『映画プリキュアスーパースターズ!』のキーパーソン、クローバー役の声優・小野賢章さんインタビュー。「約束の大事さが伝わったらいいな」
記念すべき「プリキュア15周年イヤー」、メモリアルイヤー最初の「映画プリキュア」は出だしも好調です!
本作では、『魔法つかいプリキュア!』『キラキラ☆プリキュアアラモード』『HUGっと!プリキュア』という直近3世代のプリキュア総勢12人が勢揃い。世界をウソだらけにしようとする怪物・ウソバーッカと戦います!
物語のテーマは『約束』。『HUGっと!プリキュア』の主人公の野乃はな(キュアエール)が幼い頃に果たせなかった約束を発端とする物語の中、キーパーソンとなるのが本作のオリジナルキャラクターであるクローバー。演じるのは、子供の頃、妹さんと一緒に『ふたりはプリキュア』を観ていたという小野賢章さんです。
そこで、初めての『プリキュア』シリーズ出演を果たした小野さんにインタビュー。クローバーのことや、アフレコでの驚きのできごと、などについてお話を伺いました。
息成分を多めにウィスパー気味な感じかな、とか想像しつつやってみた
──小野さんか演じられているクローバーとは、どのようなキャラクターですか?
小野賢章さん(以下、小野):不思議な世界に住んでいる妖精のような雰囲気の男の子です。その世界は、元々はクローバーが一面に生えている綺麗な世界だったのですが、色の無い灰色の世界になってしまっています。そして、クローバーは、はなに出会う前から外の世界に出られなくなっていて、いろいろな事を諦めているような感じの子です。
──演じる際には、どのようなことを意識されましたか?
小野:見た目が幼くてすごく可愛いので、役をいただいた時から、声をどうしようということは悩んだところではありました。この見た目から、声は高い感じかなとはなんとなく思っていて。物語としては「約束」というキーワードがあり、キャラクターの雰囲気は、ちょっと儚げで不思議な男の子という感じだったので、男成分は最大限抑えて、息成分を多めにウィスパー気味な感じかな、とかいろいろと想像しつつ、僕の持てる限りの儚げ感を出しました(笑)。
──では、アフレコが始まってからは、役を掴むまで、あまり時間はかからなかった?
小野:そうですね。最初に監督から役柄や作品の雰囲気などを すごく丁寧に説明していただいたので、収録が始まってからは、あまりリテイクすることもなく。サクサクと進んで、逆に不安なくらいでした。
──予告が公開された時、クローバー役のキャストは未公表だったため、台詞を聴いたアニメファンの間で、「クローバー役は誰?」と話題になっていました。そういった反響は届いてましたか?
小野:届いていました。僕としては、良かったというか、「しめしめ」というか(笑)。やっぱり、僕が今まで演じてきたキャラクターの印象もある中で、「小野賢章がやる役はこういう感じ」といったイメージを持たれる事はどうしてもあると思うんです。でも、そういう想像を裏切っていきたいという気持ちはあるので。
人それぞれだとは思いますが、僕は「誰だか分からなかった」と思われたなら、それは(声優として)勝ちだなと思います。クローバー役は、僕にとっても挑戦ではあったので、また一つ(芝居に)広がりを持てて良かったなという気持ちです。これをきっかけに妖精役が増えたら良いですね(笑)。
人それぞれ、約束の重さの受け取り方は違うことが表現されている
──女児アニメであるということは意識されましたか?
小野:女児アニメだからというよりは、ファミリー向けのアニメなので、すごくシンプルにやろうという意識はありました。「この台詞には何か裏がある」とか、「この時、実はこういうことを思っていて……」といった伏線などの難しいことは一切考えず、「約束をした」「約束が守られなかった」「悲しい」みたいにすごくシンプルに考えて、真っ直ぐな気持ちでお芝居ができたら良いなと思いました。
やっぱり、子供ってすごく素直で、感じたままがすべてだと思うので、そういうところで難しいことをするのではなく、まっすぐ体当たりでやろうという気持ちは演じる前からありましたね。脚本を読んでも、物語はシンプルに進んでいき、その中にとても大事なものが描かれていることをすごく感じました。
「約束は守る」って大人になってからは、当たり前のような感覚で、あまり意識はしてなかったりするんですよね。でも、そういう当たり前のことも、こうして改めて作品を通して見ると、本当に大事だなと感じます。だから、一番大切なキーワードになっている「約束」の大事さがしっかりと伝わったらいいなと思いながら、演じさせていただきました。
──物語の中で、特に印象的に残ったことなどを教えて下さい。
小野:クローバーは、はなと出会うことによって外の世界の存在を知り、はなは、外の世界を見せてあげると約束をするんですね。そこから、この物語が始まっているのですが、人それぞれ約束の重さって違うものだよな、ということを改めて思いました。
クローバーは、何もない世界でずっと寂しい思いをしていたので、その約束がすごく大事と言うか、その約束しか楽しみが無かったんです。はなも、約束を軽く見ていたわけではないのですが……。約束の重さの受け取り方は人それぞれだということが、すごくシンプルに映画で表現されていて印象に残りました。
きっと、子供は「そっか! 約束はやぶっちゃいけないんだ」という真っ直ぐな観点で観ると思いますし、大人は大人で「やっぱり約束は大切だな」と思ったり、反省したりすると思います(笑)。結局、世代とか関係無く、大切なものって突き詰めていくと一緒なんだなと感じたことが印象的でしたね。
キュアエール役の引坂さんは、声のパワーをすごく感じました。
──クローバーにとっては、はなとの約束が守られなかったことは非常にショックなことでしたが、小野さんは子供の頃、そういったショックを受けた思い出などはありますか?
小野:約束を破られて、ショックというのはなかったですが……。親が転勤族で、転校がすごく多かったんですよ。だから、仲良くなった友達と、すぐに離れ離れになることが多く、それは子供ながらにショッキングでしたね。小6からはずっと東京なのですが、それ以前の地方の友達とは、今はほとんど連絡を取っていないですし、連絡先も知らないんですよ。
──転校する時には「連絡取り合おうね」と言っていたけど、取らなかったり?
小野:そういうことばかりでしたね。まあ今でも「今度、ご飯行こうよ」って言いながら、実現しないってことがあるじゃないですか? これは良くないなって、『プリキュア』に教わりました(笑)。これからは、「ご飯行こうよ」と言ったら、ちゃんとスケジュールを空けて、行きたいなと思います(笑)。
──2月から放送が始まったばかりの『HUGっと!プリキュア』のメンバーと一緒のアフレコだったそうですが、新人プリキュアのキャストさんの印象はいかがでしたか?
小野:フレッシュでしたね! キュアエール役の引坂(理絵)さんは、真っ直ぐさというか、声のパワーをすごく感じました。 あと、キュアアンジュ役の本泉(莉奈)さんは、今回の映画で初めてお会いした感じです。キュアエトワール役の小倉唯ちゃんとは、何度かご一緒していて、僕の中では可愛い女の子を演じている印象があったので、今回強くてかっこいい系の女の子を演じているのを見て、「やっぱり声優さんってすごいなー」と思いました(笑)。
『キラキラ☆プリキュアアラモード』の6人が同じセリフを言う時の息の合い方には驚いた
──『キラキラ☆プリキュアアラモード』も一緒だったそうですね。
小野:『キラキラ☆プリキュアアラモード』の6人が同じセリフを言う時の息の合い方には驚きました。本当にすごかったんですよ! これが1年間、一緒に戦ってきた仲間の中でできあがっていくものなんだろうなと思いました。きっと、『HUGっと!プリキュア』の3人も、「私たちもこうなっていきたい」と感じたんじゃないかなと思います。
──小野さんも、声を合わせる芝居を求められる時はあると思うのですが、その時はどうやっていますか?
小野:相手や収録現場によっても変わりますね。僕も別作品で声を合わせる芝居をすることがあるのですが、みんなでグループ名を言ったりする時には、まあ、だいたい合わないですね(笑)。すごく難しいです。『キラキラ☆プリキュアアラモード』の6人の尺や音程の上がり下がりの合い方は、本当にピッタリですごくびっくりしました。
──では最後に、『映画プリキュアスーパースターズ!』で、最も注目して欲しいポイントを教えて下さい。
小野:クローバーは、外の綺麗な世界に行ってみたいと思いながら、勇気が出ず、なかなか一歩を踏み出せないんです。でも、一歩踏み出す勇気や決意する瞬間みたいなものを、僕の中では大事に演じているので、そこを感じ取っていただけたら嬉しいです。
ファミリー映画って、「最後は正義が勝つ」みたいなストレートさがあるじゃないですか。観た後の気持ち良さをすごく感じると思います。妖精たちが(お客さんに)「みんなで応援して!」と呼びかけたりするところに、この作品の良さをすごく感じました。ぜひ劇場で一緒になって、プリキュアたちの応援をしてもらえたら、楽しいと思います。
[取材・文/丸本大輔]
作品情報
● 公開日
3月17日(土)ロードショー
● ストーリー
私、野乃はな!今日は待ちに待ったはぐたんのお花畑デビュー♪のはずだったのに、突然あらわれた怪物・ウソバーッカが、世界中をウソだらけにするため大暴れ! さあやとほまれがさらわれてしまったの! めちょっく!! しかも次は「プリキュアアラモード」と「魔法つかいプリキュア!」がねらわれているみたい…急いでみんなを探そう!
ウソバーッカの戦いの中で、私は思い出したの。幼いころ不思議な男の子・クローバーとの約束を果たせなかったことを…。私、ちゃんと気持ちを伝えなきゃ! そしてみんなで世界を守ろう!!
● 声の出演
原作:東堂いづみ
監督:池田洋子 脚本:米村正二 オリジナルキャラクターデザイン:宮本絵美子 井野真理恵 川村敏江
キャラクターデザイン・総作画監督:香川 久 作画監督:爲我井克美 小松こずえ 音楽:林ゆうき
美術監督:渡辺佳人 色彩設計:竹澤 聡 撮影監督:五十嵐慎一
声の出演:
引坂理絵 本泉莉奈 小倉 唯 多田このみ 野田順子
美山加恋 福原 遥 村中 知 藤田 咲 森なな子 水瀬いのり かないみか
高橋李依 堀江由衣 早見沙織 齋藤彩夏
ゲスト声優:北村一輝 小野賢章