキー(CV:木内秀信)
各社、配信サービスで現在配信中。詳細は公式HPへ。
>> 海外ドラマ『24 -TWENTY FOUR- レガシー』公式サイト
配信情報
アマゾンプライムにて現在配信中です(2018/9/25現在)。もちろん、吹替版もあります。
プライム会員の方は無料です。まだの方はぜひチェックしてみてください。
「24 -TWENTY FOUR-」史上最高視聴者数獲得!キーファー・サザーランドを含む最強のオリジナルスタッフが、注目の若手スター コーリー・ホーキンズ、ミランダ・オットー、ジミー・スミッツらを迎え、史上最高のスケールとパワーで、 "リアルタイム進行"はそのままの12話完結で描く。史上最凶のテロリストに主人公エリックとCTU(テロ対策ユニット)が挑む。