ぼくらの人生を変えたアニメ11選【2019年編】|『さらざんまい』が教えてくれた「欲望を手放さない」こと
『さらざんまい』が諦めない心を教えてくれた
これまでの幾原監督が描く作品には共通して「家族」「友情」「愛」などいくつかのテーマがあると思っています。中でも特に感じているのが「運命に抗う物語」であるということ。例えば、『少女革命ウテナ』では「女の子だから王子様になれない」という運命に抗う、『輪るピングドラム』では「生まれたときにあらかじめ決められていた妹の余命」という運命に抗う、『ユリ熊嵐』では「クマと人間との断絶」という運命に抗う、など作中に登場するキャラクターそれぞれが運命に抗っている様子が描かれています。
そして、『さらざんまい』は一人ひとりが抱えている人間関係の「つながりたいけど、つながれない」という運命に抗う物語であると感じました。
『さらざんまい』を見始めた2019年4月、フリーライターとして活動を始めて4ヵ月目を迎えていた時期です。私がフリーランスを選択したのには何か大きな志しがあったわけではありません。
2018年8月に働いていた会社が解散、無事に転職したものの新しい会社の人間関係に悩んで体調を崩し、会社員として働くことにつらくなったことからフリーランスの道を選択。当時は今のようにエンタメ関連の記事は全く書いておらず、ビジネス・キャリア・採用関連などの割とお堅いジャンルの仕事を受けていました。というのも、新しいことへ頑張る気力が全く起きず会社員時代に培ってきたスキルや知識で「自分にできることをそつなくこなせばそれでいいや」と思っていたのです。
情けないことに、私はそれまでも「やりたいこと」と「楽な道」を天秤にかけたとき、「楽な道」を選び続けていました。結果それで「楽な道」に進めるかというとそんなことはなかったのですが、そうやって「やりたいこと」を諦め続けてきていたのです。
実際は自分の好きなアニメや映画、音楽に関わる仕事がしてみたいと心のどこかで思っていました。けれど、これまで実績もないし仕事にするなんてきっと無理だ、それなら趣味で関わっていようと諦めていました。
そんなタイミングで見た『さらざんまい』に衝撃を受けます。それは前述した通り、とても面白い作品であったというのはもちろんのこと、登場人物一人ひとりの必死な姿を見て自分の情けなさを痛感したからです。自分の限界を勝手に決めて、つらそうな道を避ける。それはそれで悪いことではないと思います。だけど、私には心の奥底にしまい込んだ「やりたいこと」があった。
『さらざんまい』のキャッチコピーである「つながっても、見失っても。手放すな、欲望は君の命だ。」や劇中歌『カワウソイヤァ』の歌詞「欲望を手放すな!」など作中に度々登場する“欲望”を自分自身も手放してはいけないと思うようになったのです。
そして、2019年5月下旬からアニメビジネスを学ぶために約半年間かけてフォーラムに通い、エンタメ関連の仕事を探して少しずつ応募していくように。『さらざんまい』を見ていなければこうしてアニメイトタイムズで記事を書いていることはなかったかもしれません。