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『オトッペ』主人公DJシーナ役 久野美咲インタビュー

「もっと子ども達に響くには?」──YouTube約1億回再生!驚異の5分番組「オトッペ」主人公DJシーナ役の久野美咲さんへインタビュー

2020年4月で放送4年目を迎える、NHK Eテレで放送中の5分番組『オトッペ』。

世界一のDJを目指す主人公シーナと、音から生まれた不思議な生きもの「オトッペ」との愉快な交流を通じて、子どもたちの好奇心を刺激する番組です。


 
番組中のOP曲やED曲も大人気で、関連動画はなんと累計約1億回再生!「オトッペ町役場」の公式YouTubeチャンネルの登録者数は11万人を突破し、5分番組にかかわらず驚きの人気を誇っています。

主人公のDJシーナを演じるのは、久野美咲さん。演じ続けていくなかでのキャラクターの変化や、収録現場のやり取り、さらにはご自身が得た演技への学びなどをお聞きしました。
 

シーナの感情を、一瞬で、わかりやすく伝えたい

――演じ始めた初期には、どのようなリクエストがありましたか?

 
久野美咲さん(以下:久野):最初に「女の子にも男の子にも聞こえるようにしてほしい」とディレクションをいただきました。きっと観ているお子さんたちがどちらの性別でも、自分自身とシーナを重ねてお話に入り込めるようにするためなんじゃないかな、と思っていました。

実際にシーナは向かって右から見ると髪を結んでいる女の子に、左から見ると男の子に見えるキャラクターデザインになっているんです。ビジュアルからも、観る人によってそれぞれの解釈もできるようになっているのは、とっても面白いですよね。


 

――見る対象が「子どもたち」である前提は、演技にも影響しますか。

 
久野:シーナの感情を一瞬で、わかりやすく表現したい、と心がけています。

今まで私はキャラクターを演じる際に、ストーリーや感情の「流れ」や「つながり」を意識することが多かったのですが、『オトッペ』の場合は1つのお話自体が短いんですよね。3分半という限られた時間でお話がどんどん展開されていくので、起承転結のスピードが速いんです。シーナはオトッペたちに振り回されることもあり、感情をぱっぱっぱっと切り替えるように矢吹涼子監督からディレクションいただきました。

このような感情表現に慣れていなかったので、最初はとっても難しくて悩みました。現場でも戸惑っていたのですが、音響監督の本山哲さんが色々アドバイスをくださったおかげで、頑張ることができたんです。感情からくる声の高低差など、技術的なことを教えていただいたので、1カットごとに一瞬で変わる感情も、ちょっとずつ表現できるようになりました。最初は難しかったですが、周りのキャストさんたちのお芝居のおかげもあって、今ではとても楽しみながらシーナを演じています。


 

SNSで話題となった「オトッペ はやくちことば」回の裏側は…

――放送を重ね、キャラクターもたくさん増えました。久野さんのお気に入りはいますか?

久野:メタルクが好きです。千葉進歩さんのお芝居が毎回とても魅力的なんです。

何年にもわたって演じているキャラクターだと、「こんな場面はこうやって反応する」みたいに、どこか型にはまってしまうことがあると思うんです。

でも、千葉さんが演じるメタルクは、置かれた状況や環境、会話する相手によって、どんどん表現が変わっていくので、一緒にアフレコをしていてすごく勉強になります。千葉さんのお芝居を通じて、メタルクがどんどん表情が豊かで魅力的になっていますし、大好きなキャラクターですね。


 

――放送ももうすぐ4年目突入で、記憶に残る回も多くありますね。たとえば、2019年4月に放送された、『オトッペ早口ことば』の回はSNSを中心に話題になっていました。

 
久野:この回は、事前に頂いた台本には早口言葉のお題が書いていなくて、初見でいきなりアフレコしているんです。ウィンディ役の井口裕香さん、ウォッタ役の小原好美さんと私がマイクの前に立ったら、目の前でスタッフさんが早口言葉の書かれたボードを見せてくださって、そのままいきなり本番でアフレコしていきました。
 

――つまり、問題を知るのはスタッフと、出題者のモータロン役の渡辺明乃さんだけ!

 
久野:読み上げる私自身も初見なのに、自分ではなく「キャラクターが早口言葉にチャレンジする」というお芝居ですから、とても難しかったですね。
 

――つっかえる前提で演じるというのも、それはそれで難しい……。

 
久野:読み上げる早口言葉が事前に台本に書いてあったら、お家で練習してきちゃって、きっとある程度はすらすら言えるようになっちゃったと思うんです(笑)。初見だったからこその、ドキドキ感や臨場感みたいなリアルな雰囲気が出ていました。そんなことを思いつくスタッフさんたちも素敵ですよね。

オトッペのスタッフさんたちは遊び心もありますし、番組が面白くなるような工夫なども色々考えてくださるんです。私たちキャストの自由なお芝居も受け入れてくださって、いつもみんなで一つの作品を創り上げていく団結感があります。
 

――普段のアフレコでは、事前に読み合わせなどはするのでしょうか。

 
久野:本番の前にテストをします。そこで他のキャストさんの演技を初めて見て、セリフの言い方やアドリブの感じを把握することができるんです。

テストはしますが、いつも新鮮な気持ちでシーナとしてリアクションできるように心がけています。

『オトッペ』の世界観はフィクションですが、お芝居もリアルな反応のほうが、観ているお子さんたちは感情移入がしやすいのではないかと思って。


 

「てあそびうた」は、一音一音を丁寧に

──オトッペは楽曲の人気も非常に高いですね。オリジナル曲も多い中で、このたび『おおきなくりのきのしたで』や『むすんでひらいて』、『おべんとうばこのうた』といったお馴染みのてあそびうたシリーズが2020年1月20日に楽曲配信され、YouTube公式チャンネルでもMVが公開されました。


 

「おおきなくりのきのしたで」


 

「むすんでひらいて」


 

「おべんとうばこのうた」


 
久野:「『オトッペ』で、てあそびうたを歌います」と伺ったときは、本当に嬉しかったですね。どの曲も私自身が幼稚園の時に覚えたものでしたし、それを『オトッペ』のシーナとして改めて歌えるんだと思って。
 

――歌い方などで気をつけたことありますか。

 
久野:これまでもシーナとして、さまざまな楽曲を歌わせていただきました。どの歌も、「シーナが歌っているようにちゃんと聞こえること」を意識しています。シーナのセリフを言う時と同じ発声で歌うことを心がけてきました。そして、「シーナだったらどんなリズムで歌うかな?」とか「シーナはこういう表情をするのかな?」など、色々想像しながらレコーディングをするので、いつもとても楽しいです。

今回のてあそびうたはいつもより言葉がわかりやすく伝わるように、一音一音をはっきり歌いました。さらっと歌ってしまうと、付いてこられないお子さんもいるかもしれないと思って、一緒に手遊びができるように、より丁寧に、と気をつけました。
 

――なるほど。それで、一度聞くと耳に馴染む感じがあったんですね。

 
久野:楽曲ご担当の吉田ゐさおさんのおかげだと思います。耳に残る、頭に残る、楽しくて癖になる音楽をいつも提供してくださいます。今回のてあそびうたも、オトッペならではのポップなアレンジがされていて、とてもオシャレになっています。今のお子さんたちに興味を持ってもらえそうな楽曲になっていて、すごく素敵ですよね。
 

観ているお子さんたちのことを一番に考えて演じたい

──実際に、子どもたちから感想を聞く機会などはありますか?

 
久野:お子さんから直接聞く機会は少ないのですが、アフレコ現場でお子さんのいるスタッフさんたちからはよく声をかけていただきますね。「毎朝見てるよ」とか、「あの歌はすっごく耳に残るね」って、その場で実際に歌ってくださったり(笑)。

お子さんたちだけじゃなくて、親御さん方にもしっかりと作品が届いてることを実感できるので、本当にうれしいです。
 

――ぜひ、今後何十年と続くシリーズになってほしいです!2020年4月で4年目を迎えますが、久野さんが『オトッペ』から学んで得たものは、何だと考えますか。

久野:10歳のときから声のお仕事をずっと続けてきていますが、これまで演じている時の感覚は「演じる役の主観」に近くて。けれど、『オトッペ』に出会い、自分の主観だけではなく、作品を受け取る側のお子さんたちの気持ちや目線に、以前より寄り添えるようになった気がします。まだまだ実力不足で、客観的に捉えられない部分もたくさんあると思いますが……。

主人公を任せていただいたので、より責任を持って頑張ろうとも思っています。『オトッペ』での今の私の目標の一つは、いろんな人たちにワクワクやドキドキを共感していただいて、シーナがお子さんにとって、自分自身と重ねることができるようなキャラクターになることです。そうしたら、オトッペたちのことをもっと大好きになれますし、身のまわりの音にも興味や関心が持てて、感性が豊かになれるんじゃないかなって。その目標を持った上でお芝居を考えられるようになったのは、この3年を経て変わったことだと思います。

でも、作品が長く続けば続くほど、オンエアを見ていると「もっとこうすればよかったな」と反省したり課題を感じることも多くて。

「もっと心に響くには?」「もっと楽しんでもらえるには?」など、スタッフやキャストの皆さんと力を合わせて追い求めていきたいと思います。シーナとしてそれをできるのが、私自身とても幸せですし、これからも観ているお子さんたちのことを一番に考えて演じていきたいです。
 
[文・長谷川賢人]

番組情報

■NHK Eテレ「オトッペ」

毎週月~金曜日 8:40~8:45
再放送:毎週月~金曜日 17:55~18:00 /日曜日 7:40~7:45
※放送日時は予告なく変更になる場合あり。

 
【ストーリー】
世界一のDJを目指す主人公シーナはある日、不思議な扉をくぐって別の世界に迷い込んでしまう。そこは音から生まれた不思議な生き物・オトッペたちが暮らす「オトッペタウン」。シーナはこの世界で風の音から生まれたウィンディをはじめ、さまざまな音から生まれたオトッペたちと出会っていく。
 
キャスト
シーナ:久野美咲
ウィンディ/パティシーモフ:井口裕香
メタルク/グラストン:千葉進歩
ウッドウッド/フレイミー:木内秀信
モータロン/マネスキー:渡辺明乃
ペッペラーノ/ポトレイン/ナレーター:桐井大介
ウォッタ/ウミッタ:小原好美
ドアモリソン/ウィンディパパ:大山鎬則
カットン/ヒーヒー&ルールー:浅野まゆみ
エレキー:飯島肇
ウエスティ:西島秀俊
ハナビート:志田有彩
ベルベリー:山下誠一郎
フクビー:福田充徳(チュートリアル)
 
オトッペ - NHK Eテレ
オトッペタウン
オトッペタウンTwitter(@otoppetown)
オトッペ町役場公式チャンネル

(C)NHK/オトッペ町役場
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