細田守監督最新作『未来のミライ』くんちゃん役・上白石萌歌インタビュー「時空や場所をこえて冒険をしているような気持ちに」
『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』―次々に大ヒットアニメーション映画を生み出し、国内外で今もっとも注目される映画監督・細田守。最新作『未来のミライ』(スタジオ地図作品)で挑むのは、甘えん坊の男の子“くんちゃん”と未来からやってきた妹“ミライちゃん”が織りなすちょっと変わった「きょうだい」の物語です。
アニメイトタイムズでは本作で主人公の4歳の男の子・くんちゃん役を演じる上白石萌歌さんにインタビューを実施。声優初挑戦・初主演作品となる本作への想いや、映画の見どころについてお聴きしました。
『未来のミライ』ストーリー
とある都会の片隅の、小さな庭に小さな木の生えた小さな家。
ある日、甘えん坊の“くんちゃん”に、生まれたばかりの妹がやってきます。両親の愛情を奪われ、初めての経験の連続に戸惑うばかり。そんな時、“くんちゃん”はその庭で自分のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ、未来からやってきた妹“ミライちゃん”と出会います。
“ミライちゃん”に導かれ、時をこえた家族の物語へと旅立つ“くんちゃん”。それは、小さなお兄ちゃんの大きな冒険の始まりでした。
待ち受ける見たこともない世界。むかし王子だったと名乗る謎の男。幼い頃の母との不思議な体験。父の面影を宿す青年との出会い。
そして、初めて知る「家族の愛」の形。
さまざまな冒険を経て、ささやかな成長を遂げていく“くんちゃん”。果たして、“くんちゃん”が最後にたどり着いた場所とは? “ミライちゃん”がやってきた本当の理由とは―
それは過去から未来へつながる、家族と命の物語。
上白石萌歌プロフィール
2000年2月28日生まれ、鹿児島県出身。2011年第7回「東宝シンデレラ」オーディションにて当時史上最年少(10歳)で44,120人の中からグランプリに選ばれる。2012年にはTVドラマ「分身」で女優デビュー。主な映画出演作品に『脳漿炸裂ガール』(15)、『金メダル男』(16)、『ハルチカ』(17)、『羊と鋼の森』(18)、待機作には『3D彼女 リアルガール』(9/14公開予定)などがある。TBS系7月クール火曜ドラマ『義母と娘のブルース』、10月からは、舞台「浪漫活劇『るろうに剣心』」に出演する。細田守監督作品は初参加。
4歳の男の子“くんちゃん”を演じて
ーー『未来のミライ』のオーディションではくんちゃん役ではなく、ミライちゃん役を受けられていたそうですね。抜擢された際はどんなお気持ちでしたか?
上白石萌歌:オーディションで中学生の女の子のミライちゃん役を受けて、最初くんちゃんのことは全く意識していなかったんですけど、その場で披露することになり、結果としてくんちゃん役をいただいて、すごく驚きました。
初めての声のお仕事で、“4歳の男の子”というのは挑戦だなと思ったのと、細田監督の作品は多くのファンの皆さんに支持されているので、くんちゃんがその作品の真ん中に立つ主人公としてしっかり存在できるように備えようと思いました。
ーーもともと細田監督の作品がお好きだったんですか?
上白石:大ファンでした!最新作が公開される度に劇場に足を運んだり、サウンドトラックを買ったり、『バケモノの子展』に行ったり。まさか自分がこうして監督の作品の一員になれるなんて思っていなかったので、すごく幸せだなと思います。
ーー特にお気に入りの作品はありますか?
上白石:私は『おおかみこどもの雨と雪』が好きですね。細田監督の作品はどれもすごく柔らかくて、包み込んでくれるようなものばかりなんですけど、その中でも力強さとか背中を押してくれるような勇気をくれる作品なので、ちょっと疲れた時によく見たりしています。
ーー細田監督とはどんなお話をしながら役作りを進められましたか?
上白石:「4歳の男の子のキャラクターだからこうしないと」ということに細田監督はあまりこだわっていなくて。どちらかというと、思い切り泣いたり、笑ったり、怒ったりという人間の本質的な感情の揺れ方をお芝居で表現して欲しいと言われて。
性別に関しても、4歳の子どもは男の子か女の子か確立していなくて、その間で揺れる感じがすごく素敵だなと思ったので、そういう面を大事にしながら役作りを進めました。
ーー4歳の子どもの声を表現するというのも大変ですよね。くんちゃんを演じる上で何か工夫されたことはありますか?
上白石:くんちゃんは感情のままに、全身で生きているような子だなと思ったので、頭で考えすぎるのではなく、ブースの中では「自分がくんちゃんだ」と思って身体を使い、自分からどんどんエネルギーを出していきました。
4歳という年齢に関しても、幼く作りすぎると声を聴いている人もどこかで疲れてしまうのではないかと思ったので、なるべく自分に近い声で、でも心は4歳の男の子でお芝居できたらいいなと思って演じました。
星野源、麻生久美子ら豪華キャストとの共演
ーーご自身の役以外で印象に残っているお気に入りのキャラクターはいますか?
上白石:吉原光夫さんが演じている“謎の男”はすごくギャップがあって「吉原さんってこんな一面があったんだ」と気づかされるような役でしたね。
私は吉原さんの出演している舞台を観に行ったこともあって、こうして今回お会いできて嬉しかったです。
ーー謎の男の登場シーンは特にファンタジー要素が詰まっていましたね。
上白石:そうですね。二人で駆け回って楽しいシーンでした。
ーー『未来のミライ』は出演されているキャストの皆さんがすごく豪華ですよね。
上白石:声のお仕事は一人ずつ録った声をつなぎ合わせるものだと思っていたんですけど、細田監督の作品は皆さんと同じシーンは必ず一緒に録るのが決まりなので、その中で生まれるコミュニケーションも楽しくて。
特におとうさん役の星野源さんやおかあさん役の麻生久美子さんは、キャラクターの顔がどんどんお二人に似ていくような感じがして。役を自分のものにされて、それに染まっていくという過程が見られたのは貴重な経験でした。
ーー今作には青年役で福山雅治さんも出演されていますね。
上白石:福山さんとはキャスト陣の中で私だけがお会いしたんですけど、初めてお会いした時はオーラに圧倒されました。
すごく気さくにお話をしてくださる方で、「連日続いているけど、疲れてない?」と気遣ってくださったり。
そして福山さんが演じる青年がずるいくらいかっこよくて。くんちゃんが青年に向かって「かっこいい」と言うセリフがあるんですけど、それはお芝居ではなく、地の声が出たというか。笑
ーー青年のいる世界は戦争の前後の時代で、経験していない世代にとって考えさせられるテーマでもありますよね。
上白石:そうですね。それを経ての今があると思うと「今をもっと大事にしなくては」と思いますよね。
時空や場所をこえて冒険をしているような気持ちに
ーー物語の中ではくんちゃんが時空をこえて様々な場所へ旅立ちますが、特に好きなシーンはありますか?
上白石:子ども時代のおかあさんに会えるシーンが特に好きですね。自分が子どもだったら親としてしか認識しないけど、おかあさんにも小さな頃がちゃんとあって、人としてのドラマがあったんだと気づかされました。
ーー作中では未来の東京駅も描かれていましたが、あのシーンはすごくワクワクしますよね。
上白石:あの光景は今まで見たことがなかったですね。「あのインスピレーションはどこから得られたんですか?」と細田監督に質問したら、「あの駅はフランスのオルセー美術館をモチーフのひとつにしています」と仰っていました。
ーー細田監督の描くアニメーションは色んな世界に観客を連れて行ってくれますよね。
上白石:この作品自体も色んな方向にベクトルが向いていて。過去にも未来にも空想の世界にも行けるし、時空や場所をこえて冒険をしているような気持ちになりますね。
ーーその冒険の中で、くんちゃんは「家族」と「命」のつながりを知っていくんですよね。上白石さんはどんな時に「家族」を感じますか?
上白石:私の家系にもご先祖様をすごく大事にする文化があって、地元の鹿児島に帰省したら必ず手を合わせに行くんです。そういう時に一番「家族」というものを意識しますね。
普段生活している中ではどうしても忘れてしまいがちですけど、そういう「家族」のつながりはよく考えるとすごいことだなと思うんですよね。
ーー「家族」のつながりについて考えると、自分の周りの人にも連綿と続いてきた「命」のつながりのようなものを感じますよね。
上白石:確かにそうですね。普段何気なく話している人にもご先祖様が連なってその人が存在していて。そういう奇跡の中で、その人に出会えたということもすごいことで。身の回りのつながりをもっと大事にしたいなと思いますよね。
小さい子どもの目には世界がこんなに綺麗に見えていたんだと感じてほしい
ーー今回声優に初挑戦というところで、『未来のミライ』は上白石さんにとってどんな作品になりましたか?
上白石:初めて自分とは違う存在に声で命を吹き込むという経験をして「もっと何者にでもなれるかもしれない」とアニメーションの可能性をすごく感じました。
実写ではなれない4歳の男の子になれて、自分の色も増えた気がしていて、これからどんどん新しい色を取り入れて、役としても人としても色んな面を持っていきたいと思えました。
何よりもくんちゃんから色んなことを教えてもらえたことが私の財産になりました。
ーー最後に、映画を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。
上白石:4歳が主人公の映画はこれまでにもあまりなく、4歳の視点で物語が動くので、「小さい子どもの目には世界がこんなに綺麗に見えていたんだ」と皆さんに感じていただけたらいいなと思います。
そして、くんちゃんが自分を探しながら家族の縦のつながりを知る物語でもあるので、一度立ち止まって自分について考えたり、家族や、そのさらに後に続く命のつながりについても考えたり。
すごくシンプルな物語でありながら大きなテーマにも結びついている作品ですので、色んなことを考えながら観ていただきたいと思います。
ーー素敵なお話をありがとうございました!
インタビュー・文・撮影:吉野庫之介
ヘアメイク:冨永朋子(Allure)
スタイリスト:道端亜未
作品情報
タイトル:『未来のミライ』
公開:2018年7月20日(金)
<STAFF>
監督・脚本・原作:細田守
(『時をかける少女』(06)、『サマーウォーズ』(09)、『おおかみこどもの雨と雪』(12)、『バケモノの子』(15))
音楽:髙木正勝
企画・制作:スタジオ地図
オープニングテーマ「ミライのテーマ」:山下達郎
エンディングテーマ「うたのきしゃ」:山下達郎
<CAST>
くんちゃん:上白石萌歌
ミライちゃん:黒木華
おとうさん:星野源
おかあさん:麻生久美子
謎の男:吉原光夫
ばあば:宮崎美子
じいじ:役所広司
青年:福山雅治
映画『未来のミライ』公式サイト
映画『未来のミライ』公式ツイッター(@mirai_movie)
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