夏アニメ『かげきしょうじょ!!』原作者・斉木久美子先生×渡辺さらさ役・千本木彩花さん×奈良田 愛役・花守ゆみりさん 座談会|あきらめず、やり遂げること。そういう作品――【連載第1回】
斉木久美子先生による漫画『かげきしょうじょ!!』がTVアニメ化! 輝く舞台へ情熱をそそぐ歌劇少女たちの〈青春スポ根ストーリー〉が、2021年7月より開幕となります。
放送を記念して、アニメイトタイムズではリレー連載を実施! 第1回は原作者の斉木久美子先生、さらに渡辺さらさ役の千本木彩花さん、奈良田 愛役の花守ゆみりさんの座談会をお届けします。
「アニメ化したら引退する」
――斉木先生は、アニメ化が決定したときの心境を覚えていますか?
斉木久美子先生(以下、斉木):担当編集の滝澤さんから電話がありました。滝澤さんはとても熱い方なのですが喋り方は淡々としていて、アニメ化についてもさらっと言われたので、「やった!」というよりは「え?」って驚きのほうが大きかったですね。しかも、「アニメ化したら引退する」とまで言っていたので……。
渡辺さらさ役・千本木彩花さん(以下、千本木)&奈良田 愛役・花守ゆみりさん(以下、花守):ええ~っ!
斉木:冗談半分で「アニメ化しないかな~」って、よく話していたんです。それこそ、『ジャンプ改』(現在は休刊)で『かげきしょうじょ!』(『かげきしょうじょ!! シーズンゼロ』)の連載がスタートしたときは、「もしヒットしてアニメ化したら、もう思い残すことはないので引退します!」って(笑)。
千本木:ダメです、ダメです!
斉木:そしたら本当に実現してしまって。絶対にアニメ化はないだろうなと思っていたので、びっくりしました。今でもまだ壮大なドッキリなのかなって不安になります……。
奈良田 愛役・花守ゆみりさん(以下、花守):大丈夫です、もうアフレコも終わっているので!
――ははは(笑)。ちなみに、千本木さんと花守さんは原作を読んだとき、どんな感想をお持ちになりましたか?
千本木:実は、ある作品の原作者さんにオススメされたマンガだったんです。めちゃくちゃ面白いから絶対に読んでほしい、と。画もきれいでお話も私好みだったので、お仕事とはまったく関係なく、ファンとしてずっと追いかけていたんです。そしたらオーディションの話をいただいたので、心がざわつきました。
花守:私はお恥ずかしながら、オーディションの際に読ませていただいたのですが、これは絶対に受けたいと思って。「愛ちゃんを受けたいです!」って夜中にラブコールを送りました。それぐらい愛ちゃんに一目惚れしてしまったんです。色鮮やかできれいな世界の中に光と陰が同時にあり、愛ちゃんはその陰の部分を背負って、輝く舞台に立とうとしている……。そこにグッときて、泣きながら原作を読みました。
斉木:お二人にそう言っていただけて、うれしいです。ありがとうございます。
何かを諦めてきた100期生たち。挫折があった上での輝きに注目
――では、さらさについて彼女の魅力をどんなところに感じましたか?
千本木:明るくてまっすぐなので、よく「主人公タイプ」と言われますが、意外とそれだけじゃないところがさらさの魅力です。生い立ちや過去を知っていくと、彼女にも苦しみや悩みがあって、ただキラキラしているだけではないんです。演じるときも明るさだけではなく、彼女が感じていること、考えていることを常に意識するようにしています。
花守:さらさって一見すると、「清く正しく美しく」をいちばん体現しているように見えるんです。でも、挫折があった上での輝きなんですよね。
千本木:しかも本人は挫折と思っていなくて、いろいろな事情があっても環境のせいにしないんです。そういう環境かもしれないけれど、自分は自分……そう考えられるところがすごいなと。誰かを見るときに色眼鏡で見ないところもさらさらしいところだと思います。
斉木:まさにお二人がおっしゃったことがすべてですね。さらさは子どもの頃に一度挫折を経験して、いろいろなトラウマを抱えています。精神的に大人になるのが早かった子でもあるので、その意味では天真爛漫な部分とのギャップが大きい子ですね。
千本木:過去を背負った上での明るさが魅力ですよね。
斉木:100期生は何かを諦めてから再スタートした子が多いんです。挫折はものすごい力になるんですが、特にさらさは「トップになる」と言い切れる心の強さがあります。もしかすると、現実の音楽学校ではそう簡単に言葉にしてはいけない言葉かもしれません。でも、さらさは入学早々に言えてしまう。その揺るぎない心が魅力ですね。
――では、愛についてはいかがでしょうか。
花守:愛の視点でお話が進んで行く中で、どうして彼女はここまで心を閉ざすんだろうって思ったんです。最初はさらさを突き放しますし、どこか冷たさを感じるところもあって。でも、その過去を知っていくと納得せざるを得ないんです。愛の過去を知り、私も愛と一緒に奈落に落ちていく感覚がありました。
千本木:愛ちゃんの過去は衝撃的だよね……。
花守:「え、嘘でしょ」と思って、泣きました。その衝撃が大きかったからこそ、彼女が幸せになっていく過程を絶対に見たいと思いましたし、泣いた分だけ愛を演じたいという気持ちも強くなって。どんどん引き込まれていきました。
斉木:愛は幼児期に悲しい事件があって、そこで心を閉ざしてしまいました。さらさと出会い、ようやくその扉が開くのか……というのが物語のポイントなので、その成長を見守っていただけたら嬉しいですね。今は、カルガモ親子のいちばんうしろで一生懸命ピヨピヨピヨピヨとくっついていくような状態です(笑)。
花守:応援したくなる子ですよね。
千本木:さらさはある程度、自分の道を決めて前に進んできて紅華にいますけど、愛はまさに今進んでいる最中の子なので、すごく応援したくなります。視聴者の方でも、何か一歩踏み出したいと思っている人にとっては共感できるキャラクターなるのではないかなと。あとはぜひ、さらさとの関係がどうなっていくのかにも注目していただけたら嬉しいです。