【美食殿】を中心とした“居場所アニメ”を作りたい――冬アニメ『プリンセスコネクト!Re:Dive Season 2』守屋竜史さん(プロデューサー)×上内健太さん(アニメーションプロデューサー)インタビュー【連載第1回】
自由な動きや戦闘の迫力を出すために意識した「カロリーの最適化」
――より具体的に、ゲーム『プリコネR』の魅力をアニメ化する際にはどのようなことに気をつけたのかお聞かせください。
守屋:やっぱり“しぐさ”ですね。例えば、キャルのしっぽが楽しい時にふにょんふにょんと動いて反応するとか、自然と出るしぐさも可愛く描かれています。それを丁寧に描くことで、何気ない日常が可愛い、何気ない日常が素敵、何気ない会話から絆が深まっているのがわかる。ゲームだと(アニメパート以外は)喋っているキャラクターは立ち絵なので、セリフでしか想像できないですけど、行間を超えた形で提示できるのがアニメならではの魅力だと思います。
上内:ビジュアル面で言えば、とにかくゲームのデザインが良すぎたので、あれをアニメに落とし込んだ時に「アニメになるとちょっと違うよね」とならないようにしたいと思いました。ただ、ゲームのイラストってアニメで動かすにはちょっと線やパーツが多いんです。なので、それを違和感が出ないように調整しています。
――「Cygames Magazine」に掲載された制作スタッフ座談会では、キャルの杖の先端にある猫の飾りを少し簡略化しているとの話がありました。それ以外にも、いろいろ省略しているところがあるのですね。
上内:全キャラあると思います。たとえばキャルの腰についているパーツもディテールがゲームとは違っていますし。こういうのって色数が減っちゃうと見た目で違和感が出てしまうんですよ。赤いパーツがなくなっちゃうと、印象でわかってしまう。でも、赤いパーツはあって、赤の中にある線が減っている分にはパッと見で気づかないんですね。そういうところを金崎監督が上手く計算してデザインの方にお願いしていました。アニメーターさんが大変になりすぎないように、かつファンの人が見ても違和感を覚えないように、絶妙なところを探ってくれています。
守屋:そこは「カロリーの最適化」だと思っています。ゲームのまま作画を再現してしまうと、予算の関係上、そんなにアクションができなくなってしまうんです。雰囲気を変えずにカロリーをコントロールすることで、自由な動き、戦闘の迫力といったアニメとしての見栄えがすごく良くなると金崎監督は言っていて。その意図を木村が汲んで「アニメは大きく印象が変わらなければ、好きにしていいよ。それがアニメらしさだよね」と全力でバックアップしてくれました。
もうひとつ例を挙げると、ペコリーヌの王冠はゲームだと(尖った部分が)5本ですけど、アニメだと3本しかないんです。印象を変えず魅力的になったからこそ動きも増えるし、可愛らしさが増える。アニメとして最適化されたデザインに落とし込み、設定の違いを乗り越えられたと思っています。
――確かに言われてみれば違いますけど、それによって魅力が損なわれたと感じるよりも、アニメとして戦闘シーンの動きや迫力がすごいとか、そちらの印象の方が強かったですね。
守屋:アニメならではの最適化は、細かいところでいろいろやっていて。【美食殿】のギルドハウスも、アニメではキャルの部屋があって一緒に生活していますが、ゲームだと住んでいないんですよ。みんながひとつのところにいるのを違和感なく表現するため、アニメではそのように変更しました。いつでも近くで生活している環境を作ろうと。
――CGについてもお聞きします。本作に合わせてCygamesPicturesにCG部が立ち上がったそうですが、CGを使う際に気をつけた点やこだわった点をお聞かせください。
上内:アニメ『プリコネR』で一番CGを使っているのは、シャドウになります。シャドウは結構特殊な処理をしていて、動きを含めて全部CGで作っています。独特なゾンビっぽい動きって、作画でやるのはすごく難しいんですけど、体の周りにある煙も含めてCGディレクターがいろいろ検証してできあがりました。シャドウが軽く見えてしまうと、シャドウの怖さや不気味さが感じられなくなってしまう。金崎監督もそこは気にされていて、自らCGの上がりをチェックして、細かく修正依頼を出すくらい大事にしたところです。
あと、第2期では乗り物も登場しますが、そこもCGで動きをつけていただきました。特に第1話の飛行機はダイナミックな動きにして頂けてかなりいい映像になりました。(CG部の)人数的にめちゃくちゃ増えているわけではないですが、当時新人だった人が熟練してきましたし、CGディレクターもセルの作画とCGとのマッチングをすごく考えてくれていて。ザ・CGのような浮いた感じにはならず、すごく自然に見えると思います。
――ほかにも、印象的だったことのひとつに“料理”があります。料理もすごくこだわって描かれていましたよね。
上内:そうですね。第1期と同様に、第2期でも「料理作監」という料理の修正を担当する方がいます。どれだけスケジュールが厳しくても、そこは絶対に入れようと思っていました。『プリコネR』では大事なシーンで料理が出てくることも多いので、そこで料理がおいしそうでなかったらお話も締まらないですし、大事にしていきたいと金崎監督とも話していたんです。
守屋:金崎監督が、最初から最後まで「【美食殿】だから料理には絶対こだわる」と宣言していましたからね。第2期も料理シーンはたくさんありますので、見どころのひとつだと思います。