『攻殻機動隊 SAC_2045』神山健治監督&荒牧伸志監督インタビュー|『攻殻機動隊』とは何なのか? “攻殻”を“攻殻”たらしめるためのメソッドとは
3DCGのメリット
――技術的には3DCGに加えてモーションキャプチャを使ってという演出ですか?
荒牧:それでやると面白くなるだろうという思惑のもとに提案した次第ですね。
――どこが面白そうだと思われたのですか?
荒牧:神山監督は3DCGの作品を何本も作られてますが、モーションキャプチャを活用した演出は初めてだったので、そこが一番大きいポイントかなと思います。
神山:僕はアニメーションを作ってますけど、アニメーターではないので、監督として映像を作っていく時に、イメージをどうやったら具現化できるのかという方法を選んでいるだけですね。
モーションキャプチャは、演出的なイメージを役者さんというファクターにダイレクトに伝えることで、一旦それを具現化してくれるやりやすさがあります。
もちろんやりやすいだけではないんですけど、「何か面白いことできるんじゃないかな」って、お話しをいただいた時に思いましたね。
――演技をするのがアニメーターではなくて、 モーションキャプチャの役者ということですか?
神山:はい、そうですね。
――さらにモーションキャプチャの方がダイレクトに演出できると?
神山:もちろんアニメーターともダイレクトに打ち合わせをするんだけど、彼らは描く時間が必要だし、絵に起こしていくのは必ずしもイメージ通りにはいかない。彼らが描きたいものもあるし、役者さんも言いたくないセリフは言いたくないっていうのがあると思うんです。
ただ、モーションキャプチャでは、そのレスポンスが圧倒的に早いんです。
――スタジオを拝見したのですが、ここでそのモーションキャプチャの芝居をやっているんですね。
神山:ここで収録しています。演出意図を伝えてこういう風にやろう、という感じで。
あと、実写と違うのはセットもなければ、外で撮るわけでもないし、衣装も着ていないこと。役者さんが「これはどういう状況なんだろう?」と想像しなければいけないから、ブルースクリーンでの撮影以上に難しいと思うんですよ。
「これ、車です」って言っても、網の椅子しかないわけで。その中で彼らに何をやってもらうかを克明に伝えていく必要がある。実写の監督よりもCGシーンを作る監督に近いと思います。
それに加えて、やってほしい演技、表現したいドラマを役者に伝えていきます。「よーいスタート」でカメラを回した瞬間にそのレスポンスが返ってくるわけで、 そうすると良い悪いだけじゃなくて、「あ、俺の考えていたことが違ったな」とか、「伝えようと思ったらこうじゃないかも」というのをその場で判断できるのはモーションキャプチャの良いところかなと思っています。
荒牧:ラフな背景ですけど、1回テイクが終わると車に座っているトグサみたいなものをちゃんとプレイバックしてチェックできたりするんです。