映画『ターミネーター:ニュー・フェイト』ティム・ミラー監督インタビュー|サラ・コナーというキャラクターを立てつつ、グレースとダニーの物語をしっかりと描く
1984年に公開され世界を騒然とさせた、アクション映画の革命作『ターミネーター』。シリーズ最新作である『ターミネーター:ニュー・フェイト』が2019年11月8日(金)より公開されます!
シリーズの生みの親・ジェームズ・キャメロン氏の製作復帰、シリーズ主演のリンダ・ハミルトンさん、アーノルド・シュワルツェネッガーさんの両名が『ターミネーター2』以降、28年ぶりに共演するなど、話題を集めている本作。
そんな注目作の監督を務める、ティム・ミラー氏にインタビューを実施! 過去作のファンでもある監督が制作にあたり意識したことやこだわったことはもちろん、大好きなキャラクターであるサラ・コナーの存在や、進化を続けるCG技術などについて語っていただきました。
ケーキでいうならトッピング、最後にパラパラと載っている華がアーノルド・シュワルツェネッガー
――本作は、過去作品へのリスペクトも含め、絶妙なバランスに仕上がっていると思います。制作にあたり、監督が一番意識したことはなんでしょうか。
ティム・ミラー監督(以下、ティム):作品全体でいえば「とにかく楽しんでいただきたい」です。
皆さんは意外に思われるかもしれませんが、“リンダ・ハミルトン(サラ・コナー役。以下、リンダ)”と“アーノルド・シュワルツェネッガー(T-800役。以下、シュワ)”のふたりを一番大きな要素にしたくはないと意識して制作しました。
リンダが演じるサラ・コナーを一番にフィーチャーしたいという思いがあり、その一方、シュワは過去の映画全てに出ていたので、そこまで大きく取り上げる必要はないかな、と。
新キャラクターのグレースとダニーはすごくいいキャラクターに仕上がったので、彼女らが輝くところを作ろうと思い、物語の構成・バランスはかなり考えましたね。
そのため、まずはグレースとダニーの物語をしっかり描いて、物語の後半からサラとT-800が出てくるような構成にしました。
ケーキに例えるなら、ほとんどの材料はグレースとダニー。最後のアイシング、塗るものがリンダ。さらにその上のトッピング、パラパラと載っている華がシュワという感じですね(笑)。
一同:(笑)。
――監督は過去作『ターミネーター』と『ターミネーター2』の大ファンだと伺っています。作品のファンだからこそこだわった設定やストーリーはあったんでしょうか。
ティム:とにかくサラ・コナーというキャラクターが好きだったんです。彼女はとてもパワフルで、「自分の子供のためなら死んでもいい」というストーリーにしびれました。
彼女の力の源は、悲しみや怒りといった強い感情です。『ターミネーター2』では「(息子の)ジョンをなんとしてでも守る」という感情が特にうまく描かれていました。
なので、『ターミネーター2』と同じストーリーになってはいけない、と思い今回はジョンを物語上から消し(死亡させ)まして。そうするとまた彼女は強い憎しみを抱いたキャラクターになります。
ハッピーなサラ・コナーというのにはあまり興味が持てない。とてつもなく強い感情が渦巻いていてこそサラだと思っています。
なので、今作は自分の好きなサラ・コナーというキャラクターを立てつつ作ろうというのを、一番重視しました。
――サラはもちろん、新キャラクターのダニーやグレースなど、今作は「女性」の強さがより際立った印象でした。「守る人」「守られる人」をどちらも女性にしたのはどういった意図があったのでしょうか。
ティム:女性を代表して、あるいは女性の権利を守るといった意図ではないですね。たぶん「あんたにしてもらう必要はない」って感じだと思いますし(笑)。
これは、作品としてそれぞれのキャラクターにどちらの性別がより適切か、という話です。
今までの作品はジョン・コナー(男性)を守ってきました。なので、今回はダニーという女性を守ることで、状況がいろいろと違ってくるんです。これまでと「違う」ということがすごく大事で。
また、グレースに関しては、制作時のいろいろな話し合いの中で、常に「女性にしよう」と話が出ていました。これは女性のほうが面白いから。サラのような強い女性像を、シリーズでは描いてきましたし、なにより、アクション映画で強い男性が銃を撃つさまは見飽きているので(笑)。
そこから「守る人は女性で、かつ傷を負って、いろいろな経験をしていて、薬で痛みをコントロールしているようなキャラクターはどうだろう」という提案が出ました。
直感的な違和感は感じるが、直し方はまだ分からない
――映画『デッドプール』(ティム氏の監督作品)はもちろん、今作のターミネーター・REV-9の分裂シーンなどを観て思いましたが、CGが素晴らしかったです。技術の進歩や監督の演出もあり、CGでなんでもできるように感じます。それでもまだ、CGでできないことは存在するのでしょうか。
ティム:「人間」ですね。例えば、今作には若いころのサラとT-800が出てきます。立ち姿だけなら再現できますが、会話、喋りが入るとボロが出ます。
特に、人間の表情、顔の筋肉はものすごく複雑なので再現が難しい。普段から意識して人の表情を見ているわけではなくとも、CGで再現された表情を見た際、「なにかおかしい」となる時があります。
ただ、その違和感は感じるけれど、直し方は分からない。人間の表情は、CG技術で一番チャレンジすべき議題ですね。
――その壁はまだ越えられない?
ティム:1、2カットの短い尺ならともかく、映画全編を通しては難しいです。
……実は、回想シーンは当初もう少し喋っていました。けれど、やっぱり違和感が拭いきれないので、仕方なくカットしましたね。
後で考えれば、いらないシーンだと分かりましたし、なにより冒頭でそういった違和感を与えてしまうと、観客の見る気を削いでしまうので。
――最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
ティム:日本には本当に多くの『ターミネーター』ファンがいらっしゃると聞きます。
実は私は、日本のアーティストや映画に多分に影響を受けてきました。なので、今度はこの作品を見た日本の若いアーティストに、影響を与えられたら、と思います!
――ありがとうございました!
映画『ターミネーター:ニュー・フェイト』作品情報
11月8日(金)公開
イントロダクション
一度は回避したと思われた人類滅亡の日”審判の日“。だが、その危機はまだ終わってはいなかった……。
人類の命運を握る女性を守る謎の強化型兵士グレースと、女性の命を狙う凶悪に進化を遂げた最新型ターミネーター REV-9との壮絶な攻防。
そして彼らの前に現れる、サラ・コナーとT-800。人類と地球の未来をかけた壮絶な戦いの火ぶたが、再び切って落とされる……。
果たして人類は再び”審判の日“を回避することはできるのか!?
■製作・ストーリー:ジェームズ・キャメロン『アバター』『タイタニック』
■監督:ティム・ミラー『デッドプール』
■配給:20世紀フォックス映画
■キャスト:
アーノルド・シュワルツェネッガー
リンダ・ハミルトン
マッケンジー・デイヴィス
ナタリア・レイエス
ガブリエル・ルナ
ディエゴ・ボネータ