芥川龍之介と中島敦、“if”でしかなりえない2人の姿とは?|映画『文豪ストレイドッグス BEAST』橋本祥平さん&鳥越裕貴さんインタビュー
宮沢賢治役・堀之内仁さんの可愛いエピソード
ーー今回の映画でお互いに演じられた役、お芝居を見て新しい発見はありましたか?
橋本:もう中島敦はすごく強い! 「めっちゃ強いじゃん!」と思いました。武装探偵社のときとは異なる戦い方を、このポートマフィアの中島敦で感じる事が出来ると思います。普段は、武装探偵社の中で他のキャラクターに振り回されている敦が印象的に残っていたので、こういうクールな敦もなんか良いなぁと。
鳥越:登場シーンはすごく気持ち良かった~!
橋本:(笑)。
鳥越:暗闇の中で敵を倒していくんですけど、敵がどんどん倒れていく気持ち良さといったらもう、リハーサルの時点から僕の心の中はニッコニコでした!
一同:(笑)。
橋本:これは、何の差なんでしょうね? なんでこっちにいるとこんなに強いんだろう?
鳥越:やっぱりポートマフィアだからだよ。
橋本:マフィアがそうさせているのか……!
鳥越:マフィアの格好からもそういう部分が出ているよね。
橋本:そっか。太宰さんがちゃんと教えていたんだ。
鳥越:武装探偵社のメンバーは、個々のキャラの濃さも役者陣の個性も豊かな方たちばかりなので、祥平に早く振り回されてほしいとずっと思っていました。
橋本:みんな自由な人たちだから、見事に振り回されましたね……。
鳥越:逆に芥川がちょっと気をつかってしまうくらいに(笑)。
橋本:そうそう(笑)。
ーーちなみに、誰が1番自由でしたか?
橋本:役としてはみんな自由な人たちなというイメージがありますが、役者としては堀之内くんかなぁ。
面白いなぁと思った堀之内くんのエピソードがあります。撮影最終日、2人のシーンをやってから2人とも同時のクランクアップだったんですけど、その日の朝、堀之内くんの元気がなくて「撮影が終わるから寂しいのかな?」と思って声をかけたんです。
鳥越:うんうん。
橋本:そしたら「今日2人ともクランクアップじゃないですか。絶対、祥平さんのほうにスポットライトが当たりますよね……」と。いやいやいや、2人で気持ちよく終わろうよ!と予想外の答えでした(笑)。
鳥越:何なら、クレジットの1番上に名前があるからそれはそうだ(笑)。
橋本:「祥平さん、全部持っていくじゃないですか~」って(笑)。
鳥越:持っていかせてよ~(笑)。
一同:(笑)。
橋本:すごく可愛いなぁと思いました(笑)。
“if”でしかなり得ない2人の姿
ーー芥川龍之介と中島敦はライバル同士でもありますが、改めて今回の映画で感じた2人の関係性についてお聞かせください。
橋本:割と生まれ育った関係に近しいものがあるので、やっぱり似た者同士というか、合うとことはすごく合うんだなと思いました。
「BEAST」で喫茶店のカウンターで2人で並んで話すシーンがありますが、純粋に似た過去を持っているんだと会話の中で感じ取れるというか。
ただ、やっぱり戦わざるを得ない関係になってしまうのは何かの因果なのかなと思います。
鳥越:中島敦は太宰と出会う場面やルートが違うだけで、こんなにも人格が変わるんだと思うほどの変わり様ですよね。。
武装探偵社に所属している敦にしか言えない台詞はたくさんありますが、芥川が敦のそういう言動に腹が立つ気持ちがわかるんです。芥川が執着する太宰さんに拾われてこんなに恵まれていて、周りの環境が整っている中で甘ったるい言葉を発している。
でも、そんな敦が持っている素直な言葉が芥川には刺さるんですよね。だからイライラしてしまう。なぜそんなにイライラしてしまうのかは、やっぱり敦に興味を持っているからだと思うんです。
それが「BEAST」の世界では、敦はとにかく太宰さんの命令だけを聞き、孤児院の院長先生との間にあるトラウマに囚われた人物になっているんです。そういった、これまでの武装探偵社に所属する敦と、今回のポートマフィアに所属する敦という違いが、客観的に見てもすごく面白いですよね。
映画の中で喫茶店で芥川と笑い合うシーンがあるのですが、それはポートマフィアとして
の敦だからこそ成立するんだなと思いました。
ーー本当におっしゃる通りだと思います。過去も踏まえて、2人の関係性は言葉以上のものがありますよね。
鳥越:劇場版の「DEAD APPLE」の入場特典でもらったこの映画の原作になった小説を読んだとき、「2人が笑い合う」というト書きがすごく印象的でした。本当に“if”でしかなりえない2人の笑みだと思います。
ーー今回の映画でポートマフィアと武装探偵社、それぞれの組織の違いは何か感じられましたか?
橋本:舞台をやっていた頃から思っていたのが、武装探偵社は変わっている人は多いけど仲間のために奮闘できる仲間想いの組織だということですね。そもそも社長がすごく情に厚いので、その人が率いている武装探偵社にいると温かい気持ちになれます。
鳥越:それをいうと、武装探偵社って商店街にあってほしいですよね。みんなの頼りになる組織というか、1つの街に武装探偵社が1つ存在してほしいくらいに親しみのあるチームだと思います。
そんな武装探偵社とは違い、「BEAST」のポートマフィアはより「ポートマフィア」感の強さがあったと思います。“if”じゃないポートマフィアは、まだ仲間に対する想いや街を守るための熱い気持ちがあったり、森さんのようなポップな感じのキャラクターもいたりしたので。
ーー最後になりますが、お二人にとって、芥川龍之介、中島敦はどのような存在ですか?
鳥越:初演のときから人間としても役者としても成長させてもらっていますし、ifの世界でそんな敦の違った部分も演じさせてもらえて。役者として楽しみをくれる存在です。
橋本:これまでいろいろな原作ものの作品に出させてもらいましたが、こんなに一緒に歩んでいる時間が長いのは、もしかしたら『文スト』くらいなのかなと。最初は何もできなかった自分に、純粋にお芝居の楽しさを教えてくれたような、1個何かが外れたような感覚があります。
僕は芥川が残酷さだけじゃない可愛らしい部分があることを知っていますし、これから先もずっと一緒に歩んでいきたいと思えるような存在です。
実写映画『文豪ストレイドッグス BEAST』作品情報
2022年1月7日(金)公開
あらすじ
異能者ひしめく混沌都市、ヨコハマ。貧民街で生きる孤児の芥川龍之介は、ならず者たちの襲撃によって仲間の 命を奪われた。それは「心なき狗」と呼ばれた少年が、瞳に初めての〝憎悪〟を宿した日。そこへあらわれた黒 衣の男は、復讐へと駆り立てられる芥川を嘲り、実の妹・銀を連れ去ってしまう。「やはり部下には、もう一人の 彼を選ぼう」という言葉を残して。
4年後。餓死寸前で川べりをさまよっていたところを「武装探偵社」の織田作之助に 拾われた芥川は、その推薦のもと働きはじめる。だが、ある雨の日だった。喫茶店の カウンターで偶然にも肩を並べた少年は、武装探偵社への遣いだと話す。その者こそ、 表情一つ変えることなく敵を屠り「ポートマフィアの白い死神」の異名で恐れられる、 中島敦。敦は、自分を地獄から救い出してくれた首領を信奉し、命じられるがままに 動くことを誓っていた。そうとは知らず、芥川が受け取った封筒の中に入っていたの は、行方を探し続けた銀の写真で……。
「ついに来た……第四段階」。すべては、闇に染まる黒衣を纏うポートマフィアの首領・太宰治の企てる計画の中にあった。国家に匹敵する武力を持つに至った組織の長 が、真に求めるものとは? 少年たちの邂逅の先に何が待つのか――?
スタッフ
原作:角川ビーンズ文庫『文豪ストレイドッグス BEAST』
監督:坂本浩一
脚本:朝霧カフカ
音楽:岩崎 琢
主題歌:GRANRODEO「時計回りのトルク」
配給:KADOKAWA
キャスト
橋本祥平
鳥越裕貴
谷口賢志
田淵累生
紺野彩夏
桑江咲菜
植田圭輔
輝馬
長江崚行
桑野晃輔
堀之内 仁
広川 碧
齋藤明里
村田 充
岸本勇太
南 圭介
荒木宏文