この記事をかいた人
- 逆井マリ
- 神奈川県横浜市出身。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。
──3曲目は……すごい曲ができましたね……!
May’n:あははは、ありがとうございます!
──タイトルの「B.H.U.」はビー・エイチ・ユーの読み方で合っていますか?
May’n:そうです!<BUCHO Hands Up!!>から取っていて。記号っぽい雰囲気にしたいなと思ってこのタイトルになりました。
──まず歌詞カードを見ずに聴いたのですが、エレクトリックでカッコいい曲だなと思いつつ「部長って言ってる気がする」「名古屋にまつわるワードが入ってる!?」と(笑)。でも<BUCHO Hands Up!!>のところに関しては「put your hands up」の空耳なのかな、と。
May’n:「えっ!?」って思いますよね(笑)。シングルにタイアップの2曲が入ることは先に決まっていて。「オレンジ」は私自身の青春を思い出しながら書いた曲で、「シキザクラ」は地元の名古屋を思い出しながら制作した曲。地元にいたときのことを思い出すような2曲が揃っていたので、シングル全体に青春を込めたいなと思っていて。
それで、青春時代を過ごした名古屋ソングを作ろうと。名古屋人は特に郷土愛が強いと言われているんです。名古屋の曲を全国のライブで歌って「名古屋サイコーだろ!?」って言いたいなって(笑)。
── 「名古屋を彷彿させるワードがたくさん出てきますよね。特に<テバサキサバキ>が気になりました(笑)。
May’n:いつか歌詞に<テバサキサバキ>という造語を入れたいなと思っていたんです。名古屋人って(名古屋名物の)手羽先をうまく食べられることを誇りにしている方が多いんじゃないかなと思っていたので(笑)。「あれってテバサキサバキだな……めっちゃ良い言葉だな!」って。それで私の言葉メモに書いて、何年も温め続けてきました(笑)。
あとナナちゃん(名古屋市の名鉄百貨店にある名古屋名物人形)も好きだからナナちゃんは絶対に入れたいな、<BUCHO Hands Up!!>も使ってみたいなって。
ただ突拍子もない言葉だから、なかなか活かせなくて(笑)。満を持しての心のメモソングです。曲も面白いとコミカルソングになってしまうので、日本語が分からない外国の方が聴いたら「かっこいい!」と思われるような曲にしたいなと思っていました。
──それで作曲・編曲をTeddyLoidさんにお願いしたんですね。
May’n:そうです! Teddyさんとご一緒できたらイメージに合うなと思って。TeddyLoidさんは以前からずっと大好きな方で。初対面でしたが実は同じ年で、共通の知り合いもいるんです。私にとっては念願の、という感じでした。
で、Teddyさんにも「<BUCHO Hands Up!!>という言葉を入れたい」「テバサキサバキという言葉を昔から温めていて……」「名古屋ソングにしたいんです!」というお話をさせてもらって。初対面のクリエイターさんにこんなふざけたオーダーをしていいのかと思いつつも、面白がってくれました。
──さきほどプライドの話がありましたけど、名古屋愛というのはまさにMay’nさんのプライドでもありますよね。
May’n:ああ、確かにそうですね! でも名古屋人って名古屋の魅力やマインドを大きな声で発信しないんですよ。例えば、名古屋以外の方に「名古屋メシそんなに好きじゃない。全部茶色でしょ?」って言われても「分からないんだったら良いです」という、「敢えて言いませんよ」って文化があるように感じていて(笑)。
「えびふりゃあ」「どえりゃぁうみゃあ」も名古屋人は誰も言わないんですよ。普通に「エビフライ」「美味しい」って言っています(笑)。でも「名古屋って言ったらえびふりゃあでしょ?」と言われても否定しないという。
──だから<どえりゃぁうみゃあ えびふりゃあ? 誰も言わんけど、えーわ!>なんですね(笑)。
May’n:そうです!(笑) そこから<そうね無駄に知らせない>とサビにつながって。私たちは無駄に知らせないから良いよ。でも知りたいと思ってくれた方に対しては話すよって。それが名古屋人マインドじゃないかなと私は思っています。この曲には、名古屋人マインドや人生観を細かく入れることができたんじゃないかなと。
──他にも気になるワードがたくさんあって、全部おうかがいしたいくらいです。
May’n:話し出すと永遠に喋れます(笑)。<ナゴヤトバシ>(イベントの開催や列車の停車がないこと)も絶対入れたいなと思っていました。名古屋にとっては“あるある”なので。少し訛りを入れたり。
さっきも言ったんですけど、絶対にナナちゃんは入れたいなと思っていて。「ラララ♪」と歌うところを「ナナナ」と歌って、いつの間にか<Na Na Na Na ちゃん>になったら良いなって。ナナちゃん人形って全国的には有名ではないんですけど、名古屋にとってはある種ハチ公のような存在で、誰もが知っている待ち合わせスポットなんです。
ただ名古屋以外の方からすると、少し分かりにくい場所があるんですよね。名古屋人の知名度と比例していないんだなと外に出て気づきました。だから絶対にナナちゃんは推したいと思っています。
──ディレクションもTeddyさんがされたんですか?
May’n:そうです! めちゃくちゃスムーズでした。Teddyさんチームのかたが「上手!!!」と褒めて下さって、私も気分がアガっちゃって(笑)。楽しくレコーディングをさせていただきました。
ちなみに、Teddyさんのスタッフさんの中に名古屋に行ったことがないという方がいて。「名古屋に行ってみたくなりました!」と言ってくれたときに「やった!」って。世界中のひとに名古屋の魅力を伝えたいです。
──クラブチューンではあるんですけど、それだけでなく和の要素があって、海外の方の反応が良さそうですね。
May’n:海外でライブをする機会が多いんですけど、日本ならではの和の要素を取り入れた曲ってほとんどなくて。以前から「和の要素を取り入れたいな」となんとなく思っていたんです。いくら海外の音楽や文化に触れていても、日本人だからこそ琴線に触れるもの、心地いいものってある気がしていて。
それと、東海は織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の三大武将の場所でもあるので、武将ソングにしたいなという思いもありました。そんなお話をTeddyさんにさせていただいたところ、「じゃあ和の楽器も入れましょう」と言ってくださったんです。だから、武将の気持ちで部長の気持ちを書くというか。
──それで<そうよ何も渡さない 築いたこの城で><独自に天下統一>という言葉があるんですね!
May’n:ただのMay’nで「天下を取るぞ!」って宣言してしまうとちょっと重いけど、武将だからこそ、<天下統一>とか、「もっともっと上に行こうぜ!」のような力強い言葉をナチュラルに言えるんじゃないかなって。だから名古屋ソングでもあり、May’n武将の曲でもあります(笑)。
──めちゃくちゃ濃い3曲が揃いましたね。
May’n:そうですね。3曲とも今のMay’nとして制作ができたことを嬉しく思っています。特に「B.H.U.」は最近制作したので、この勢いのまま届けられるのかなと。
10年以上、ずっとMay’nのことを見てくださっている方にとっては「あ、部長だ!」って思ってもらえるし、アニメの楽曲でMay’nのことを知ってくださっている方にとっては「新しいMay’nだ」と感じていただけるだろうし。自分自身のMay’nという枠を、シングルで、しかもタイアップソングで広げることができたというのは、とても大きなことです。
──新しいチャレンジや変化も詰まったシングルになっていて。さきほど「シキザクラ」のお話で「変化することへのときめきと怖さ」というお話がありましたが、May’nさんとしては変化していくことに対してはどのように思われているのでしょうか。
May’n:もともと「変わっていきたい」「成長していきたい」欲が強いタイプなんです。May’nとしてもそう思いながら活動してきましたが、アーティストとして、ひとつのイメージが強くなってくると、「これを壊しちゃいけないのかな」と思ったり、変化することに対する恐怖心を抱いたり……大きなチャレンジをすることに対しての緊張感を持っていたこともありました。今回はたまたま勢いのあるロックナンバーは収録していないんですけど、路線変更をしたわけでもなく、今後変わらずそういう楽曲も出てくると思います。
私は変化って、どんどん表現が深くなっていくことだと思っているんです。音楽の可能性をどんどん広げていくこと。それがMay’nにとっての変化。
変化を恐れず続けていくことで、変わらない良さにも気づかされます。どんどん深く、広がっていくMay’nの音楽に期待して欲しいです。
──メインストリートの先にどんな景色が広がっているのか、未知だからこそ楽しみですね。
May’n:その言葉、素晴らしいですね……!(笑) 私自身もこの先の景色は見えていなくて、ゴールもなくて。メインストリートを歩みながら、どんな音楽に出会っていくのか、ここまでキャリアを重ねてきても未知数ということが嬉しいし、ワクワクします。
──MV、ジャケットも曲に合わせて柔らかいイメージですね。
May’n:今回のシングルは「等身大でナチュラルなものにしたい」と思っていたので、ジャケットも日常を切り取ったようなものにしました。自分では見慣れている姿ではあるんですけど、ファンの方たちからは「めちゃくちゃ新しいな」って反響をいただいています。意外とこういうアー写って今までになかったんですよね。ビジュアル面でも、音楽と同じようにイメージを広げていきたいなと改めて思いました。
──MVの撮影は『プラオレ!』の聖地・日光で行われたんですよね。
May’n:そうなんです。日光には今回初めて行ったんですが、すごくステキな景色でした。中禅寺湖でも撮っているんですが、天候にも恵まれて。人が少ない時期に敢行したこともあり、「中禅寺湖を独り占めできるなんて!」って。中禅寺湖の撮影スポットに行くまでに山道を通ったら、鹿と猿が歩いていて。日光の野生の猿を見られるなんて、と感動しました。
──前日には温泉宿に泊まられたとか。
May’n:しかもその温泉宿は「志季大瀞」という『プラオレ!』にも登場する場所で。めちゃくちゃステキな宿でした。聖地巡礼でこれから行かれる方もいらっしゃると思うんですけど、私は逆に「泊まったホテルが『プラオレ!』に出てる!」という状態でした(笑)。
撮影が楽しくて、景色も綺麗でリフレッシュになりましたね。撮影時はミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』の公演中の休演日だったんです。体力的にちょっとしんどいなと思うタイミングだったんですが、すごくパワーをもらって。日光から帰ってからの公演がさらに良くなりました。
──ジャケに写っている手もなんだか印象的で。手にまつわるワードが含まれたシングルだからこそなのかなと、深読みをしてしまったんですが……。
May’n:なるほど! そこは意識してなかったです。でも表情を出すならせっかくなら手も入れたほうがいいのかなとは思っていました。でも手の表情はよく褒められます(笑)。ユリアを演じているときでも「手の使いかたがうまい」と言っていただきました! これは初出し情報です!(笑)
──ありがたいです!(笑)
May’n:そんな大したことじゃないですけど(笑)。皆さんに早くこのシングルを聴いていただくのが今は楽しみで。「オレンジ」「シキザクラ」はアニメでも聴けますが、「B.H.U.」は早くみんなに届けたいなって。
──(取材時の時点では)情報解禁されてないからこそ、どんな反応が届くのか楽しみですね。
May’n:今はそうですね。ただ、どうしても出したくて! Twitterで歌詞をチラ見せしました(笑)。みんな楽しみになってるか、不安になってるのか、どっちだろう(笑)。
──(笑)。きっと、楽しみにされてますよ! 12月25日(土)に開催される、May’n Studio Live 2021「May’n Xmas」ライブも楽しみですね。
May’n:今年はオンラインですが、クリスマスを音楽で過ごすというのを私の中で恒例化したいなと思っていて。皆さんお忙しい中だと思いますし、私自身もミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳』の公演中なんです(※ライブ当日、May’nさんは休演日)。
気合いの入るスケジュールではありますが、ミュージカルは、自分の心・音楽の成長にもつながっていて。新しいチャレンジをこれからも続けていきたいですね。
インタビュー・逆井マリ
神奈川県横浜市出身。既婚、一児の母。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。パンクからアニソン、2.5次元舞台、ゲーム、グルメ、教育まで、ジャンル問わず、自分の“好き”を必死に追いかけ中。はじめてのめり込んだアニメは『楽しいムーミン一家』。インタビューでリアルな心情や生き方を聞くことが好き。
CDタイトル:オレンジ
アーティスト名:May’n
発売日:2021年11月24日(水)
発売元:Digital Double
販売元:avex pictures
【CD+BD】
品番:XNDD-00006/B
税込価格:2,640円
【CD】
品番:XNDD-00007
税込価格:1,540円
M1:オレンジ
作詞・作曲:May'n 編曲:今井了介 Sound produce:今井了介
タイアップ:TVアニメ「プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~」エンディング主題歌
M2:シキザクラ
作詞・作曲・編曲:くじら
Licensed by HoriPro International Inc,
タイアップ:TVアニメ「シキザクラ」エンディング主題歌
M3:B.H.U.
作詞:May'n 作曲・編曲:TeddyLoid
M4:オレンジ instrumental
M5::シキザクラ instrumental
M6::B.H.U. instrumental
1.オレンジMV
2.Awesome Studio -short- ※MVオフショット映像