ぼくらの人生を変えたアニメ11選【2018年編】|『HUGっと!プリキュア』「フレーフレー私!」は今でも私にとっての合言葉
ハグプリで特に心が動いたお話
さて、子育てを先にあげてしまいましたが、本作のテーマは4つ。「子どもを守るお母さん」「ヒロイズム」「子育て」「お仕事」。さらに友情、夢、多様性という従来のプリキュアらしさも盛り込んでいます。1年間という期間があるとは言え、これだけ多くのテーマをエンターテインメントとして子どもたちに届けられるのがプリキュア製作チームのすごいところです。
プロデューサーの梅田和沙さん(ABCアニメーション)は、第一報で「プリキュアシリーズはこれまで15年間「戦うヒロイン」を描いてきましたが、一番身近な「おかあさん」こそ女の子にとっての「つよく」「やさしく」「カッコイイ」ヒロイン像を体現しているのではと考え、本作では「子供を守るおかあさん」としてのプリキュアを描いていきます。その一方で、「おかあさん」として赤ちゃんと向き合うだけではなく、中学生の女の子として自分自身とも向き合い、これまでのシリーズで描かれてきた「友情」「夢」といったテーマも変わらず丁寧に描いていきます」とコメントしています。
ハグプリの放送が始まると、敵の組織"クライアス社"がブラック企業のようだったり、イジメとの向き合い方が描かれていたり、男の子がプリキュアになったり、リアルな出産シーンが描かれたりと、今どきの価値観を織り交ぜながら、現代社会の課題にも切り込み、大きな話題を呼びました。
個人的に印象的だったのは、敵側のアンドロイドのルールーが「キュアアムール」になったこと。キュアアムールを演じるのは田村ゆかりさん。アンドロイドがプリキュアになるという設定もAIが発達した現代を反映していて新鮮でしたが……なによりゆかりんがプリキュアになったことが嬉しかったです(王国民の石橋さんもめちゃくちゃ喜んだはず)。ルールーがえみるとの友情を深め、プリキュアになるまでの軌跡もグッとくるものがあります。
そんなハグプリは全49話。今回この記事を書くにあたって全話改めて見直しましたが、1話、1話に見どころが多すぎて、ですね……少し、いや、かなり悩みましたが、いち母親として感動したお話を取り上げたいと思います。
第5話「宙を舞え!フレフレ!キュアエトワール!」
応援シーンが印象的だったハグプリ。「フレーフレー〇〇! フレーフレーわたし!」と誰かを応援するだけでなく、自分を鼓舞しているのもステキです(引坂さんのエネルギッシュで熱い声援が素晴らしいのです)。しかし、はなは、むやみやたらに応援するわけではありません。
第4話でスケートでの失敗が心に引っかかり、プリキュアになることができなかったほまれ。ほまれはプリキュアになれなかったことに引け目を感じ、はなとさあやに距離を感じてしまいます。そんなほまれ追いかけようとするはなたちに「そっとしたいたれや。十分がんばっとるヤツにがんばれ言うんは酷やで」と声をかけるハリー。
それでも、はなは大好きなほまれを応援したいとほまれを追いかけ「なんて言葉をかけていいか分からなかったの。もっとイケてる言葉言いたかったけど……」と説明。ほまれの心が解けていき、その後プリキュアに変身します(だいぶ端的な説明なので、この流れはぜひアニメーションでご覧くださいませ)。
42話にも、ある人物(この時点では敵)からの「どんなに頑張ってる人も頑張れないときはあるからさ。そんな時に今までもらった“頑張れ”が効くのよ」という言葉が登場します。ハリーの優しさにも、ただ“頑張れ”を言うのではなく、自分の言葉で丁寧に気持ちを伝えて応援するはなにも、胸が熱くなりました。応援そのものの難しさ、でも大切な人を応援したいという気持ちをプリキュアならではの方法で説いた5話は必見です。
35話「命の輝き!さあやはお医者さん?」
産婦人科医が「帝王切開はつまずきじゃないわ。立派なお産よ」と語った場面が話題を呼んだ35話。
女優として大活躍中のさあやがお医者さんの役をやることになり、さあやたちは病院を見学することに。医者のマキの指導の下、産科のお仕事を手伝うことになったさあやは、もうすぐ弟が生まれるという女の子・あやに出会います。
あやのお母さんは二人目を妊娠中で、逆子のため帝王切開での出産を控えていました。
“完璧な子育て”を目指すあやのお母さんは、「次の子には完璧な子育てをしようと。なのに最初からつまずいて」と帝王切開を「つまずき」と表現します。それに対して産婦人科医は「帝王切開はつまずきじゃないわ。立派なお産よ」と諭しました。
胸を張っていいんだよという趣旨の言葉に救われたお母さんも多かったと思います。また、産婦人科医の「ネットの情報がすべてじゃない」という意見は、子どもにも覚えておいてほしい言葉です。
出産シーンを描いた第27話「先生のパパ修行!こんにちは、あかちゃん!」にも言えることですが、このお話を見て助産師に憧れるお子さんも増えたのではないでしょうか。また、お姉ちゃんになるあやの葛藤もとてもリアル。とにかく見どころの多い回です。
37話「未来へ!プリキュア・オール・フォー・ユー!」
内藤圭祐プロデューサー(東映アニメーション)は、ハグプリ発表時「プリキュアオールスターシリーズとしてこれまで大切にしてきた想いもしっかりと繋いで、15周年目ならではの仕掛けと、「HUGっと!プリキュア」ならではの可愛くてカッコいい「プリキュア」をお届けできるよう、スタッフ一同製作に全身全霊を捧げて参ります」というコメントを残していました。
15周年ならではの“仕掛け”ってなんだろう? と気になっていましたが、そのひとつが、この年の秋映画であり、プリキュア15周年の看板を背負った『映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』。
本作にはハグプリはもちろんのこと、ふたりはプリキュアを筆頭に、プリキュアの15年間を彩ったテレビシリーズの歴代プリキュア55人がオリジナルキャストによる声出しで出演しました。
公開に合わせて放映された37話は、映画と同じく全プリキュアが総登場。先輩たちだって暴れたい! プリキュアオールスターズが全員そろった絵は壮観でした。
また、もしこれからご覧になられる方がいたら、それぞれのサブタイトルにも注目してほしいです。過去のプリキュアシリーズを感じることができるかも?
最終回「輝く未来を抱きしめて」
主人公・はなの出産シーンで話題を呼んだ最終回。個人的に一番グッときたのは、はぐたん、ルールー、ハリーたちとのお別れの場面です。最終決戦後、日常のシーンを挟んで、はぐたんたちとの別れの日がやってきます。しかし、はぐたんは、タイムマシン「未来へかえるくん」でママ(はな)たちと離れ、未来に帰ることを分かっていませんでした。そしてハリーに連れられはぐたん、ルールーたちがタイムマシンに乗り込みます。
別れはいつもつらいものです。私はこの時、はなが「フレフレ、はぐたん! フレフレ、ルールー! フレフレ、 私!」と涙ながらにエールを送るという綺麗な絵を思い浮かべていました。しかし、ハグプリは別れの悲しさをごまかさず、最後までリアリティを持って描いてくれたのです。
はぐたんたちが乗るタイムマシンが走り出すと、最初は“泣くのを我慢して笑顔だった”(この絶妙な表情がすごい)はなが走り出します。大泣きするはぐたんに、思わず手を伸ばすはな。手が触れあったとき、さまざまな記憶が蘇ります。
そしてはなは「絶対また会えるよ! だから、いっぱい食べて、いっぱい遊んで、大きくなるんだよ! はぐたん! はぐたん! はぐたん……!」と泣き叫びます。食べて遊んで。私もきっと、同じ立場になったら同じことを言うと思います。最後に背中を震わせ泣き崩れるはなは、お母さんそのもの。そして、それぞれ悲しい思いを抱いているにも関わらず、はなを見守るさあや、ほまれ、えみるの姿は、家族のようでした。