『アキバ冥途戦争』は心の葛藤を呼び起こしてくれる、ハードな道徳の教科書――近藤玲奈さん、佐藤利奈さん、田中美海さん、黒沢ともよさん、ジェーニャさん、高垣彩陽さんが思いの丈を語る【連載第13回】
CygamesとP.A.WORKSのタッグで贈る新作オリジナルTVアニメ『アキバ冥途戦争』が、ついに最終回を迎えました。最後に描かれたのは2018年のアキバ。車椅子で楽しくメイドをするなごみの尊い姿でした。『アキバ冥途戦争』に想いを馳せ、ロスになられている方も多いかと思います。
アニメイトタイムズの連載インタビュー第13回は、“とんとことん”メンバーによるスペシャル座談会の後編をお届け。和平なごみ役・近藤玲奈さん、万年嵐子役・佐藤利奈さん、ゆめち役・田中美海さん、しぃぽん役・黒沢ともよさん、ゾーヤ役・ジェーニャさん、店長役・高垣彩陽さんに、思いの丈をすべて語ってもらいました!
なごみちゃんの成長を描く物語だった
──ついに最終回を迎えた『アキバ冥途戦争』。とんとことん座談会の後編では、これまでお話できなかったことも含めて、思いの丈をぶつけてもらえたらと思うのですが……まずは第12話を見たときは、皆さん率直にどう思われましたか?
ゾーヤ役・ジェーニャさん(以下、ジェーニャ):なごみちゃんが嵐子さんのバッグを見ている場面がすごく悲しくて。「ああ、これは泣ける」って思いました。すごく響きますね。コメディなのに、泣かせる作品だなと思いました。そして、『アキバ冥途戦争』はなごみちゃんの成長を描く物語だったんだなと。第1話と比べて成長したなって思いました。強い!
自分からアタックしても強いし、みんなからアタックされてもめげない強さを持っていて、すごくかっこいいなって。みんなのために楽しいとんとことんを見せて、みんなそれに付いていく。ところどころ「ありがとんとん!」って言うのが可愛いなって(笑)。
高垣彩陽さん(以下、高垣):あの温度差が面白いよね(笑)。ゾーヤのロシア語に対しての(残党が)「なんだって!?」って。
一同:(笑)
和平なごみ役・近藤玲奈さん(以下、近藤):あれは最高の掛け合いでした(笑)。
万年嵐子役・佐藤利奈さん(以下、佐藤):ちょいちょいそういう場面があるよね(笑)。
高垣:私はああいう形でタイトルに戻ると思っていなかったんです。オンエアが始まる前は皆さん「どんな話なんだろう?」って不思議だったと思います。第1話を見て、きっと「ああ任侠ものなんだ」と気づき、抗争を通して暴力的な要素を感じていたと思うんですけど、メイドとしての戦い方をなごみが提示して。最終話で本当の意味での“メイド戦争”を仕掛ける。それがこのタイトルに込められていたんだと、私自身もハッとさせられました。
なごみは忍者になったり、黒豚になってみたりといろいろありますけど(笑)、ブレないものがずっとあって。彼女のブレなさがあのライブシーンに表れていたと思います。彼女が目指したメイドとして在り続ける。それが彼女の覚悟。そんななごみの姿を見て、とんとことんのメンバーたちも泣いていましたけど、完成した本編を見て私自身も泣けてしまいました。でも、この感動ってなんなんだろう?って(笑)。今までになかった感覚でした。
──高垣さんの中で、どのような感動だったかは分かりました?
高垣:生き様をそこに投げうって、歌い続けている。自分の仕事をまっとうし続けている。伝え続けている。それがかっこよくて泣けたのかなと。いろいろな気持ちが溢れました。ある意味、凪さんの心も揺さぶったと思います。みんなの心に届いている姿を見て「いいシーンだな」って思いました。
ジェーニャ:最終回を作るのって本当に難しいと思うんです。私は作っている側の気持ちばかり考えてしまいました。でも彩陽ちゃんの言う通り、いい感じにタイトルに繋がって、最後には希望も見せてくれる。ファン(青田・緑川)は20年近く推してくれているわけですし(笑)。
近藤:推してくれていました(笑)。私は最終話の感想は言葉に表しにくいんですけど……第1話の段階から「メイドは戦うもの! そういう決まり!」という流れがありましたが、なごみの中では「萌え萌えキュンキュンするのがメイドでしょ?」って葛藤があったと思うんです。その中で忍者になったり、黒豚になったりしながら、彼女の中で揺らいでいて。個人的にも「他のとんとことんメンバー以外のメイドたちは、なんでメイドになったんだろう?」「なんでこんな世界になっちゃったんだろう?」と疑問に思っていました。
でもなごみが「脅したり!殴ったり!殺したりして楽しいか!?」「皆を怖がらせて楽しいか!?」って言い聞かせるシーンで、きっとみんなハッと気付かされて。良心の呵責と言いますか。今までもなごみは「もっと萌え萌えキュンキュンしろよ」って言葉でその思いをぶつけてきたけど、最終回では「自分がやってみせればいいんだ」とメイドとしての姿を見せつける。
きっと凪さんも納得した部分があったけど「なんでなごみにそんなこと言われなきゃいけないんだ」って気持ちが勝ってしまって……ああいうことに。でもなごみがブレずにいてくれたことが嬉しかったし、そのおかげで、みんながメイドになったなって思いました。
──田中さん、黒沢さんはいかがでした?
ゆめち役・田中美海さん(以下、田中さん):衝撃的な抗争を繰り広げてきたからみんなで嵐子の敵を討つんだなって思っていて、そしたらこういう展開になって。「なるほど、私は浅はかだったな」って思いました(笑)。嵐子さんの「可愛いメイドに…」「もっと…皆と…メイドしてたいな…」という最後の言葉をなごみもずっと覚えていたのかなって。
なごみがその言葉を胸にメイド魂のようなものを貫き通してくれたからこそ、とんとことんが革命を起こして、平和なメイドの世界になったのかなって思いました。12話をかけて、みんなをずっとずっと説得していたのが形になって。「人の生き様ってこういうことか。本当に素敵な話だな」って自分が教えてもらったような気持ちでした。
ジェーニャ:ねるらちゃんが「この子(なごみ)はアキバを変えてくれる」って予測していましたが、ここに繋がるんだ!ってホッとしました。最終話を迎えた今、そのことは忘れられているかもしれないけど、繰り返して見ると、先見の明があったんだろうなって。
近藤:途中で「変わりゆく私を許してください」って、なごみがねるらちゃんに向かって言っていたシーンがありましたが……。
高垣:でもなごみは殺してないもんね? レジ以外(笑)。
近藤:そうなんですよ! それとラーメン屋の天井を(笑)。なごみは殺していないんです。
しぃぽん役・黒沢ともよさん(以下、黒沢):だからなごみは怪我で済んだのかもですよね。第1話からずっと……なごみの頭の中に入っている常識は2022年に生きる私たちと一緒だけど、マインドの置き方というか……社会との関わり方は嵐子が近いのかなと思っていました。「しょうがない」「仕方ない」「こうするしかできない」とか。
でも一個引っかかっているところがあって。それをヒーローのように成し遂げたいけど、代償があることも理解しているから動けず、塩梅を見つけていく。それが26歳の社会人には響くものがあって「方舟は嵐子だな」っていう気がしていました。
「それっておかしくないですか?」ってなごみの言葉には共感できるけど、タフすぎるマインドには乗っかっていけなくて。嵐子のシステムの中で虎視眈々としていく、彼女の視点で物語を見てきたような気がしています。
だから嵐子さんが亡くなった姿をなごみが見ているのはいち視聴者として……それまでその世界の中に自分を投影できていたのに、画面の中に急に手出しできなくなってしまった感覚がありました。その中でなごみが狂っていく姿は、結構痛々しくて。そういう意味で、トラップにかかったような感じがありました。「ここまで見たなら、見なきゃ!」っていう使命感が生まれて。それがすごく面白かったです。
また、この連載インタビュー(第5回)で増井監督とお話できたことも大きくて。そのときおっしゃっていたメッセージが、最後にそのままセリフになっていたような気がします。柔らかくて優しいCパートだなと思うと同時に、「監督、言えてよかったですね……!」という気持ちもありました。
──いろいろなことを考えさせられますね。少し前まで野球をしてたのになぁと。
高垣:野球もだいぶひどかったですよね(笑)。
一同:(笑)