夏アニメ『かげきしょうじょ!!』星野 薫役・大地 葉さん、沢田千夏役・松田利冴さん、沢田千秋役・松田颯水さん 鼎談|本物の姉妹だからわかる「合格通知が1通しかこない怖さ」【連載第5回】
斉木久美子先生による漫画『かげきしょうじょ!!』がTVアニメ化! 輝く舞台へ情熱をそそぐ歌劇少女たちの〈青春スポ根ストーリー〉が、2021年7月より開幕となります。
放送を記念して、アニメイトタイムズではリレー連載を実施! 第5回は星野 薫役・大地 葉さん、沢田千夏役・松田利冴さん、沢田千秋役・松田颯水さんの鼎談をお届けします。
星野の過去は作中屈指のピュアピュアエピソード
――物語もいよいよ後半戦。演じるキャラクターの印象については何か変化はありましたか。
沢田千夏役・松田利冴さん(以下、利冴):千夏は第一印象から大きな印象の変化はなかったと思います。「ロミオとジュリエット」で星野さんたちと一緒のグループになったときに(第六幕)、奈良っちにじゃんけんで勝って、「勝っちゃった」って顔をするんですね。千夏はこういうときに喜びよりも引け目を感じてしまうような子。第一印象から千秋に比べて控え目な子だと感じていたので、第六幕も「やっぱり」という印象でした。
沢田千秋役・松田颯水さん(以下、颯水):オーディションで最初に資料をいただいたときは、姉の千夏が千秋のために一度、紅華の合格を蹴ったという設定が飛び込んできて、常に負い目を感じている子なのかなと思ったんです。でも、原作を読ませていただくと、不意に陰りのあるシーンも出てくるけれど、基本的にはとても明るく感情をしっかり表に出せる子だとわかって。アフレコに入る前にちょっとした印象の変化がありました。
星野 薫役・大地 葉さん(以下、大地):星野はサラブレッドですし、見た目もカッコいいので、気が強くてプライドの高い子なのかなと思っていたんです。でも、サラブレッドだからこその「私はこうあるべき」というプライドと、「こうあるべき」を打破したいという理想の両方があると感じて……。ただ誇らしげだったり、驕(おご)りがあったりするキャラクターではないんだなと思いました。その意味では、一番感情を剥き出しにする子だなと思いますし、泥臭さを感じます。
――演じる上で大切にしていることはどんなことですか?
大地:当たりの強い子ではあるんですが、決して相手を萎縮させたいわけではないんです。適宜ツッコミを入れるキャラクターでもあるので、ときどきコミカルさを出して語気のバランスを意識するようにしています。年齢感もあくまで十代なので、変に大人びないように年相応の女の子感を出すようにしました。
利冴:千夏は素直さ、ですね。憧れの場所に来られた喜び、素敵なものを見たときの胸の高鳴りみたいな感情をストレートに出すようにしています。私自身は何かを熱烈に推すという経験がなかったので、最初はなかなか掴むのが難しかったんですけど、カッコいいものに出会ったら素直にカッコいいと表現できる女の子であることを意識しました。
颯水:私はりっちゃん(利冴)とは逆にアイドルが大好きなので、千秋を演じるときはその感情を真っ直ぐ出せばいいのかなと思いました(笑)。それから、私の場合、演じているうちに声が低くなることが多いので、ちょっとハイな気持ちで演じるようにしています。
大地:沢田姉妹って、一緒に声を合わせることが多いよね?
颯水:確かに、「せーの」で一緒に声を出すことが多かった。でも、過去にもそういうことはあったんですけど、「せーの」を言わずにお互いの空気感を察して同時に入ることが多かったんです。でも、感染症対策でお互いの間にパーティションが入るようになってから……。
利冴:お互いの気配が読めなくなってね。
颯水:音響監督の長崎(行男)さんに「なんか揃わないよね」って言われました(笑)。
利冴:板が1枚あるだけで、こんなにお互いのことがわからなくなるんだって不思議な気持ちになりました。
――ではストーリーについても伺えれば。まずは星野についてですが、ここまで彼女は杉本とはまた違ったリーダーシップを見せてきましたよね。
大地:入学ギリギリの年齢で合格していることもあって、一番勝手を知っているお姉さんなので、自分がしっかりしなきゃという気持ちがあったんだと思います。ただ、それが最初はうまくいかなくて、きつく当たりすぎちゃうところがあって……。
颯水:少し焦っている感じがありましたよね。他の子たちは徐々に紅華のことを知っていけばいいって感じですけど、星野の場合はそんな悠長なことを言っている時間はないって。
大地:そうそう。だから第三者の視点から見ると、星野はストイックだなと思う一方で、その言い方だと誤解されちゃうよ~という複雑な気持ちになります。
利冴:でも、お芝居については沢田姉妹よりもずっと先を進んでいるのが星野だと思うんです。それはたいちょー(大地)のお芝居からもすごく感じました。第六幕の「ロミオとジュリエット」を一緒に録らせていただいたんですけど、星野のロミオを聞いた瞬間、本当に舞台が始まったかのような感覚になって……。
大地:え、嬉しい!
利冴:きっと千夏も同じ気持ちで役に入ることができたんだろうなって思うくらい、私もスムーズに演じられました。たいちょーがすごく落ち着いて演じてくれたことで、自分も落ち着いて演じられましたし、星野のロミオに引っ張ってもらったなって。
颯水:実際、私とたいちょーが同期で、りっちゃんは後輩だもんね。
利冴:そうそう、たいちょーとは養成所で同じクラスだったことがあって。当時、たいちょーはすでに事務所に所属されていたんですけど、その芝居をよく見ていたんです。当時を思い出しながら、また引っ張ってもらっているなって気持ちになりました。
――そして第8幕では星野の過去が描かれました。
大地:辻陸斗役の畠中(祐)さんと一緒にアフレコできたのが嬉しかったです。二人の心が近づいて、離れて……という絶妙な距離感が描かれるので、その距離感、温度感をしっかり伝えたいと思い、絶対に陸斗役の方と一緒に収録したいと思っていたんです。おかげさまで一緒に収録できて、縮まっていく二人の心とだんだん上がっていく二人の体温を表現できたんじゃないかなと思います。
利冴:このインタビューの時点だとまだ映像を見られていないので、すごく楽しみです。
大地:「これが恋か!」って思うよ。甘酸っぱいし……もう、たまらなかった(笑)。
颯水:確かに、この二人みたいな関係って永遠にときめくよね。ベタベタするわけでもなく、かといって無関心でもなく。二人とも素直なんだけど、言葉にはしていない……みたいな。
大地:そうなの! お付き合いしているわけではなく、うっすらお互いの気持ちを感じているような状態で。結局、決定打になる言葉を言えないまま離れてしまう……。この関係がいいんですよ。
利冴:「かげきしょうじょ!!」の中でも屈指のピュアピュアエピソードだよね。
大地:校歌を歌うシーンも「つらい!」って、泣きそうになりながら歌いました。恥ずかしいので泣きませんでしたけど(笑)。アフレコが終わったあとに、畠中さんと「いい話ですね……」って話して、お互いに達成感に包まれながら帰りました。
――一方で、ダンススクールでの山岸との再会というチクッと胸に刺さるシーンもありました。
大地:サラブレッドだからといってコネが働くわけでもなく、実力がなければ落ちるものは落ちるという残酷な世界なので、ぽっと出てきた子に先を行かれることもあるんです。それがわずかなシーンの中で描かれ、星野が掘り下げられたのがこの作品のすごいところだなと思いました。このエピソードで星野を応援したいと思う方が増えたら嬉しいです。