映画『GODZILLA 星を喰う者』マイナ役・上田麗奈さんインタビュー|初めての双子役、それぞれの価値観を声に乗せた
2018年11月9日(金)より公開されるアニメーション映画『GODZILLA』最終章となる『GODZILLA 星を喰う者』。
ハルオたち人類はゴジラに勝利することができるのか。そして、先日公開されたキービジュアルには新怪獣・ギドラの姿が踊っている。
空前絶後のスケールで描かれる物語はいよいよクライマックスへ。
今回、『GODZILLA 星を喰う者』に登場する、フツアの神の卵を守る巫女の双子の姉・マイナ役の上田麗奈さんにインタビューを実施した。
彼女にとって初となった双子としての演技。また、20000年後の人類を演じた上で彼女の心に残ったものは何か。その胸中に迫る。
人間ドラマの最終章
――いよいよ『GODZILLA 星を喰う者』の公開が迫ってきました。改めて上田さんが演じたマイナというキャラクターについてお聞かせください。
上田麗奈さん(以下、上田):マイナは双子の巫女として登場しました。妹のミアナ(CV・小澤亜李さん)は活発で好奇心旺盛な女の子なんですけど、マイナは全くの逆。で冷静で慎重で警戒心が強いお姉さんなんです。
種族の卵を守る巫女という立ち位置もあり、見た目よりも大人っぽい達観したイメージもあります。
マイナは二章から登場したんですけど、徐々に主人公のハルオへ特別な感情を抱いていくようになりました。妹のミアナとは少し違う形で心を開いていく、そんな心の機微が印象的ですね。
――『GODZILLA 決戦機動増殖都市』で初登場となったミアナですが、『GODZILLA 星を喰う者』でマイナが変化したところなどはありますか?
上田:『GODZILLA 決戦機動増殖都市』はハルオ達人類と距離があったのですが、『GODZILLA 星を喰う者』ではテレパシーだけではなく、言葉でコミュニケーションを取るなど、彼女自身内面の変化があったような気がしています。
大胆に言葉を伝って関わっていくようなシーンもありますので、二章よりも物事に対して、踏み込んでいく彼女の新しい一面が現れるようになりましたね。
――今朝、YouTubeで公開されているアニゴジ第二章公開記念の動画を拝見しました。動画内で上田さんと小澤さんがインタビューを受けていて、「二章は一章からは想像もつかない展開になった」と、語っていましたが3章はいかがでしたか?
上田:『GODZILLA 星を喰う者』もそうですが、今回のアニゴジ全体で「身近な問題だなって」私は率直に思っていたんです。ゴジラVSギドラだったり、世界観の中で怪獣は登場してきたのですが、人間ドラマが中心にあるお話なんですよね。
勿論、ゴジラとハルオたちが闘うアクションも魅力的です。ただ、私としてはそれ以上に精神的な話が中心にあったと思っているんです。
「何が正しいのか?」というのはとても難しい問題です。正解もないような問題ですし。でも、私自身考え続けたいと思うテーマがアニゴジにはありました。
ハルオの立場で考えたときに気持ちが分かるし、メトフィエスの考え方も分かる。ビルサルド人たちの思いも分かる。種族は違うだけで、悪者じゃないんですよね。それぞれの思い描く理想の未来が少しずつ違う。すごく考えさせられる作品だと思いますね。
ハルオは「人間として今を守る」ことを大切にしてきました。それが、色々な種族の色々な価値観に触れたことで、どんな結末に行き着くのか。ここは作品としても大きな見どころだと思いますね。
マイナとミアナに上田さんと小澤さんがキャスティングされた理由
――アフレコで印象に残っていることはありますか?
上田:アフレコ中は小澤亜李ちゃんとずっと一緒にいたんです。双子役ということもあり、意識的にも無意識的にもお互いができるだけ近い距離にいるようにしていた気がします。
プレスコでの収録だったので、追加撮りも多かったんです。追録の度にシナリオの細部が変わっていたんです。作品の根幹にある所は全く変わっていないんですが、演出が変わっていたりとか。監督のこだわりを感じましたね。
プレスコという絵がない状態で演技をしていたので、少しは違和感があるのかな?とも思ったのです。でも、そんな心配は杞憂でしたね。あの収録の時に感じた生の熱量がそのままフィルムにも込められていると感じましたね。
――改めて、マイナとミアナという双子役を演じた感想をお願いします。
上田:マイナとミアナはずっと一緒に居て、一緒に喋ってるシーンが多かったんです。でも、2人の意思や気持ちが少し違うみたいなところは演じていて楽しかったですね。
実はオーディションの時にマイナとミアナを一人が演じるのか、2人の役者がキャスティングされることになるのか知らなかったんです。
実際は、私と亜李ちゃんがキャスティングいただいたわけなんですけど。収録や番宣でご一緒すると、すごく納得感があったんですよね。
――納得感ですか?
上田:そうなんです。私と亜李ちゃんに似ているところがあるなって。私は性格的に慎重なところがマイナに似ていますし、亜李ちゃんは明るく誰かの懐に自然と入っていく明るさがあるんです。私からするとすごく羨ましいなって思っちゃうくらい。亜李ちゃんは温かい、太陽みたいなところがあるんです。これが、ミアナに似ているんですよ。
――実際にマイナとミアナを上田さんと小澤さんで演じてみていかがでしたか?
上田:タイミングやブレスを合わせるというのは、何度も練習しました。
でも、2人が同じ一つのフレーズを喋るとしても、役者としての個性は別ですよね。人生で経験してきた感情が声には乗ります。ですので、敢えて感情面は亜李ちゃんと相談せずに、セリフのテンポ感だけ合わしていたんです。
その結果、私と亜李ちゃんそれぞれの解釈がユニゾンには詰まっています。これは難しかったという言うよりも、とても楽しかったですね。
亜李ちゃんのミアナはこのセリフをこう解釈して、こう喋るんだな、とか。お互いテストで聴いて、納得しながらマイナ・ミアナそれぞれの感情を大切にしていく過程は面白かったです。
――一般的に双子の役をそれぞれが演じる場合、すこし声色を寄せるような印象があります。
上田:実は何も意識していませんでした。ディレクションも特に入ってなかったんですよ。各々それぞれ自由に演じた結果、マイナとミアナの声は自然と近いもの担った気がしています。
私の地声は亜李ちゃんと全然違うんですけどね(笑)。でも。声質や性格までを踏まえて、私と亜李ちゃんがマイナとミアナにキャスティングされたということでしょうね。
マイナのピュアな気持ちを役者としての糧に
――『GODZILLA 星を喰う者』で印象的なシーンはありますか?
上田:ネタバレ無しでお話しますね(笑)。今回、モスラが登場するんです。マイナとミアナの気持ちがこのシーンに現れているような気がして、印象的なシーンになっています。
――なるほど。では、今回登場するギドラについてどう思われましたか?
上田:凄くキレイでしたよね。キラキラしてて、SSRのカードみたいな(笑)。子供が見たらギドラのカード欲しくなっちゃうと思いますよ。
――ちなみに、双子ということもあり、上田さんとしてはマイナとミアナに思い入れが強いと思います。では、それ以外のキャラクターで推しキャラはいますか?
上田:推しキャラですかぁ。うーん、ユウコ(ユウコ・タニ CV・花澤香菜さん)です。マイナと同じく、ハルオに対して特別な気持ちを抱いているだけに、上田としてはライバルのような感情を抱いているんですよ。ユウコのハルオに対する思いが、マイナを演じているだけに共感してしまうというか。
私はどうしてもマイナ目線になってしまうので、その中だとユウコになりますね。女の子として気持ちが分かる、みたいな。キレイな気持ちじゃない、ちょっとした嫉妬心も描かれていたので、親近感を感じてしまいました。
――最後に今回、二万年後の人類であるミアナを演じてみて、役者・上田麗奈の中にはどんなものが残りましたか。
上田:アニゴジを通じて、役者としてすごく成長したというのは、あまり実感がなくて。人から言われた時に「そうなんだ!」ってなるかもしれませんね。
ただ、純粋な気持ちでハルオを思うことができたのは、とてもいい経験になったと思っています。マイナのピュアな気持ちが、役者としてすごく新鮮だったんです。この経験や気持ちは、これから新しいキャラクターを演じるときにも糧になっていくと思いますね。
[取材、文・川野優希]
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『GODZILLA 星を喰う者』作品情報
ストーリー
21世紀初頭、ゴジラに地球を奪われた人類は、一部の人類を他恒星系への移住に送り出すも、計画は失敗に終わる。失意のまま地球へと帰還した人類を待ち受けたのは、二万年後の変わり果てた姿になった地球だった。
あらゆる動植物がゴジラ細胞を持つ<怪獣惑星>と化した地球。そこに君臨するのは体高300mを超える史上最大のゴジラ<ゴジラ・アース>だった。
ゴジラ討伐に執念を燃やす主人公ハルオは、人類の遠い子孫である種族フツアと出会う。ハルオたちは、フツアの双子の姉妹マイナとミアナの導きにより対G決戦兵器・メカゴジラの残骸が、増殖を続けていることを発見。残骸を構成するナノメタルを使って武装要塞都市<メカゴジラシティ>を起動させ、<ゴジラ・アース>に挑む。
この作戦の中、かねてより共存してきた異星人種族の一つビルサルドと人間たちとの亀裂が表面化する。ビルサルドのリーダー・ガルグの「ゴジラを倒すならば“ヒト”を超えた存在へ」という信念に対し、ハルオは「怪獣を倒すために自らも怪獣になってはいけない、“人”として打ち勝つべき」という信念を捨てられなかった。ついには、<ゴジラ・アース>を倒す唯一のチャンスを捨て、ハルオはガルグを葬ってしまう。
一方、ハルオの幼馴染であるユウコはビルサルドによる人体の強制ナノメタル化により、脳死状態に陥ってしまった。人間たちに広がる敗北感と虚無感。もう一方の異星人、宗教種族エクシフの大司教・メトフィエスは、ハルオが戦いに生き延びたことは“奇跡”だと唱え、信者を増やしていく。
それはエクシフが秘め隠してきた“究極の目的”のためだった。そんなメトフィエスを警戒するミアナとマイナ。そして、ハルオは、自らが“人”として何を為すべきかを自問する。
やがて、<ゴジラ・アース>を打ち倒す者がいなくなった地球に、金色の閃光を纏った<ギドラ>が降臨し、天地を揺るがす超次元の戦いが始まる。
“ゴジラ”とは何か。“人”が為すべきことは何か。ハルオが目にする未来とは――――。最終章で、そのすべてが明らかになる。
【公開表記】2018年11月9日(金)全国公開
【スタッフ】
監督/静野孔文・瀬下寛之
ストーリー原案・脚本/虚淵玄(ニトロプラス)
キャラクターデザイン原案/コザキユースケ
音楽/服部隆之
副監督/吉平”Tady”直弘・安藤裕章
プロダクションデザイン/田中直哉・Ferdinando Patulli CG キャラクターデザイン/森山佑樹
造形監督/片塰満則
美術監督/渋谷幸弘
色彩設計/野地弘納
音響監督/本山哲
【キャスト】
宮野真守
櫻井孝宏
花澤香菜
杉田智和
梶裕貴
小野大輔
堀内賢雄
中井和哉
山路和弘
上田麗奈
小澤亜李
早見沙織
鈴村健一
【主題歌】XAI「live and die」(TOHO animation RECORDS)
【製作】東宝
【アニメーション制作】ポリゴン・ピクチュアズ
【配給】東宝映像事業部