『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』村野佑太監督が感じたキャスティングへの手応え
好評放送中のTVアニメ『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』。アニメイトタイムズでは、この作品の魅力を伝えるべく、スタッフ&キャストのインタビュー連載記事を毎週放送後に掲載しています。8話の放送直後となる今回も監督の村野佑太さんに登場していただきました。原作モノをアニメにするときのこだわりやキャストについての話を伺いました。
――インタビュー時点ではまだアフレコも途中段階ですが、キャスティングの手応えを教えてください。
村野佑太さん(以下、村野):すごくバランスよく、声に特徴のある方々が集ってくれたと思います。一番難しいと思ったのはディアヴロなんですけど、最初、心の声と魔王声で声優を分けたほうがいいのではないかという話も出たんです。
でもお願いした水中雅章さんの演じ分けがすごく上手で、その必要はありませんでした。魔王プレイの声もちゃんと威圧感を維持しつつ声に若さも感じられて、同一人物だとわかる絶妙なラインでまとめてくださっていて。だからその声を聞いたときに、みんな諸手を挙げて、やったー!と。すごく納得できる声をいただきました。
――ヘタれているところの声もすごくいいんですよね。
村野:本人の優しい感じが出ていて。声が色っぽい方なので、その使い分けが思った以上にうまく出ていたのが収穫でした。
――芹澤優さんの明るくてかわいいんだけど、どこか切なさもある声がシェラだなぁと思いました。
村野:問答無用に可愛い声だなと。3人の中でもとりわけ癒やしを与えてくれる声なので、シェラにぴったりだと思いました。
あと芹澤さんにはその場でアドリブをぶっ込むことが多くて、台本に描いてないんだけど、とりあえず裏で20秒生着替え中っぽい声を出していてとお願いしたりしましたね(笑)。とても楽しく演じてくださってます。
――和氣あず未さんは、こういうキャラクターも珍しいと思いましたが、とても可愛いレムになっています。
村野:とても演技力の高い方で、すごく丁寧に演じてくださってます。でも、最初は苦労なさったのかな。これは和氣さんも芹澤さんもなんですが、器用な方たちなので、一番耳心地のいいバランスに声を当ててくださるんです。
1話だとそれがうまくハマり過ぎてしまって、ディアヴロを含めた3人の関係が丸く収まっちゃったんですね。それはやっぱり最後のほうに取っておきたいというところで、レムは特にですが、最初の頃は感情を間引いて演じてもらいました。
心の壁を作って芝居をしてくださいと話したら、以降は心に壁と使命感を背負っているような芝居をしてくださったので、より魅力的になったなと思いました。
原作と向き合って作り上げるシーンの数々
――ちなみに6話までで印象に残っているシーンはありますか?
村野:シーンというわけではないのですが、シェラの兄であるキイラというキャラクターのアプローチを少し変えたんです。アニメオリジナルの展開はあまりやりたくはないので、基本的に原作準拠ではあるんですけど、ここは原作を読んでいて、「おや?」と引っかかったところだったんです。
それをむらさき先生に伝えたら、実は先生も書かれたあとにちょっと気になっていたところらしくて、意見が合致したのでアニメでは原作を描かれた時に消化不良だった部分を、突き詰めて描いていきました。
それによってキイラがすごく人間味のある面白いキャラクターになったのかなと思います。実はここの脚本はむらさき先生も一部書かれているので、原作ファンの方にも納得してもらえると嬉しいなと思います。
――先生から本読みがすごくスムーズだったという話も出ていました。ぶつかることもなかったそうで。
村野:ぶつかりあったほうがい良い現場もあるんですが、変にギスギスすることもなく、みんな面白いと思うものを言っていきながら作れた現場でした。それはむらさき先生や鶴崎先生が、こちらを信じて任せてくださり、温かく見てくださったからだと思います。
おかげで僕もやりたいと思ったことを自由にやれたし、それが逆に原作に対するリスペクトにも繋がっていったので、幸せな現場だったと思います。
――そういうリスペクトが原作モノをアニメ化するときには大事ですか?
村野:みんながそうかはわからないですけど、僕が大事にしている部分は、先生がどういう思いでその文章を書いていて、それを読んでいるファンが、それのどこが好きなのかというのを絶対にないがしろにしてはいけないということです。
なのでそこから離れてしまうものは作りたくはありませんでした。原作も読み込ませていただいていて、全ページに赤ペンが引いてあって、ここはどこの伏線になっているとか、ここはアニメだと削るとか添削をかけてあるんですよ。真っ赤だから先生には見せられないですけど、そのくらい原作と向き合っています。
――やっぱり文法が違うので、アニメにしたときに、この描写は声だけで表現できるとかありますからね。
村野:そうですね。先生がそれをすごく理解してくださっていたのが大きかったです。「小説と映像ではテンポが違うので、そのままアニメにするのが正しいかと言われれば、僕はそうは思わないです」と最初に言ってくださったのがありがたかったです。
初対面の段階で、「こことこことここはアニメではタルく見えてしまうのでいらないと思います」と先生に話したときも、その場で「わかりました」という感じだったので。
――結局、見終わったあとに感じた印象が同じであればいいのかなと思います。
村野:そう思います。与える印象が同じであればいいと。
――そういう意味では1話は詰め込んでいたけど、すごくまとまっていたので、印象も変わりませんでした。
村野:作品をつくる中で1話はとても重要で、1話でこのアニメがどこに向かっていくのか。主人公に何ができて、何が目的なのかを明確に全部入れるべきだと思うんです。
そう思ったとき、最初はサラマンダーとの戦いを2話にする声もあったんですけど、1話に入れるべきだろうと押し通しました。作画さんも撮影さんもすごく頑張ってくれたので、結果的にディアヴロのカッコよさが引き立つ良いシーンで1話をしめることができました。
原作の流れを単調に追うだけではなく、見てくださるファンの方が次回を楽しみに待ちたいと思える作品にしたかったので、それぞれの終わりの部分はすごく気を使って、どこをラストに持ってこようかとシリーズ構成の筆安一幸さんと相当議論を重ねましたし、コンテ段階でもかなり調整しています。
――その流れでのEDの絵と曲も良かったですし、OPも王道でしたね。
村野:OPはこのアニメでどういうことをやるのか、全部見せちゃおうと思いました。OPを見て何か刺さるものがある人は、必ず期待に応えますよという意味で。EDは、原作の挿絵担当である鶴先先生にお願いしていて、原作サイドとアニメサイドの仲の良さ故に実現できました。先生の絵を見たときは嬉しかったですね。
物語を経て変わってきたディアヴロたちの次なる一歩は――
――さて、アニメは8話が終了しました。まず最初のフォースヒュドラがすごかったです。
村野:全然時間のない中で作っていたところはありますけど、うちの会社(亜細亜堂)の大先輩に怪獣マニア(藤森雅也さん)がいるんです。その方が8話のコンテを切っていて、そのまま怪獣のシーンも自分で描くよと言ってくださったんですね。
なのですごく迫力のある感じに仕上がっていると思います。先生方もここはそんなに派手な見せ方の想定をしてなかったみたいで、コンテを読まれたときに、(現場はこれで)大丈夫ですか?と心配されていました。僕も心配は心配なんですけど……(笑)。
――さらにガルフォード戦もあるんですよね。
村野:Aパートが怪獣モノでBパートが対人戦という、かなりしんどい回でしたね。
――ガルフォードがまた強そうでした。
村野:ガルフォードのような渋くてカッコ良い大人の活躍はとても楽しみにしていたのですが、そこに大塚明夫さんの声が乗ると、すごく威厳のある怖い大人になっていて、深みが出ました。5話でガルフォードが「国王陛下より城塞都市ファルトラを預かっている」と言うんですけど、こんなにいい台詞になるとは思わなかったと、むらさき先生が言ってたのが印象的でした(笑)。そこはやっぱり大御所の声優さんの力なんだなと思います。
――ディアヴロ対ガルフォードはどうでしたか?
村野:ディアヴロの戦い方とガルフォードの戦い方って違うので、それをなるべく出せるようにとは思いました。両方とも手練れではあるけど、軍人とゲーマーの戦い方なんですよね。普通なら軍人と廃人ゲーマーが戦う機会はないと思いますけど、そこはファンタジーアニメの良いところで。そこの戦い方の差はちゃんと描こうと思いました。
――で、最後にはシルヴィのお色気シーンもありましたしね。
村野:シルヴィは見た目が見た目だけに、お色気シーンの扱いがすごく難しいんです……。
――シルヴィは取材した中でも、かなり人気のキャラでしたが、監督は誰派とかはあるのですか?
村野:スタッフの中でも俺は誰派みたいな話は広がってます。どのキャラも皆好きですが一応僕はシェラ派です。ただ総作画監督がレム派らしいので、バランスが取れていますね(笑)。
――では最後に、今後の見どころについてお願いします。
村野:7~8話までで積んできたそれぞれの関係値が、新しい段階に踏み出さないといけないところになってきます。ディアヴロは魔王ロールプレイでここまで来たけど、それを使えなくなったときに、人としゃべることができるのか。1話では無理だったけど、1クールを経てどう変化しているのかは見どころになると思います。
それ以外で言うと、もうひとり幼女が追加されるので、そこですかね。10話ではその子の話題になるであろうシーンが待っているので、果たしてそこがどうなるのか、僕もまったくわからない状態です。ちゃんと放送できればいいんですけど、表現の限界に挑んでいる気がします……。シナリオ会議でむらさい先生に笑いかけられて、「逃げずに頑張ってください」と言われたので、逃げちゃダメだって思いながら、今やっています(笑)。
[取材・文/塚越淳一]
TVアニメ「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術」
2018年7月5日(木)よりTOKYO MX・サンテレビ・BSフジ・AT-Xにて放送開始予定
<STAFF>
原作:むらさきゆきや(講談社ラノベ文庫刊)
キャラクター原案:鶴崎貴大
監督:村野佑太
シリーズ構成:筆安一幸
キャラクターデザイン:金子志津枝
総作画監督:西岡夕樹
モンスターデザイン・アクション作画監督:宮本雄岐
プロップデザイン:中島裕一
色彩設計:大塚奈津子
美術:草薙
美術監督:岡本穂高
撮影:旭プロダクション白石スタジオ
撮影監督:佐藤哲平
音楽:加藤裕介
音響制作:ハーフHPスタジオ
音響監督:本山哲
アニメーション制作:亜細亜堂
OP主題歌:DiCIDE/SUMMONERS2+
ED主題歌:最悪な日て?もあなたか?好き。/芹澤優
<CAST>
ディアヴロ:水中雅章
シェラ・L・グリーンウッド:芹澤優
レム・ガレウ:和氣あず未
アリシア・クリステラ:原由実
シルヴィ:大久保瑠美
エデルガルト:加藤英美里
クルム:種崎敦美
セレスティーヌ:千本木彩花
メイ:森嶋優花
「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術」原作公式サイト
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