秋アニメ『歌舞伎町シャーロック』小西克幸さん、中村悠一さん、吉村愛監督による座談会第1弾|ゲストキャスト・関智一さんの演技や、キャスト陣も気付かないような仕込みに笑撃!
最新話から第1話を振り返り「キャラクターの実体、差別化」を実感
――では、第1話だからこそ、演じる上で意識したことはありますか?
小西:どうだったかな……実体がありそうで、全く実体がない感じがしていて。やりながら、つかんでいくしかなかったので。
本編が進んで、ワトソンが来てくれたことによって、1つ変化があって。そこからワトソンを経由して、今度は他の人に接した時に、シャーロックの物の見方が1mm変わっているとか。
そういうことが起こっていくことによって、「実体が出てくるのかな」と演じながら思っていたので、意識したことは何かわからないですね。
マイク前で演技をするということではなくて、なんとなく、歌舞伎町にいる人になればいいかなと思ってました。
何か、これをこうしてああしてとかあまりなくて、何をやっても正解みたいなところはあると思うんですよ。基本変な人なので、僕が楽しかったらいいかなという感じですかね。
――第1話といえば、いわゆる作品のイントロ的な部分があると思うので、キャラクターが見える話数だと思いますが。
小西:もう、埋もれていていいやと思いました。
変な話、他のキャラクターが個性強いし、ちょっとずつ全24話を通して、「シャーロックはこういう人です」というのを見せられればいいなと思っていたので、1話から頑張って何かをしようとかは全くなくて。
本当に、他の人に「お任せします」みたいな、そんな感覚の方が強いですかね。歌舞伎町で、ずっと自分なりに生きてきて……という、その延長線上で演じていったらいいかなと。なので、そこまで深くは考えていなかったと思います。
――中村さんはいかがですか?
中村:そうですね、いろいろ考えて演じたんだとは思うんですけど……第1話を録ったのは、いつ頃でしたか?
(インタビュアーの方を見て)わからないですよね(笑)。
小西:だいぶ前。
監督:2018年12月ですね。
中村:そうなんですか……昨日の夜に何を食べたかも思い出せなくなり始めたのに、もうそんなに前に録っているので、何を考えていたか全く記憶にない(笑)。
小西:そうなんですよ、昨日のご飯もわからない(笑)。
監督:あぁ……。
中村:ただ、改めて第1話を見た時に思ったのは、ここ最近の収録でやった話数よりは固いなと思いました。
まだ作品全体でのお芝居の振り幅がどこか計りかねているなというのを、自分で思いました。今もう1回アフレコをしたら、ちょっと違うんだろうなと思いますね。
当然ですけど、最終話付近の方が振り幅が大きくなったり、はっちゃけていたり、キャラクターとしての表現が、10キャラいたら10キャラ全員の差別化が大きくなってきているなと。
見ていて、僕だけじゃないんですよね。全体的にまだ、みんな腹の底が見えないような状態になっていたな、というのが第1話を見た感想です。
小西:(中村さんに)第1話って、つかみにくくなかった?
監督:わかりにくかったですか?
小西:情報が多いのかな……。
中村:情報は多いですね。キャラもガッと、急にいっぱい出てくるので。
小西:なんだろうな、第2話から『歌舞伎町シャーロック』が回り始めた感じで。もちろん第1話も面白かったんですけど、これ初見の人は何回か見なきゃダメだなと(笑)。
監督:(笑)。確かに、結構あれもこれもやっているドライブ感はありますね。
小西:それで最後、落語もやって、「やりたいことをまず1話に全部詰め込みました」感満載のてんこ盛りでしたね。
珍しいバディ共演も、その関係性に中村さんが疑問……?
――共演経験は多いですが、相棒・バディという関係は珍しいと思います。改めて、本作でのお互いの印象はいかがですか?
小西:特にないですけど、いっぱい共演しているので、安心感があります。
僕は基本、人見知りだから、知らない人よりは知っている人の方が100万パーセント良くて。安心でしたね。
中村:確かに、バディという関係性でやらせていただくことは、ほとんどなくて。やっぱり、(小西さんが)先輩としている感じで。
小西:同じ立ち位置はなかなかないよね。
中村:ないですよね。敵対するか、すごく先輩の役かということが多かったので、一緒の目線でというのは……結局、(ワトソンは)虐げられてるんですけど。
小西:(爆笑)。
中村:立ち位置は、バディというか……バディは(相方の部屋)掃除しないだろう、と思いましたね(笑)。
小西:あの(シャーロックの)部屋ひどいよね。デスクの周りは空き缶だらけだったし、ビックリした。
中村:汚い。
小西:こんなことやってたんだって、(シャーロックは)悪いヤツですね。
――お互いが演じるということで、キャラクターのイメージがしやすかったとかは。
中村:僕は、先ほど話したように、シャーロックを受けた時、僕が実際演じたものと、ワトソンで掛け合いさせていただいた他の方のアプローチが全然違ったので。
シャーロックという人間像が方向性もわからないし、どれが正解かわからなかったんですね。
それが、小西さんがシャーロックになったと聞いて「そういうビジョンなんだ」と、すごく明確に見え始めて。
事件解決に、落語があるじゃないですか。一緒にアフレコ参加させていただいた時に、これがピシッと決まらないと「締まらないのかな?」と、技術的なキモになって。
だんだん落語もしなくなるんですけど、物語の締めとしてやるというところで、キッチリ仕事ができる方がいいんだろうなとか思っていたので、そこが小西さんだったので、すごく安心しましたね。
小西:……難しいですね。終わりの方にいくと、ずーっと落語やってるんですよ。「殺す気かっ!」て(笑)。
中村:ありましたね。5~6ページ、ずっと落語で説明してましたね。
小西:家でチェックしている時は「うぉ、まじかぁ」と思うんですけど、アフレコしている時は楽しいです。
監督:(笑)。
――推理落語は、この作品の特長の1つでもあるので、制作側からもポイントになった部分だったりしますか?
監督:そうですね、推理って説明じゃないですか。
ドラマなどの実写は、しゃべっているだけの画面も(飽きずに)持つんですけど、アニメだと絵が動かないので、ただ説明するだけだと持たない。
何かクセを付けようとして、推理する時に「何か節回しを付けてできたら面白いんじゃないか」から始まって、落語という形に落ち着きました。
けど、どちらかというと、飽きさせないための手法でしかないので、(落語が)うまいに越したことはないですが、そこが最重要ではない、という感じですね。
中村:監督がおっしゃっていたように「飽きさせない」ということは、(落語が)長い時に、“単純に落語が成立する”じゃなくて、落語が成立しながら、そこにドラマがないと、聴いていて「ダラダラしゃべってるな」に成りかねないんですよね。
落語シーンだけの起承転結じゃないですけど、そのドラマの流れを配合していかなきゃいけないというところが、やはり技術がある人がやらないと、難しいなと。
もちろん音楽が付いたり、多少絵が変わるとはいえ、長い話数だと特に思いましたね。
小西:うん、そうそう。
中村:「何言ってるか、わからない」じゃ……難しいですね。
小西:絵とストーリーもそうですけど、本編を見た時に自分の演技が音楽に助けられているなと思いましたね。音楽最高。