自分だけど自分ではない、空想人物の心の動くままに――|石原夏織5thシングル「Against.」インタビュー
別人格の自分が2人いるような感じです!
――レコーディングでは、どんな心構えで何を意識して歌ったのでしょうか?
石原:作品の曲ではありますけど、作品だけにとらわれるのは違うなと個人的に思っているんです。ですので、歌う時には作品やキャラクターのことをそこまで気にせずに、自分がこういう立場だったら……と考えるようにしました。自分だけど自分ではない、別の空想人物がこの状況でどういう風に心が動くのかなって。ここはこうだ! と決めつけるのではなく、心が動くままに歌ったというのが正直なところです。
最初にスタッフさんから「切なさも格好良さもある曲だから、可愛くならないようにお願いします」とは言われていたので、特に意識したとすればそこです。
――格好良さ、切なさ、情感溢れるところなど、すごく思いが伝わってきましたけど、ご自身で特に共感できたポイントを挙げるなら?
石原:サビの『叶えるためにそうAgainst. 迷いはしないそうAgainst.』は共感できました。私は2人(イスカとアリス)のように抗ったりしているわけではないですけど、やったら先が見えるかもしれないからやるか! という気持ちや、悩みなんか振り払ってとりあえず進んでみよう! という気持ちは、すごく共感できるなって。
――とはいえ、誰しも大変な時や辛いことはあるわけで、そういう時に石原さんはどうやって自分を奮い立たせていますか?
石原:私は、あまり奮い立たせすぎると失速するタイプなので、「とりあえずこれをやりたいから、(目の前のことを)やるか」みたいに、割とあっさりしているかもしれないです(笑)。
――オープニングを歌うと同時に、役者としては音々を演じているということで、難しさはあったりしましたか?
石原:音々は真逆の人間というか、常に明るくポジティブなので、この曲のような悩みがないと言った方が正しいんですよね。私は、アーティストとしての延長がこの曲、声優としての延長が音々(を演じること)と思っているので、全く別物として割り切ってやっていました。言い方は難しいですけど、別人格の自分が2人いるような感じなんですよ。
でも、いろいろな視点で作品のことを考えていくのは面白いです。この作品に出会わないと気づけなかったことですし、もしアリス役だったら歌う時も役に寄り添った方向から見ていたと思うんです。
――確かに、アリス役だったら全然違ったでしょうね。アリスの気持ちも入ってきちゃいそうですし。
石原:だからなおさら、別人格が存在するように感じるのかもしれないです。とても面白い立ち位置でやらせていただいていると思います。
――では、そういう意識とは関係なく、単純に歌って気持ちよかった箇所やレコーディングの思い出があればお聞かせください。
石原:サビの『争う 意味が 護るためなら』というフレーズは、歌詞的にも気持ちを全面に出しているところですし、メロディ的にも盛り上がっていくところですので、すごく感情をのせやすかったです。歌っていてとても楽しい部分でした。
――逆に難しかったところは?
石原:難しかったのは……最初キーが合わなくて大変だったことですかね(笑)。
強いて言えば、先ほど言った「Shalala…」の部分が難しかったかもしれないです。この曲の顔になる部分でもありますから、何パターンか録りました。格好いい方向性は同じですけど、もっとやってみたり抑えてみたり、3パターンぐらい録ってみて。個人的にはどれもしっかり歌えていたので、どれになってもいいなと思っていました。
――耳に残るフレーズですからね。何も考えてない時にふと出てきそうです。
石原:歌詞を覚えなくても鼻歌で歌えそうなフレーズだったので、スタッフも私も一番気をつけて録りました。