夏アニメ『かげきしょうじょ!!』原作者・斉木久美子先生×渡辺さらさ役・千本木彩花さん×奈良田 愛役・花守ゆみりさん 座談会|あきらめず、やり遂げること。そういう作品――【連載第1回】
先生から見たアフレコの感想は?
――斉木先生は、アフレコにはご参加されているのですか?
斉木:アフレコスタジオで見学させていただいたのは1回きりで、基本的にはスカイプで音声だけ聞かせていただいています。お二人と初対面のときもスカイプ越しで……。あのときは「わぁ~!!」みたいな変なテンションですみませんでした!
千本木:全然、そんなことなかったですよ! むしろ緊張がほぐれました。
斉木:すべてが初めての体験だったもので……。でも、特殊な条件下でのアフレコなんですよね? いつもと勝手が違って大変なんじゃないかなって。
千本木:そうですね。少人数の収録なので、やはり今までとは少し勝手が違います。さらさは周囲に影響されながら周囲に影響を与えていくキャラクターなので、誰かの言葉に感化されたり、誰かに言葉を投げかけたりする場面で相手がいないと、想像頼みになることもあって。それが大変ではあります。その分、さらさの感情をより深く理解して臨みますし、まわりのキャストさんも限られた人数の中でいいものを作ろうと努力されているので、できあがったものはいつもと変わらないと思います。
花守:関係性がすてきな作品ですし、愛も周囲の影響を強く受ける子なので、リアルタイムで掛け合いができないのは残念でした。それでも、アフレコ前に他の方が収録された分を聞かせていただいたり、なるべくさらさとは一緒に録らせていただいたりしているので、可能な範囲で最善の形にはできたと思います。本当に、スタッフの皆さんには感謝しかないです。
――さらさと愛は一緒にアフレコすることが多かったんですか?
花守:一緒が多いよね?
千本木:そうですね。あとは(中山)リサ先輩とか。
花守:愛ちゃんにとって重要なシーンはさらさと一緒の場面が多かったので、大事なところを一緒にできるたびに、「ここは押さえられた!」ってほっとしていました。
――先生のほうから何かお芝居に関するリクエストはありましたか?
斉木:まったくありませんでした。プロの方、現場の方にお任せしています。
花守:音響監督さんから、何かこうしてくださいとディレクションをいただくこともあまりなかった気がします。
千本木:「奈良田」のイントネーションくらい?
花守:奈良田問題! あった~(笑)。
斉木:実は、私は「奈良田(平板)」派だったんですよ。だから、「な」にアクセントがあると知って、びっくりしました。
花守:わかります!(笑) オーディションのときに平板で「奈良田愛です」って発音したら、音響監督さんに「那由他(なゆた)のイントネーションです」と何度か直していただくことがありました。
千本木:先生も「奈良田(平板)」で読んでいたのはびっくりです。
斉木:でも、プロの方がそうおっしゃるなら、「な」にアクセントがあるんだろうなと。私は神奈川出身ですが母が静岡なので、発音にあまり自信がなくて(笑)。
花守:大変そうなのは野島 聖役の花澤(香菜)さんですよね。いちばん「奈良田さん」って言う機会があるので、よく名前を確認し合っていました
――斉木先生は、オーディションはご覧になったんですか?
斉木:さらさだけ現場を見学させていただいて、他は決まった方の声をあとから確認させていただいた形ですね。千本木さんの演技は直接拝見しました。
千本木:そうだったんですね! 実は最初は星野 薫役で受けていたんです。星野だけのつもりだったら、さらさと愛もお願いしますとなって……。結果、さらさ役をいただいたので、とてもびっくりました。
斉木:さらさは全員にやっていただいたと伺いました。確かにさらさは難しい役ですから。千本木さんの演技はよく覚えています。これは嫌われないさらさだと思って。
千本木:嬉しい!
斉木:愛もそうですが、同性に嫌われないキャラクターにしたいという思いがあったんです。千本木さんのさらさは、かわいいけれど現実離れしすぎていない絶妙なバランスでした。愛は決まったあとに聞かせていただいて、すごくぴったりだなと思いました。それで花守さんってどんな作品に出ているんだろうって調べたのですが、そうしたら別の作品でも“愛ちゃん”を演じられていて。
花守:そうなんです(笑)。ポーカーフェイスな役が続くなと思ったんですが、こちらの愛ちゃんはポーカーフェイスに至るまでにかなり深刻な理由があったので、それをしっかり意識しつつ、彼女の殻を少しずつ破っていって止まっていた時間を動かしていこうと考えました。ちょっとずつ彩りを加えていくようなイメージで演じています。
斉木:オーディションは歌もありましたよね?
千本木:ありました。しかも、課題曲は実際に宝塚音楽学校の試験でも使われた曲と聞いて、それがすごく難しかったですね。
斉木:でも、皆さんお上手でさすがだなと思いました。