アニメ店長こと兄沢命斗はこうして生まれた！ 今だから話せる裏話も飛び出す!?｜知っているようで実は知らないアニメイト池袋本店の歴史【番外編】

コンセプトはアニメイトの闇を暴く!?

ーーまさかのスタートでしたけど、それからは？

萩原：サンシャイン60前のアニメイト池袋店のリニューアルオープンに合わせて、「アニメイトEXPO」というイベントがありまして、そこで『アニメ店長』を発表しようということになりました。

企画承諾から約2ヶ月くらいの期間で兄沢命斗のデザインと「アニメ店長NEWS」というリーフレットで6ページの漫画1本を先生にはあげていただきました。この漫画は単行本1巻の第一話です。

▲「アニメ店長NEWS」Vol.1

ーーそれは配布用の？

萩原：そうです。無料配布です。イベントに間に合わせていただきました。

短い期間だったのですが、先生から兄沢のキャラクターデザインを数種いただきまして、中には女性バージョンの案もありました。そのかっこいい女性版店長のデザインは、アルバイトの「並辺ジュン」の原型になり、1話にも登場しています。

▲「アニメ店長NEWS」バックナンバー

ーーそうだったんですね！ 萩原さんから先生へのご要望はあったんですか？

萩原：こちらのリクエストとしては宣伝キャラクターなので印象に残って、シルエットにしたときにもわかるような、アイコンみたいなものが欲しいとご相談しました。

そこで先生が編み出してくれたのが、「店長バイザー」です。店長って書いてある赤いサンバイザーですね。

これが島本先生の『アニメ店長』での一番の発明です。今では、どんなキャラクターでもこのサンバイザーを被っていればアニメイトとのコラボなんだなってわかる。それを作ってくださったのは島本先生なんですよ。

後に多くのクリエイターさん、作家さんに店長バイザーをかぶったキャラクターイラストを描いていただいて、それをアニメイトの限定特典にさせていただく、という展開も生まれました。これも島本先生のおかげですね。

▲店長バイザー

ーー今ではアニメイトのロゴにまでなっていますからね。『アニメ店長』を作っていく中で、島本先生とのやり取りはいかがでしたか？

萩原：月に一回8ページを「きゃらびぃ」で連載していくことになったんですが、なかなかネタが無いんですよね。先生はアニメイトに通っていたわけではありませんし。

そういうこともあって、アニメイトの社内の話を私から提供させていただくことになりました。

当時は各地の店長会議に行ったりしてネタを仕入れて、「アニメイトの良くないことだな」と思ったことをリストアップして先生に送るっていう（笑）。

ーー萩原さんがスパイになったわけですね（笑）。

萩原：はい（笑）。もちろん漫画の中ではフィクションとして誇張して描かれていることもありますけど、一部は本当のことも入っています。バックヤードの事とか品揃えなどの改善すべき点の話とか。

お客さんからアニメイトの悪い所を募集するっていうのもやりましたね。結局、悪いところの指摘というのがそんなに来なくて、逆に褒めてくれたりもしてくださっていて嬉しかったです。

悪い所をさらけ出そうと思った結果、逆にお客様はこういうところを評価していただいているんだとわかりました。

企画が進んでいくにしたがって、7年目ぐらいになると「『アニメ店長』は本当に宣伝の役になっているのか？ 費用に見合っているのか？」みたいな話がアニメイトの上層部から出始めたんです。

だから「費用対効果」という話が作品に登場したりして（笑）。

ーーなるほど（笑）。

萩原：ちょうどそのタイミングで、社内の予算削減を推進する3人がいて、それを見た時に「これは、良い敵だ……」って（笑）。

ーー見つけた！（笑）

萩原：理論武装3人組ですね。兄沢たちにわかりやすい敵が欲しいし、それとバトルしてほしかったんです。だけどお客様やお取引先様と戦わせるわけにいかなかったので。

であれば敵役は社員だなと（笑）。そこからは実在の社員のおもしろ発言や行動を島本先生にリークするのが仕事になりましたね。

もちろん、登場させるのに本人の許可を取っていたんですが、たまに嫌な顔をされることもありましたよ（笑）。

ーー逆に俺も出してよって売り込む方はいなかったんですか？

萩原：いっぱいいました（笑）。

ーーでも出してはいない……？

萩原：そういう人に限っておもしろくないんです（笑）。編集者として漫画家に面白ネタを提供するのは大事な仕事だったんで、相手が先輩だろうと切り捨ててましたね。