回を重ねるごとに実感していったすずの誠実さと、それぞれのキャラのお当番回となった第9話――冬アニメ『恋する小惑星』鈴矢萌役・上田麗奈さんインタビュー【連載第5回】
すずの想い、感情をさらけ出した第9話
―― ここまでお話いただいたように、すずは本当に振れ幅の大きいキャラクターだと思いますが、演じる上で大切にしているポイントを教えてください。
上田:そもそも彼女は、自分自身のことで悶々としたり、心がグッと動く姿を人にあまり見せずに、自分だけの世界ではなくみんなと一緒にいる世界を見ていたい女の子だと思っています。
一歩引いているように見えるのは、距離を取りたいということではなく、すずの性格、体質と言いますか……物事を客観的に見ることが得意だから、無意識にそうなっているのかなと。ちょっと引いたところから世界を見て、その上で自分の役割を果たす。なので、そういった余裕やゆとりのようなものを演技でも引き出せればいいなと考えていました。
普段からアフレコでは、感情を出せば出すほど心も体力も消耗してしまいます。ですが、すずを演じる上ではちょっと引いて、心にストッパーを置いた状態でいなければならなかったので、普段よりも心の消費量が少なく、その分疲れも少なくて。改めて、すずは必要な場面でアクセルを踏んでいたのだと実感させられました。
―― 本作に限らず、キャラクターのテンションが一気に上がった際の上田さんの演技は、なにかが取り憑いているんじゃないかと思うくらい、いい意味でとても印象的です。
上田:本当ですか? でもやり過ぎないように自制するのが大変で……。ギアが上がると、 もっと感情を爆発させたいという欲も自然と湧いてくるのですが、すずに関しては「できる女の子」なので、行き過ぎるのは違うとディレクションをいただきました。
コミュニケーションが取れないタイプではないから、アウトプットの仕方は周囲を置いてけぼりにせず、笑ってもらえるコメディの範囲に収めるように。無意識のコミュニケーション能力の高さはちゃんと出せるように意識したので、ちょっと抑える場面もありました。
―― さじ加減が難しそうですね。
上田:毎回、「これで大丈夫だったのかな?」と気になっていました(笑)。ただ、スタッフさんとしっかり相談した結果なので、オンエアされたものは、すごくポジティブな気持ちで見届けることができました。
―― なるほど。では演じる上で印象的だった話数を挙げるなら?
上田:誰のためでもない自分のために、自らの気持ちと言葉を出した第9話が一番印象に残っています。
―― みさへの告白のシーンでは、すずが本心をさらけ出しましたね。
上田:だからこそ髪を切るという選択をしたのだと思います。
―― このシーンではなにかディレクションはありましたか?
上田:「私の気持ち、受け取ってください」というセリフは顔の見えないシーンだったため、テストでは緊張しながらも感情むき出しのなんの装備もしていない状態で挑みましたが、その結果、「このセリフのときは笑顔になっていて大丈夫です」とディレクションをいただきました。
想いを伝える場面で腹をくくっているのか、言えることが嬉しいのか……とにかく笑顔で伝えたいというディレクションで。個人的には、このセリフの中にすずのいろいろな可能性が込められていると思っていたので、どっちもありだと感じました。
実際に笑顔でこのセリフを言ってみると、不思議とどこかスッキリする部分があって、「あぁ、すずらしいな……」と嬉しくなりました。