アル劇一の女子力を誇ると噂の豊洲ダイスケからの甘い差し入れ――「ツキノ芸能プロダクション」所属『劇団アルタイル』ショートストーリー連載第37回！

2.5次元芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に設立されたバラエティタレントユニット『劇団アルタイル』。歌もダンスもお芝居も……というマルチなタレント活動をする彼らの日々を、ショートストーリーと音楽でお届けする連載です。

今回は、心優しく、包容力がカンスト気味の豊洲ダイスケを中心としたストーリーです。最近疲れがちなメンバーを労るために、ダイスケが用意したものとは……？

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劇団アルタイル『Move On Easy』

【あらすじ】
レッスンや仕事に追われ、疲れ果てているメンバーたち。そんな彼らに、甘い差し入れをしてくれたのは、アル劇一の女子力を誇ると噂の豊洲ダイスケだった。

【ストーリー】
　夕方、ダイスケが寮に戻ってくると、同期メンバーたち全員が共有ルームに勢ぞろいしていた。
「あー……ダイスケだ、おかえりぃ」
「ただいま。……ノブアキ、ずいぶん疲れてるね」
「今日、全体レッスンのあと収録行ったらヘトヘトでさぁ……」
　ため息交じりに言ってから、ノブアキはソファの上で思い切り伸びをする。
「俺は、レッスンだけでも結構しんどかったな。収録も乗り切ったなんて、ノブアキ、すごいよ」
　やんわり言ってジュンペイが笑うが、ノブアキはくちびるを尖らせる。
「けどさぁ。イズモなんか、レッスンのあとドラマの現場に直行してんだぜ？」
「そーやって、なんでもイズモくんと張り合っちゃって。ノブアキくんってば可愛い★」
「うっさいなータイキ。『ほんとに可愛いのは僕★』とか思ってるくせにー」
「えっ、違うよ。僕だけが可愛いんじゃなくて、世の中には可愛いものがたっくさんあって、その中でも僕が一番、サイコーに可愛いんです！」
「ハイハイ……」
「つーか、昨日のレッスンもけっこーきつかったろ。別にそんな無理して詰め込まなくてもいいんじゃね？」
　ショウゾウの言葉にカズキも頷く。
「鍛えても、休まないと筋肉だってつかない」
「そーそーそれ！」
「そーなんだけどさぁ。目の前でそれ以上をやってるヤツがいるとさぁ。負けてられない、とか思わない？　イズモたちはやっぱ場慣れしてるっつーか、違うよなぁ……たった１年がマジデカい……」
　ノブアキが、ソファに突っ伏す。返事はなかったが、みんな同じ思いでいるのが伝わってくる。
（疲れると、気持ちも下を向くからな）
　でも、ちょうどいい。準備をしてきた甲斐があった。
「俺、あたたかい飲み物をいれてくるよ。ちょっと待ってて」
　軽く言い置いて、キッチンへ向かう。

（バレてない、かな？）
　誰もあとをついてこないことを確認して、ダイスケはホッと胸をなで下ろす。
（「これ」、気に入ってくれるといいけど）
　コソコソと準備をしながら、ふと、口許から笑みがこぼれた。
（ただいま、か）
　共有ルームのテーブルに置かれた、読みさしの文庫本はたぶんカズキのもの。カラフルなクッションはタイキのお気に入りで、くたくたのブランケットはタツヤの愛用品。それから、窓際へ持ち込まれたショウゾウのエアロバイク。その隣には、ノブアキお気に入りの観葉植物が鎮座している、そして、ときどきみんなのリクエストで、ジュンペイがバイオリンを弾く--。
　引っ越してきた当時、小綺麗でよそよそしく思えた共有ルームが、いまは陽だまりみたいに温かい。
（「家」って、みんなで作るものなんだな）

　トレイに６つのマグカップを乗せて戻ると、タツヤが「甘い匂い」と呟いてひょこっと立ち上がる。
「その、生クリームが乗ってるのがタツヤの。砂糖を足しといたからね」
「……俺の？」
「きみ、甘いのが好きでしょう。タイキのは右側の、マシュマロが乗ってるやつ」
「え、うん。ありが…………あ？　あぁああああ！！　待って待って、これ、もしかして！！」
「なんだなんだ？」
　ショウゾウが立ち上がってトレイを覗き込む。
「？　ダイスケさん。これ、ココアだよね？」
　首を傾げるジュンペイに、にっこり笑う。
「ちょっとだけハズレ」
「ホットチョコレート！！　でしょっ！？」
　勢いよく言うタイキに「アタリ」と笑う。
「そろそろバレンタインデーだからね」
「バレンタイン！？　そうだった！」
　声を上げて、ノブアキもソファから立ち上がった。
「男からのチョコが一番乗りか……いや、本番は来週だけど……」
「しかもこれ、ただのホットチョコレートじゃないよね。一人ひとり、トッピングが違う……」
「ここのところ、みんなお疲れだからね。あ、ナッツが乗ってるのがジュンペイので、シナモンはノブアキの、ショウガを散らしたのがカズキのだよ」
「ダイスケ、お前、マメだなぁ！」
「みんなのぶんのチョコを作ろうとしたら、ちょっと買いすぎちゃったんだ。だから、消費してくれると助かるな」
　持ち帰ったサブバッグを開いて、みんなに中身を見せた。
　製菓用のチョコレートの塊と、包装用のリボンやセロハンが大量に入っている。
「本番までには、ちゃんと手の込んだものを作るつもりだから。今はこれで許してね？」
「ええええ、ウッソ！　女子力たかい！！」
「毎年、妹に作ってくれってせがまれるから、うちでは恒例行事なんだ。……あ、そうだ。一期生へのチョコには、皆でひと言ずつメッセージを書かない？」
「いいな、書こうぜ！」
「きっとみんなビックリするね」
「ねーねー、とりあえずこれ飲もうよ。冷めちゃう！」

　口々に言って、みんなの間に笑顔が広がってゆく。
（これからみんなで、いくつ「いつもの景色」を作れるかな）
　同じ目標に向けて毎日走って、みんなで、ここへ戻って来る。元気いっぱいの日も、疲れて動きたくない日も、可能性が嬉しい日も、できないことを数えて悔しい日も。

　毎日、毎月、毎年。
　全部積み重ねて、新しい毎日を作っていく。

今回登場した人物をご紹介！

◆豊洲ダイスケ（CV：仲島大輔）
物腰穏やかで心優しく、常に細やかな気配りを忘れない。妹たちのワガママも笑顔で叶える包容力の持ち主。

◆麻布ノブアキ（CV：岡延明）
利発で裏表がなく、はっきりとものを言うタイプ。自信家で負けず嫌いだが、自分に非がある場合はすぐに謝ることのできる素直さを持つ。

◆蔵前カズキ（CV：寺下知輝）
外見・内面ともに大人びており、真面目で芯の強い性格。口数が少なく、感情表現も苦手だが、そのぶんストレートな言動をとる。

◆駒込タイキ（CV：熊谷大樹）
天真爛漫で、誰からも愛される天使……というイメージは、完璧な計算と徹底的なセルフプロデュースによって支えられている。ゆるふわ猫かぶり系男子。

◆中野タツヤ（CV：飯塚達哉）
独創的な思想と言動によって、周囲を惑わす超絶マイペース人間。時折、表現者としての才能を垣間見せることも。

◆森下ショウゾウ（CV：田村昇三）
戦隊ヒーローに憧れる熱血漢。竹を割ったような性格で、年上には可愛がられ、年下には慕われる。

◆両国ジュンペイ（CV：馬場惇平）
影が薄く、個性のない自分を変えるために入団した。文武両道で責任感の強い優等生タイプ。

『劇団アルタイル』最新情報

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