『ONE PIECE FILM RED(ワンピース フィルムレッド)』谷口悟朗監督の新しい挑戦|アフレコ収録後インタビュー
2022年8月6日(土)公開予定の『ONE PIECE FILM RED(ワンピース フィルムレッド)』。
『ONE PIECE(ワンピース)』は、尾田栄一郎先生による週刊少年ジャンプ(集英社)にて連載中の国民的人気コミック。1997年に連載、1999年にはTVアニメ放送がスタート。2021年、コミックス全世界累計発行部数は4億9000万部を超え、2022年7月には連載開始25周年&最終章突入ということで、これまで以上の大盛り上がり! ますます目が離せない展開となっています。
『ONE PIECE FILM RED』は、総合プロデューサー・尾田栄一郎で贈る映画最新作で、監督は谷口悟朗さん(『コードギアス』シリーズ)。『ONE PIECE』の監督を務めるのは1998年にイベント上映された『ONE PIECE 倒せ!海賊ギャンザック』以来となります。
<STORY>
世界で最も愛されている歌手、ウタ。素性を隠したまま発信するその歌声は“別次元”と評されていた。そんな彼女が初めて公の前に姿を現すライブが開催される。色めき立つ海賊たち、目を光らせる海軍、そして何も知らずにただ彼女の歌声を楽しみにきたルフィ率いる麦わらの一味たち、ありとあらゆるウタファンが会場を埋め尽くす中、今まさに全世界待望の歌声が響き渡ろうとしていた。物語は、彼女が“シャンクスの娘”という衝撃の事実から動き出す――。
今回は映画公開記念企画として、『ONE PIECE FILM RED』のアフレコ収録体験の模様を前後編の2部に分けてレポート。谷口悟朗監督に直接ご指導いただき、収録後はお話も伺いました。本稿は後編のアフレコ収録後に行われた谷口監督のインタビューです。
谷口悟朗監督が意識したガヤの重要性
――今日のレコーディングはいかがでしたか。
谷口悟朗監督(以下、谷口):みなさんよく頑張っていただけたと思いますよ。声優学校の学生さんでも2時間ぐらいやって、ようやく自分を開放していけるようになる方もいますからね。そこは社会人の人々の方が学生よりも、「何かを守るためにはここは捨てていいんだ」ということの割り切りがやりやすいんだろうなと思います。
学生さんは守ろうとして、(表現や声が)出なくなってしまうことがありますから。そういう意味では初体験ということも含めて、みなさんは頑張っていただけたと思います。
普通は緊張すると思います。しかも本番前、ブース内は無音になってしまいますし、緊張するなという方が無理だと思います。みなさんが元気にやっていただけたので助かりました、ありがとうございます。
――これまで多くの作品を作られてきた谷口監督がガヤの重要性を意識した作品というのはどんな作品ですか。
谷口:『男はつらいよ』(※1)かな。ガヤというよりも、バックで流れている音声とかですね。メインでしゃべっている人がいたとしても、それ以外で店の方で人がしゃべっている声が薄く流れてきたりするんですよ。
実際は画面内には存在しなくても、自転車がチリンチリンと言いながら通過していくというのもそうですね。そうすることで、セットの空間とか、生活感を出したりするんだと思います。たぶん高校生ぐらいの時に作品が作られていくというのを強く意識した最初の作品じゃないですかね。
はじめてTVアニメーション監督をした『無限のリヴァイアス』(※2)という作品がありますが、その時からガヤ用としてセリフを作って、それをしゃべってもらって組み合わせるということをしていました。(ガヤはシーンに合わせたセリフを、役者にお任せというかたちで収録されることの方が多い)
今回はライブ会場でしたけど、これが例えば病院だとすると、病院専用のガヤゼリフを作ります。病院から「外科の○○さ~ん」とか「何番の○○さん、どうぞ」とか、アナウンスが聞こえてくるじゃないですか。だから、ガヤゼリフはほとんど隠れてしまうけど、そういったものまで気遣って作るんだという姿勢が大切だと思っています。アニメーションというのは情報の積み重ねによってできるため、そのベースになる情報がないと、説得力を持たないと思うんです。
※1『男はつらいよ』:山田洋次原作・監督(一部作品除く)による渥美清主演のTVドラマまたは映画シリーズ。
※2『無限のリヴァイアス』:1999年から2000年にかけて放送されたTVアニメ。
――今作のアフレコ収録の際に演出上意識したことを教えてください。
谷口:今作でちょっと難しかったのは、メインキャラクターたちです。『ONE PIECE』は長年続いているので、キャラクターたちは、役者さんが大切に培ってきたもの。まずは役者さんが投げてくるお芝居を受け止めました。それを受け止めた上で、欲しいと思うお芝居や、聞かせたいセリフ、他のキャラクターとのバランスをどう持っていくかという調整です。
0ベースで作るわけではなくて、すでに基礎ができあがっているものを利用させていただいて、それをいかに発展させていくかということが大事になってきます。
なので、今作の監督をやると決まった段階で、ルフィ役の田中真弓さんには、最初に挨拶に伺わせていただきました。収録する前の打ち合わせでも、ルフィ、ウタ、ゴードン、シャンクスに関しては、「こういう方針でやらせていただきたい」というような打合せを各役者さんと1対1でお話をさせていただきました。
――公式HPでの監督のコメント「尾田さんやスタッフの人達は、何かを足したい、もっと挑戦したい、違う景色を見たいということ」とあります。本作を制作する上で「ここまで歴史を紡いできたアニメ『ONE PIECE』をどこか自由にする」ために、監督が意識されたこと、挑戦されたことはどんなことでしょうか。
谷口:TVアニメは1000話を越えているので、長年の間にいつのまにかこうやらなくてはいけないという“お約束”ができあがってきます。ところが時が経つにつれて、スタッフは入れ替わっていくんだけど、その“お約束”は残りつづけ、なぜその“お約束”があるのかということまではわからなかったりするんです。
スタッフの方は自分たちの先輩が繋いできたものですから、それを崩すのはなかなか難しいと思うんです。そこに対して、「それは変えてもいいんじゃないか、こう変えちゃおう」という形で言えるのは、組織の外から来た人間じゃないとできないんですよね。
歴史があるのはとても素晴らしいことなんですけど、もしかしたら今の時代の作り方と微妙にずれているところとか、合っていないところがあるのであれば、それは見直すべきじゃないのか。そのために外部から私が呼ばれたというのが目的の1つだろうと思っています。
――ありがとうございました!
【編集後記】
今回ほんの一部ではありますが、アフレコ収録体験を通して、『ONE PIECE』の世界へ触れることができました。情熱を持ちながらも、冷静に進行される監督のお人柄やお仕事ぶりも見ることができ、このようにして『ONE PIECE FILM RED』は作られているんだと体感し、作品への期待もますます高まります。
このレポート読まれた方が実際に映画館へ行かれた時に、「このシーンがあのレポートで書かれていたところね」と思いながら見ていただけましたら、より作品を身近に感じてもらえるのではないでしょうか。
物語のキーマンとなるルフィ、ウタ、シャンクスが活躍する『ONE PIECE FILM RED』は、8月6日(土)公開予定です!!
[文・宋 莉淑(ソン・リスク)]
『ONE PIECE FILM RED』作品情報
2022年8月6日(土)全国ロードショー!!
ストーリー
世界で最も愛されている歌手、ウタ。素性を隠したまま発信するその歌声は”別次元”と評されていた。
そんな彼女が初めて公の前に姿を現すライブが開催される。
色めき立つ海賊たち、目を光らせる海軍、そして何も知らずにただ彼女の歌声を楽しみにき たルフィ率いる麦わらの一味、ありとあらゆるウタファンが会場を埋め尽くす中、今まさに全世界待望の歌声が響き渡ろうとしていた。
物語は、彼女が” シャンクスの娘”という衝撃の事実から動き出すー。
「世界を歌で幸せにしたい」とただ願い、ステージに立つウタ。ウタの過去を知る謎の人物・ゴード ン、そして垣間見えるシャンクスの影。
音楽の島・エレジアで再会したルフィとウタの出会いは 12 年前のフーシャ村へと遡る。
スタッフ
原作・総合プロデューサー:尾田栄一郎(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督:谷口悟朗
脚本:黒岩勉
音楽:中田ヤスタカ
キャラクターデザイン・総作画監督:佐藤雅将
美術監督・美術設定:加藤浩
色彩設計:横山さよ子
CGディレクター:川崎健太郎
撮影監督:江間常高
製作担当:吉田智哉
主題歌:「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」Ado(ユニバーサル ミュージック)
劇中歌 楽曲提供:中田ヤスタカ Mrs. GREEN APPLE Vaundy FAKE TYPE. 澤野弘之 折坂悠太 秦 基博
キャスト
田中真弓
中井和哉
岡村明美
山口勝平
平田広明
大谷育江
山口由里子
矢尾一樹
チョー
宝亀克寿
名塚佳織
Ado
津田健次郎
池田秀一
山田裕貴
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