この記事をかいた人
- 小澤めぐみ
- 営業職を経験後、記者業務に携わりフリーへ。主に男性声優、漫画、アニメなど浅く広く…今はもっぱら藤沢朗読劇中毒
TVアニメ第2シリーズが好評放送中の『ピアノの森』は、『モーニング』(講談社)にて2015年まで掲載された一色まことさんによる傑作クラッシック音楽漫画が原作。主人公の一ノ瀬海(カイ)が、ピアノの師やライバルたちとの出会いの中でピアノの才能を開花させていき、やがてショパン・コンクールで世界に挑む姿を描きます。
第2シリーズでは、カイの少年時代からの友人でありライバルでもある雨宮修平をはじめ、パン・ウェイやレフ・シマノフスキら新たなライバルたちのコンクールに懸ける思いや葛藤などが絡み合い、より物語に深みの増した展開に。
本稿では、一ノ瀬海役・斉藤壮馬さん、雨宮修平役・花江夏樹さんのインタビューをご紹介。第1シリーズを振り返っての感想や、印象に残っているシーンについて、第2シリーズの見どころなどを伺いました。
――まず、これまでの放送を振り返っての感想をお聞かせください。
一ノ瀬海役・斉藤壮馬さん(以降、斉藤):長い期間、多くの方に愛されている作品の映像化ということで、一ノ瀬海の声を担当することを告知したら、放送前からいろいろな方が連絡をくれて。楽しみにしているよとたくさん言っていただきました。
特に第1シリーズは光の描写と、ピアノのシーンがとても特徴的で、もともと原作が持っている物語自体の奥深さや面白さが、より多くの方に感じてもらえているのかなと思います。
それを踏まえて、カイや雨宮たちが本格的にショパン・コンクールに挑んでいくので、第1シリーズでは子供から青年へと成長する長い時間が、コンパクトにまとめられていました。
逆に、第2シリーズではショパン・コンクールを中心に描かれるので、より密度の濃い心理劇がお届けできると思っています。
雨宮修平役・花江夏樹さん(以降、花江):第1シリーズは、修平のカイへの執着と、これから修平がどう自分のピアノを見つけるかという、自分との戦いが描かれそうになったところで終わってしまったので、僕的にはまだモヤっとした終わり方でした。
また、ピアノを題材にした作品なので、ピアノの音が付くことによって、キャラクターたちの考えていることがすごく伝わってくるし、直感的に分かりやすくなっていることがアニメとして大きなポイントだと思いました。
尺の都合上、カットされている部分もありますが、それを抜きにしても、良い作品だなと改めて感じられる第1シリーズだったと思います。
――第1シリーズで印象的だったシーンや驚いたシーンはありますか?
斉藤:第1話には、大人になったカイが冒頭だけ出ているので、第1話のアフレコデータ(未完成版の映像)をいただいたんです。
原作でもピアノの音色が光の粒子みたいになって聞き手に伝わるような描写があるんですが、僕はあのシーンがすごく好きなんです。アニメでもそれが本当に幻想的な映像演出になっていて、音が見えるようで、すごく素敵だなと思いました。
あと、序盤は特に映像の演出が独特。例えば、阿字野先生と子供時代の雨宮がしゃべっているシーンは2人の影しか写っていないとか、映像的なセンスが面白いなと思いました。
花江:青年になった修平がカイと再会した時に、カイの住んでいる家で、いじめられっ子の少年と一緒にピアノを弾くシーンがあるんですけど、そこが印象に残っています。
カイとのやりとりとかもありますが、そこで久しぶりにピアノを弾けたということもあって、修平が涙を流しながらピアノを弾いていて。
自分が出ているシーンは、あまり客観的に見れないことが多いのですが、そのシーンはオンエアを見ていて、ちょっとホロリとしてしまいました。
斉藤:弾いていた曲も良いしね。
花江:漫画を読んでいるだけでは、どういう曲なんだろうと思うこともあり、それも相まって印象に残っています。
――第2シリーズでは、ピアニスト自身を表現するシーンが増えるかと思いますが、演じる上で気を付けていることなどありますか?
斉藤:基本的な部分では、第1シリーズから変わらないと思います。
カイは、特に自分が天才だとは思っていないと思うので、第1シリーズでは、僕がカイに対して「あなたは天才だから」という歩み寄り方をしないように心掛けていました。
カイが何を感じているのか。単純ですが、それが一番難しいんです。カイが今何を見ていて、何を感じていて、何を聞いているのか。そこに寄り添うのが大事かなと思います。
第1シリーズは、キャラクターたちの流れる時間に対して、どうしてもエピソードが飛び飛びにならざるをえなかったのですが、第2シリーズはより丹念に描いていけるので、心の機微を丁寧に捉えることができればいいなと思っています。
花江:オーディションを受けた時は、修平がウジウジしているし、カイをいつまでも忘れられないし、自分のピアノがなくて、正直そんなに好きなキャラクターじゃないなと思ってたんです。
でも、受かってからキャラに寄り添うため、修平をいろいろ分析した結果……「僕が浅かったな、修平はそんなんじゃないぞ」と。
修平は、あれだけ学校でも悪ふざけもせず、ピアノのことばかりに打ち込んでいたのに、対するカイには、ある日突然現れていとも簡単にピアノを弾きます。
カイ本人には天才という自覚はないんでしょうけど、修平からすれば僕の努力は一体……と挫折があって、結構ショックなことだと思います。
そこから大人になるにつれて、よりその思いが大きなものになっていく。どこにぶつけたらいいか分からない気持ち、そういうものを抱えている修平を応援する立場として、僕は一緒に頑張っていこうと第1シリーズから修平を演じています。
――そんなお互いの収録に臨む姿を見て、共演しての感想は?
斉藤:第2シリーズの最初は、雨宮とカロル・アダムスキが中心となって物語が進んでいくので、実はカイと雨宮が話すシーンはそこまでありません。
カイの演奏は周りの人が評価してくれていますが、雨宮に関しては、自分で自分の演奏に対して、もがきながら演奏しているところがあるので、特に第1シリーズよりは第2シリーズの方が、心理的掘り下げがあると思います。
そこは毎回丁寧に演じているなと思うし、ディレクションも、もう少し抑え目にとか、ここはもう少し盛り上げてとか、細かい部分的な指導に対しても、冷静に丁寧にそして的確に応えているというのは素敵だなと思いますね。
花江:カイの天才の部分は映像として、もちろん表現されています。
先ほど壮馬くん自身も話していた、あまり天才というのを意識しない、そこに乗っからない壮馬というのは、僕から見ていても出ていると思います。
押し付けがましくないというか、自分で「自分はすごい」と主張する感じではなくて、純粋にピアノを楽しんでいる、ピアノに対して向き合っているんです。
そういうところが、壮馬くんが演じることで、結果的に見ている人たちの目に素敵に映っているのではないかなと思います。
――ご自身のキャラクターにとって、ライバルたちの魅力や、ここは負けたくないと思っているポイントなど、どのような存在だと捉えていると思いますか?
斉藤:カイ的にはパン・ウェイとレフ・シマノフスキですね。
パン・ウェイに対しては、阿字野壮介という自分の師匠のピアノを、これほど完璧に継承するピアノがあると、カイは思ってもみなかったわけで。衝撃を受ける一方で、これは阿字野のピアノなんだろうかという思いもある。
でも、カイはピアノを戦いだと思っていないから、どうやって彼に挑んでいこうというスタンスです。
レフはレフで、ピアノの演奏はもちろん素敵なんですけど、カイの行く先々で森の妖精のように、いろいろなことを言って惑わせてくる。カイにとっては、少しペースを崩される存在、立ち位置だと思うので、その2人は雨宮以外で気になる存在なのかなと思います。
花江:魅力的なキャラクターというと、修平はカロル・アダムスキにだいぶ心を動かされています。
第1シリーズでは、自分のピアノとは何かということを見つけるための助言をもらい、第2シリーズも序盤はアダムスキとばかり会話していて……わりとトイレの中で会話していることが多いです(笑)。
彼の魅力というのは、自分のピアノはもちろんなんですけど、人を認められる力というか、人の良さを見抜ける力があると思います。
僕は生きている中で、あまり旅をしたことがないですが、彼はショパンを求めていろいろと旅をしてきて、人生経験としていろいろなことを知っています。そこは音楽をやっている上で変わってくることなのかなと。
第1次予選でアダムスキは落ちてしまい、レフの演奏は「良かった」とか、口に出すのも本人としては悔しいと思うんですけど、自分で納得させて、大人として、そこをあえて言えるところが彼の良さで、いいヤツだと思います。
――第1シリーズDVD&Blu-ray BOXの特典映像では、お二人がピアノでショパンの曲に挑戦されていますが、実際に演奏されていかがでしたか?
斉藤:すごく丁寧に教えていただき、最終的に「雨だれ」を二人で連弾形式のような形で弾かせていただきました。
運指(うんし:指の使い方)よりも、息を合わせることや曲のメッセージをくみ取ることが難しかったです。
すごく楽しいなと思いながらも、主に花江くんが担当してくれていた“雨だれ”部分を、僕が一度弾いてみたらすごく難しかったので、「やっぱり、花江夏樹はすごいな」と(笑)。
花江:1つの音で、雨の音を表現するので、弱く引きすぎると音が出ないし、強すぎると雨の音にならないという、強弱の付け方だけでも簡単な事なのに難しいんです。ピアノの奥の深さを知りました。
作中で、演奏を聴いている人たちの前に色や龍が出てくるといった、いろいろな表現で具現化しますが、そういう表現を感じさせる弾き方があるんだなと思うと、同じ人、楽曲でも全然違うピアノになるんだなと、そこで少し分かった気がしました。
――実際に、お互いの演奏や音から、相手の個性や人間性みたいなものは感じられましたか?
花江:短い時間だったので詳しくは分かりませんけど、真面目だなとは思いました。彼の演奏からは、1つも音を外さないよう入念にチェックしながら、1音1音を大切に、一歩ずつ前に進んでいく感じがしました。
斉藤:すごくアーティスティックというか。花江くんはギターなどの楽器も弾くのですが、顔で弾く、体で弾くところがあって。それはすごく大事なことで、音楽という字のごとく、まさに全身で音を楽しんで弾いているかんじが、とても格好よかったです。
ピアノの演奏だけじゃなくて、役者としても、大胆に楽しむところがすごく素敵だなと思っているので、みなさんにも花江くんの笑顔を存分に見てほしいなと思います。
花江:(満面の笑み再現しながら)ちゃんと、いい顔で弾いていたと思う(笑) 。
――それは見逃せませんね(笑)。作品にちなみ、学校の先生など尊敬する人物や憧れの人物からの、印象に残っている教えや学びはありますか?
斉藤:折に触れて、学校であったり養成所であったりと、師となる立場の方に恵まれていたというか、素敵な方にご指導いただいてきたなと思います。
一番印象に残っているのは、大学の時の先生で。先生の下で直接指導を受けてはいないのですが、講義などを通して仲良くなり、年齢は違うけど、僕のことをある種同じものを好きな仲間という風に扱ってくれたのが、すごく印象的です。
今も交流がありますし、師でありながらも気さくに接してくださるというのは、うれしいなと思います。
後は、高校時代の国語の先生に、こちらが思っていたのとは違う視点での教科書の読み方を教えていただいたこともありました。
養成所時代は、事務所の大先輩になる中尾隆聖さんに教わっていたのですが、役者としての心構えはもちろん、もっと根本的な、人としてどうあるべきか、ということを教えていただいたりしました。
花江:僕がデビューして事務所に入った時に、浪川大輔さんも所属されていたんです。5年くらいは事務所が同じで、僕が新人のまだ特に何も仕事をしてない時に、浪川さんと事務所で一緒になる時間があって。
その頃は役幅が狭いというか、いろいろな役ができるようになりたいと思っていたので、30代半ばくらいの、自分よりもっと年齢の高いキャラクターとか、そういう役はどうしたらうまく演じられるのか悩んでいることを質問したら、そんなことは考えなくていいと。
年齢や自分に合った等身大で、自分が一番強みだと思うものをまず極めて、そこで誰にも負けないで戦えるようになったら、自ずと他のやりたいこともだんだんできるようになってくるから、まずは1つ自分の武器を作りなさいというアドバイスをいただきました。
それまでは、悪役や老け役もできるようにならなきゃダメなのかなと思っていたんですけど、それを一旦考えるのをやめて、自分のできる10代とか20代前半くらいの役をたくさん見て、勉強したり演じてみたりすることで、仕事ができるようになって。
そして今、いろんな役をやらせていただけるようになりました。今、考えてみればその通りなんですけど、当時の自分の発想では出てこなかったので、やっぱり先輩のそういうところは大きいなと、いまだに覚えています。
――最後に、見どころを含めファンの方へメッセージをお願いします。
斉藤:第2シリーズはショパン・コンクールの模様が描かれるのですが、カイ、修平、阿字野先生、そして雨宮のお父さん、雨宮洋一郎さんを主に中心として、物語が紡がれていきます。
素敵な演奏と映像、われわれの全力の芝居と、いろいろな要素が合わさって展開していく人間ドラマを、じっくり堪能していただければ幸いでございます。ぜひ、第2シリーズよろしくお願いします。
花江:第2シリーズも純粋に放送が楽しみですし、好きだからこそ、こだわりを持って修平を演じて、みなさんにも修平の思いを届けられればなと思います。
また、オーディションを受けた時に、修平は自分に合っているかもと思ったシーンや第2シリーズに当たる部分のセリフが多かったので、そこに向けて楽しみにしながら、アフレコを頑張りたいと思います。
[取材・文/小澤めぐみ]
営業職を経験後、記者・編集業務に携わりフリーへ。男性声優を中心に、漫画、アニメ、外ドラ、BLなど浅く広く好奇心は一人前。飲食、旅行、音楽、(ヘタだが)写真撮影、話を聞くことも好きで、近年の自粛生活は苦痛。最近のお気に入りは『薬屋のひとりごと』『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』。王道モノから西東問わず歴史モノなど“ファンタジー”や“ミステリー”が好物。今はもっぱら藤沢朗読劇中毒
TVアニメ『ピアノの森』第1シリーズ Blu-ray&DVD BOX Ⅰが発売中!
NHK総合テレビにて毎週日曜24時10分より放送中
※関西地方は同日24時50分からとなります
※放送日時は変更になる場合がございます
【INTRODUCTION】
森に捨てられたピアノをおもちゃ代わりにして育った主人公の一ノ瀬海が、かつて天才ピアニストと呼ばれた阿字野壮介や、偉大なピアニストの父を持つ雨宮修平などとの出会いの中でピアノの才能を開花させていき、やがてショパン・コンクールで世界に挑む姿を全24話で描く、感動のストーリー。
【STAFF】
原作:一色まこと(講談社『モーニング』所載)
監督:山賀博之(「王立宇宙軍オネアミスの翼」「アベノ橋魔法☆商店街」)
シリーズ構成:あべ美佳(「団地ともお」)
キャラクターデザイン・総作画監督:木野下澄江(「ガーリッシュ ナンバー」)
美術監督:栫ヒロツグ(「“栄光なき天才たち”からの物語」「ラクエンロジック」)
色彩設計:吉村智恵(「放課後のプレアデス」)
撮影監督:臼田 睦(「ソードアート・オンライン」)
編集:三嶋章紀(「四月は君の嘘」)
シリーズディレクター:中山 昇
音響監督:長崎行男(「宝石の国」「聖☆おにいさん」)
音楽:富貴晴美(「西郷どん」(大河ドラマ)『関ケ原』(映画))
アニメーション制作:ガイナ(「想いのかけら」)
製作:ピアノの森アニメパートナーズ
【CAST】
一ノ瀬 海:斉藤壮馬
阿字野壮介:諏訪部順一
雨宮修平:花江夏樹
パン・ウェイ:中村悠一
レフ・シマノフスキ:KENN
丸山誉子:悠木 碧
ソフィ・オルメッソン:伊瀬茉莉也
カロル・アダムスキ:小西克幸
平田光生:豊永利行
佐賀武士:遊佐浩二
雨宮奈美恵:三宅麻理恵
一ノ瀬怜子:坂本真綾
雨宮洋一郎:田中秀幸
J=J・セロー:島田 敏 ほか
【メインピアニスト】
反田恭平(阿字野壮介)
髙木竜馬(雨宮修平)
牛牛/ニュウニュウ(パン・ウェイ)
シモン・ネーリング(レフ・シマノフスキ)
ジュリエット・ジュルノー(ソフィ・オルメッソン)