第8話劇中歌「ゆえに背脂は輝く」のイメージは軍歌？　歌唱しながら「何を歌っているんだろう」『アキバ冥途戦争』なごみ役・近藤玲奈さん＆嵐子役・佐藤利奈さん＆ゆめち役・田中美海さん＆主題歌・挿入歌 音楽プロデュース・佐藤宏次さん 音楽座談会【連載第9回】

嵐子の不器用さ、生き様が凝縮された歌謡曲

――EDテーマ「冥途の子守唄」についても詳しく伺えればと思います。放送時は嵐子さんの歌謡曲に、痺れているファンの方が多いのではないかと……。

佐藤（宏）：作曲家（磯崎健史氏）からデモが上がってきたときに、一発で「これでしょ！」って思いました。相談させてもらったのはキーだけですね。

佐藤（利）：そうですね。嵐子は普段の声のトーンが低いので「どこまで下げたら嵐子っぽいかな」と思い、私からもリクエストさせていただき調整しました。でも私、以前のインタビューでもお話しましたけど、EDテーマを歌うことは本当に知らなかったんですよ（笑）。

田中：私が挿入歌のレコーディングのときに嵐子さんが歌うと聞いていたので、それを利奈さんに話したら「えっ、本人知らない!?」って（笑）。

佐藤（利）：だから私にとってはサプライズでした（笑）。ただ、収録が始まってからレコーディングさせてもらったので、嵐子のキャラクター性を掴めているところもあって。それがありがたかったです。

佐藤（宏）：なごみと嵐子に関しては、キャラクターの延長線上で歌っていただくにあたって、アフレコに入ってキャラクター性が分かってからのほうが良いだろうなと思っていました。なごみはゆめちほど人間やめてないですし（笑）。それでレコーディングも後ろ目にしてもらったんです。

佐藤（利）：なるほど。皆さんのお気遣いがあったんですね。

佐藤（宏）：一方で、ゆめちの場合はわかりやすかったので「ゆめちはこんな感じでしょ！」って（笑）。だから一発目にお願いしたんです。

――利奈さんが曲を聴いたときの第一印象は？

佐藤（利）：「すごく良い曲」と思いつつも、ぽかん、でした（笑）。

佐藤（宏）：いやー、無理もないです（笑）。

田中：「これ、嵐子で歌えるのかな」っておっしゃっていましたよね（笑）。

佐藤（利）：はい（笑）。最初に仮歌を聴いたときに……言葉を選ばずに言うと、スモーキーな声のお姉さんが場末のバーで歌ってるようなイメージで。これは仮歌と呼びたくない！と思うほどクオリティが高すぎて「これを私が歌うんですか、どうしたらいいですか」と（笑）。そうしたら「思うままに歌っていいですよ」と言われました。

田中：自由に（笑）。

佐藤（宏）：というのも、佐藤（利奈）さんの歌が既に雰囲気がたっぷりあったので、キーだけ調整しつつも、あとはもう、出てきたものを使わせてもらうっていう形でしたね。

佐藤（利）：嵐子の不器用さ、一生懸命さを込めました。

――生き様、という言葉が似合う曲ですよね。

佐藤（利）：そうですね。

――ところで、あのオケって生で収録されたものなんでしょうか？

佐藤（宏）：ほとんど生です。弦のお姉さんたちが笑うのをこらえながら弾いていましたよ（笑）。特に＜萌え萌えキュン＞のところ。肩を震わせていた姿が印象的でした。

一同：（笑）

佐藤（利）：「なんだろう、これ？」って感じだったんでしょうね（笑）。

佐藤（宏）：ミュージシャンの人たちは一笑いしていましたよ（笑）。まあ、笑いますよね。

――完成した主題歌の2曲を聴いたとき、キャストの皆さんはどのような反応だったんでしょう？

佐藤（利）：私は「すごいの来たな〜」って。

佐藤（宏）：（笑）　

近藤：笑いが止まらなかったです（笑）。

田中：EDテーマは「任侠モノのラストの曲だ！」って（笑）。EDテーマって作品のラストを飾るものだから、作品に合った曲調になるんだろうなと思っていたんですが……「チャチャチャチャ〜♪」という、あの始まり（笑）。しかも映像を見たら縦書きのクレジット。すごい！って。

近藤：かっこよかったです。クレジットもいいなって。キャストの名前の前に「CV」と書かれることが多いんですが、キャラクターの名前だけというのが「本当にキャラクターが歌っているんだな」って感じが出て良いなと。

――「純情メイドぶっころ主KISS」以外にも、気になる劇中歌が本作にはたくさんありますね。特に「一生女の子宣言☆」は塩梅にご苦労されたのではないかなと思いました。

佐藤（宏）：OP＆EDテーマのお話をさせてもらいましたが、基本的には挿入歌から作っているんです。だから「純情メイドぶっころ主KISS」の次に制作を始めたのは第5話の「一生女の子宣言☆」（万年嵐子）なんですけど、結果的にその次にできたのはEDテーマの「冥途の子守唄」（万年嵐子）でした。

「一生女の子宣言☆」は、地下アイドル感やインディーズ感、決してメジャーな雰囲気ではない曲を目指していたので、それを模索するのに時間が掛かってしまって。結果的にEDテーマの方が先に出来上がっていました。

――佐藤さん自身は地下アイドルにはお詳しいのでしょうか。

佐藤（宏）：仕事柄いろいろなアーティストに関わらせていただく機会が多いんです。弊社（SCOOP MUSIC）の作家は色々なアイドルの方に楽曲を提供させていただいています。

その中で、ご当地アイドルのように地元に主軸を置いて活動しているアイドルさんともお仕事させていただいているので、ある程度は把握はしています。詳しいかどうかはさて置きですが、過去の経験と言いますか、その上澄みを凝縮して作っていったところがあります。聴いたときに「なんとなく、そう思う」くらいの上澄み感を抽出しました。

佐藤（利）：概念としては分かるんですけど、それを音楽や歌詞にするのって、すごく難しいことだと思います。

佐藤（宏）：そうですね。絶妙な地下感を出すのが難しかったです。「一生女の子宣言☆」に関しては、その後に仕掛けも残しているので、ぜひ楽しみにしていてもらえたらなと。