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春アニメ『Vivy』グレイス役・明坂聡美 声優インタビュー

春アニメ『Vivy -Fluorite Eye's Song-』グレイス役・明坂聡美さん 声優インタビュー│ヴィヴィの活躍がもたらした“AIと人間の残酷な恋物語”に「人間は愚かだな」

TVアニメ『Vivy -Fluorite Eye's Song-』が、いよいよクライマックスを迎える。

このアニメは、人間とAIの戦争を食い止めるため、ヴィヴィ(CV.種﨑敦美)の前に100年後の未来から現れたAIのマツモト(CV.福山潤)が、ヴィヴィと共に、その戦争に結びつくであろう出来事(シンギュラリティ=技術的特異点)を変えるため、歴史の裏側で「シンギュラリティ計画」を実行するというもの。正史から、ヴィヴィたちが変えた修正史になった先にいったい何が起こるのかーーそのラストを見届けたい!

AIとして初めて人間と結婚したというグレイスを演じた明坂聡美さんに、作品の魅力やグレイスについて、作品屈指のエピソードであった第5話&第6話の内容を中心に、たっぷりと語ってもらった。

オーディションで受けていなかったグレイスをどう演じていったのか

ーー明坂さんの演じるグレイスが登場したのは、第5話と第6話でした。

グレイス役・明坂聡美さん(以下、明坂):そのあとの展開がまったく分からなかったので、いま予測不能なところで楽しんでいます。第9話でオフィーリアの声が突然小山力也さんに変わったときは、日高里菜ちゃんを返せ!ってなっていましたから(笑)。

『Vivy -Fluorite Eye's Radio- Visual Side』というラジオ番組にゲストとして出たとき第7話の予告をしたんですけど、アントニオ(CV.小山力也)のことは伏せていたんです。「小山さんだから陽気なキャラクターなんですね」と福山さんと雑談していたら、「楽しみにしていてください」という思わせぶりな返しをされたので何だろうと思っていたら、まさかの幼女乗っ取りという(笑)。

ーー間違えてはいないですが……(笑)。日高さんはオフィーリアの記憶も残っていたのかな?とおっしゃっていました。

明坂:そうかも知れないし、もしかしたらそう思いたかったアントニオの記憶かもしれないし……。いろいろな考察ができますよね。

ーーグレイスのお話になりますが、こちらはオーディションだったのですか?

明坂:オーディションなんですけど、受けたのはエステラだったんです。資料もたくさんいただいた作品だったので記憶には残っていたんですけど、ある日「グレイスに決まりました」と聞きました。

ーー資料を見て、どんな印象を受けましたか?

明坂:これは1クールで終わるのだろうかと思いました。まず100年を巡る少女の旅のストーリーが描かれていて、最初は宇宙の絵が多かったんです。どちらかというとスペースファンタジーのようなものだったんですけど、実際は近未来のお話で、人やAIの葛藤という、今から遠くない未来に起こりそうなものだったので、親近感は湧きました。

(※実際に企画当初、舞台は宇宙にするという話もあったとのこと)

ーー確かに身近に感じるストーリーですよね。

明坂:AIの使命とは、心とは何か、あとは人類がすごく愚かだと思いながら、放送を見ています。第2話で、AIにとってキーとなるシンギュラリティだけを変えて、正史になるべく干渉しないということで、ヴィヴィは結果的に(彼女のファンでありヴィヴィの名付け親でもある)モモカの飛行機事故を防げなかったになったじゃないですか。

それを見たとき、第2次世界大戦中、解読不能の暗号機であるエニグマを解読したけど、それを相手にさとらせないために、チームの家族が乗った船が攻撃されるのを見逃したというリアルな出来事を思い出して、

そういう過去の歴史にあるようなことを骨子にしたAI史だから、見ていて心を動かされたり、考えさせられたりするんだろうなと思いました。

ーーマツモトが過去にさかのぼり、ヴィヴィとともに歴史を動かすシンギュラリティ計画を実行していくわけですが、正史から修正史への変遷で痛みを伴うシナリオを描かれたのが、グレイスだったと思います。

明坂 そうなんです。AIとして人間と結婚して幸せになる話だったのに、第4話でエステラ(CV.日笠陽子)とエリザベス(CV.内山夕実)が自らを犠牲にして人を助けたという出来事があり、その影響でグレイスに起こることが変わってしまったんですよね……。

ーーエステラたちの歴史を変えたことで、逆にAIの発展が加速し、ただの看護AIだったはずのグレイスは、海上無人プラント「メタルフロート」のコア(管理AI)にさせられてしまうという、わりと衝撃的な展開でした……。そんなグレイスをどのように演じていきましたか?

明坂:最初にいただいた資料には「AIと人間の結婚の調査。その現場となる人工島の破壊」くらいのことしか書かれていなかったんです。だがらグレイスがどんな子だかも分からず、結婚して何が悪いんだろう、『ラブプラス』みたいにAIの彼女と旅行に行くくらいの話なのかな?と思っていたら、想像以上に重くて! 

しかも第5話の途中で出てきた冴木(CV.小野賢章)の隣にいるグレイスって、台本のト書きにはグレイスの似姿と書かれていたんです。だから本当にグレイスが何者なのかも分からない状態でアフレコ現場に行ったんですけど、現場でも「グレイスは結婚する看護AIで、優しくて優秀な子です。スタート!」みたいな感じだったので、「えー!」って思いながらでした(笑)。

なのでまず似姿のグレイスは感情をあまり入れずにセリフを言っていました。本当のグレイスのセリフは、第5話の冒頭の正史での「私もあなたを生涯守ります」くらいだったので。そこから第5話のBパートくらいで第6話の台本をいただいたときに、こんな子だったの!となりました。

ーー第6話では、看護AIとして、冴木少年に出会った過去が描かれました。ここはどのような感じに?

明坂:看護AIとしてなんですけど、幼い少年に対する表情、そしてお母さんがどこにいるのか(=お母さんに捨てられた)という言いたくないことを、少年に命令されて言わされるところでもあったので、機械的ではあるけど、ちょっと優しさも見られるような、それでいてカタカタ壊れたような感じで説明していったんですけど、リテイクもなかったので、あまり起伏がない感じで良かったんだなと思いました。

ーーここで少年を抱きしめるところは、声から母性みたいなものが感じられてすごく良かったんです。これは少年の傷ついた心にはずっと残るよなと。

明坂:私、よく巨乳声とか言われるので、母性系の役をやる上では良かったのかな。巨乳か人外が多いんですよね……(笑)。

それとここは、小玉ひかりさん(グレイスの歌唱担当)の歌声も良かったですよね。優しい歌声だったので、あれを聴かされたら、きっと一生覚えているだろうなと思いました。

ーー屋上での、大人になった冴木との再会はどうですか?

明坂:ここは正史的にもエステラの頃からしたら進んでいますし、本人も冴木のことを覚えていて、わざわざサプライズと言いながら意地悪をしたりしたので、恋愛感情みたいなものもあるのかな?と、少し心の距離としては近い感じで演じています。

ーーすごく人間っぽかったですよね。

明坂:そうですね。そうでないとプロポーズまではいかないだろうと思ったので、ドキドキするのを隠している風に話してみたんです。

ただ、実際に指輪の箱をパカッと開けられたときはあまりにも嬉しくてリテイクを出してしまったんですけどね(笑)! あそこはグレイスの中でも一番幸せで穏やかな時間だったんだろうなと思ったのに……直後の電話によって、その全てがなくなるという。

ーー幸せの絶頂から、メタルフロートのコアになりますからね……。

明坂:本当に笑った瞬間だったのに、切なかったです。

ーーいま話をしていて思ったのは、ここはこうなのでこういう気持ちで言ってくださいと、明確に指示されるわけではないし、出演者も考察するほど明確な答えを知らないのに、お芝居では正解を出している。それがすごく面白いです。

明坂:いろんなところから(ヒントを)掬い上げて演じていたから、こういう解釈もあり、ということでOKが出ていたのかなって思いました。なのでと、「今のは出し過ぎなので……」とか、思考を促すディレクションが多かったです。

(C)Vivy Score / アニプレックス・WIT STUDIO
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