『チェブラーシカ』の中村誠監督によるオリジナル長編パペットアニメ『ちえりとチェリー』が2月15日より全国公開! 記念トークショーで監督が作品への想いを語る!!
『劇場版 チェブラーシカ』を手掛けた中村誠監督による日本発の長編パペットアニメ映画『ちえりとチェリー』が、2019年2月15日(金)より全国公開スタート!
高森奈津美さん&星野源さんW主演で、サンドウィッチマンら豪華キャストが声優を務めるほか、Salyuさんが担当する主題歌など話題を集めている本作の一般試写会が、2019年1月31日(木)、東京・伝承ホールにて行われました。
試写会には、中村監督、手塚治虫さんの長女であり、プランニングプロデューサーの手塚るみ子さん、映像研究家の叶精二さんが登壇。本作のテーマや手塚治虫作品との意外な共通点など、興味深いトークショーの模様をレポートします。
映画を見た手塚さんは涙し、父・手塚治虫の作品に触れた感覚に
上映を前に、中村監督、手塚さん、進行役の叶さんがステージへ。
まず監督が、スローシネマ(じっくりと時間を掛けて全国を回り、各市町村の施設で上映会を行う形式)の形で、2016年より東北を皮切りに全国100カ所で上映されてきたこと、未見の方からの多くのリクエストに応えての全国公開になったことに、感謝の言葉を述べました。
ゲストである手塚さんからは、中村監督からぜひ観てほしいというメールが送られてきたことが明かされ、そのメールを受け取って初めて『チェブラーシカ』の監督だったと知ったそう。そのことについて、「僕にとって手塚治虫さんは仰ぎ見る存在で、その神の子である、るみ子さんにどうしても見てほしいという気持ちがあって」と、監督は振り返っていました。
本作の感想について、「ハンカチを出しておいたほうがいいと思います。試写会で見た時に頬に涙がいっぱい出てしまって。手塚治虫の作品が重なるように思えるところがたくさんあって、懐かしい父の作品に触れているような想いがあふれてきました。また、父を亡くした時の寂しい想い、辛い想いを引きずりながらここまで歩いてきたのかという、自分自身の想いも重なって」と、会場のお客さんに語り掛ける手塚さん。
監督は「先生が作ったような匂いを感じていただけたなら、これに勝るうれしい言葉はありません。私は、『ブラックジャック』などのアニメを作られた出崎統監督とも晩年にお仕事をさせていただいて、いろいろ教えていただいて。虫プロ出身ということもあり、手塚先生のお話も聞いていたので、私自身は勝手に手塚先生の孫弟子くらいに思ってます(笑)」と、喜びを表現していました。
また、叶さんから作品が作られたタイミングについて話題を向けられた監督は、「作り始めた2010年に母を亡くし、人の死について考えながらシナリオを作っていたら2011年に東日本大震災があって。モノを作る人間にとってどう向き合うべきかという気持ちがあって作った映画です」と、神妙な面持ちに。
その言葉を受け、手塚さんは「手塚が初めて作ったアニメ『ある街角の物語』は、戦争は絶望的なものだと伝えたくて作ったんですけど、女の子が戦争を生き延びて、ボロボロになったぬいぐるみを拾って、ボロボロの街を歩いて終わっていきます。でも最後に、小さな希望があると。その作品に近いものが『ちえりとチェリー』から感じられて」と、手塚作品との共通点を指摘。
「平成はたくさんの人の死を突き付けられた時代でしたが、今、残された私たちがどう未来や希望を持って生きていこうか、というバトンを渡してくれるように作られたのかなと思いました。でも、説教臭くなく、『ある街角の物語』もユーモアを感じるような面白い絵柄だし、『ちえりとチェリー』もかわいいな、楽しいなという気持ちが植えられて。そこにはきっと種があるんでしょうね」と、作品に込められた希望を感じ取っていたようです。
大切なものを失った時、どう生きていけばいいかをテーマに、大人も子供も楽しめる作品
すると、手塚さんのお話をうなずきながら聞いていた監督が「今、ふと思い出したんですけど、2010年の『劇場版チェブラーシカ』はロシアの伝統を引き継いで作らなければという思いが強かったんですけど、日本人のテイストをちょっと入れておこうと思って。やたらモブが動き回るんですけど、それは手塚先生の初期の見開きでモブのキャラがいっぱいいて、いろいろんなことを入れ込んだのを参考にしたことを思い出しました」と告白。
叶さんによると『ちえりとチェリー』、そして併映の『チェブラーシカ 動物園へ行く』はたくさんの人形を動かしていますが、パペットアニメではあまり引いた画角になるとセットの端っこが映ってしまうためにカメラに近い絵が多いが、監督は引いている絵をよく撮っていると分析していました。
さらに、「書き割っぽくなると世界が小さくなってしまうんですよね。『ちえりとチェリー』の場合、見始めて少ししたら人形だということを忘れて、見終わって劇場を後にした時に“あっ、人形だったんだ”と思い出すような映画にしたくて、できるだけ空間を広く、リアルにしようと思って作りました」と、制作の裏話も。
加えて、世界的にもこれほどかわいいものは珍しいと、人形の造詣にも言及した叶さん。手塚さんもちえりを見た時、日本独特のアニメのキャラに近いと感じたそう。
監督は意図的だったと語り、「パペットアニメはアート的に見られがちですけど、普段日本でアニメを観ている人にも見てほしいなと。普通にフィギュア欲しいなと思ってもらえるようにデザインしました。また、僕自身、手塚アニメの女性キャラのかわいさに影響を受けているので、反映されていると思います」と、ここでも手塚作品とのつながりが。
叶さんが、隔世遺伝のように手塚先生の影響を受けた中村監督が作品を作ることに触れると、手塚さんは「いろいろな方にバトンを渡していくんだろうなと思うし、きっと監督の後に出てくる若い方にバトンが渡っていくんだろうなと思います」とコメント。
日本でのパペットアニメの現状は、オリジナル原作の長編アニメとして『ちえりとチェリー』が初めてであり、今作をきっかけにパペットアニメの芽が広がってほしいと希望を語る叶さんに、監督は賛同するようにうなずき「全国公開初日の2月15日は、共同脚本を手掛けた島田満さんの14回目の月命日にあたるため、映画を見る時に少しでも思い出していただけたらうれしいです」と、力を込めました。
最後に、トークショーの途中で監督が語ったメッセージをご紹介しましょう。
「この映画は、ある時大切なものを失ったら、その魂はどうなるのか? 残されたものはどう生きていけばいいのか、をテーマの1つとして書いてあります。小さなお子さんが見ても、大人が見ても楽しめるようにいろいろな角度から作ったつもりなので、ぜひ楽しんでください」。
映画『ちえりとチェリー』公開情報
2019年2月15日(金)より、全国のイオンシネマにて2週間限定ロードショー!
同時上映は『チェブラーシカ 動物園へ行く』