『アキバ冥途戦争』を通して伝えたかったクリエイター陣のメッセージとは? 増井壮一監督、シリーズ構成・比企能博さん、Cygamesプロデューサー・竹中信広さん、P.A.WORKSプロデューサー・辻充仁さん スタッフ座談会【連載最終回】
監督曰く、反戦アニメ。「もうこの時代に銃はいらないだろう」
──連載を通して印象的だったのが、佐藤さんを筆頭に「この作品のことをうまく言葉にできない」とおっしゃっていたことで。
辻:だってよく分からないですから。
一同:(笑)
竹中:それを作ろうとしていましたからね。だからキャストの皆様にそう思っていただけるのは、ある意味で正解なんです。視聴者の方には深読みしてほしいと思いますが。
──制作チームとしては視聴者の皆さんにどのようなメッセージを受け取ってもらいたいですか。
増井:あっさり言ってしまうと、これは反戦映画なんです。アニメですけども。
竹中:まあ、そうですね。
増井:「みんな戦争、やめないですか」と。EDテーマの映像にもその思いが込めています。銃弾は砂糖水に浸けて、銃は塩水につけようと。作品は1985年、1999年、2018年という舞台設定にしていますけど、もう銃とか古くないですか、と。そういうことを訴えかける真面目な作品だと思っています。
──なるほど。
辻:それって最初から思われていました?
増井:う〜ん。こじつけ……?
一同:(笑)
増井:でも「もうこの時代に銃はいらないだろう」とは思っていますね。
──比企さんは今のお話を受けてどう思われましたか?
比企:“萌えと暴力について”というテーマですが、自分の経験、感情から近く書けたのは「孤独ってめっちゃ怖くない?」という要素です。凪が狂っていく感じもそうですし、争いが起こるのも、そういうところからだと思っています。対して、メイドカフェという居場所を求めて、そしてその場所を守るために戦う話になっていくんですが……でも感情の発露としては「孤独の怖さ」です。
竹中:なるほどね。僕はそういう高尚なものはなく、自分のやりたいことを形にしたいという思いだけでここまでやってきました。もちろん作りながら「こういうメッセージ込められるよな」という考えはあったんですけど、こういうものを全力で作っている大人たちがいることを感じてもらえたら嬉しいなと。いろいろな悩みを持っている人がいるのであれば、深夜に気軽に見て、気軽に楽しんでもらえたら良いなという思いで作っています。
結果として、さきほど比企さんや監督のおっしゃっていたメッセージを感じてもらえたら嬉しいのですが、飛び飛びでも良いから見てもらえたら、それだけで感謝の気持ちでいっぱいです。
辻:僕はメイドカフェがもっと盛り上がってくれたらいいなと思っていました。それは会議でも何度も話題に上がっていて。コロナ禍もあって、(秋葉原に)元気がなくなっている気がするんです。でも、やっぱりメイドカフェって楽しいところだよね、って。みんなが足を運びたくなるアニメになればいいなと思っています。
──辻さんはメイドカフェには行かれるんですか?
辻:監督もそうでしたけど、この作品のロケで初めてちゃんと行きました。それまでは1回、2回くらいは行ったことはあるくらいですが、盛り上がってほしいなと思います。だから秋葉原の実店舗をやってほしかったなぁと。それは残念……。
──実はもともと、放送前に秋葉原でメイドカフェ「とんとことん」をオープンされる計画があったと伺っています。
竹中:そう、ただ物件がなかなか見つからなかったんです。今は秋葉原で再開発が始まっていて、これからもっと綺麗な街に変わっていくと思います。でも古い雑居ビルが建ち並んでいるのが、秋葉原の良さだったような気がするんですよね。
増井:あれが外国人の方が面白がるポイントだと思うんですよね。
──街の風景というのも、本作でこだわられていたポイントだと思います。10年後、20年後、100年後……と、この作品を見たときに「こういう時代があったのかな?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
比企:そういえば、前回インタビューしてもらった時に、なんで「1999年が舞台か」という話があったじゃないですか。僕は最後の(現代の)話をやりたかったので、それを考えると1999年がちょうど良かったんです。世紀末感もありますし。
──なるほど! 秋葉原と言えば、第9回のインタビューが終わった後に、竹中さんが秋葉原に行ったときに、メイドが均等に並んでチラシを配っている姿を見て、この作品を思いついたというお話が耳に入って。あれって本当ですか?
竹中:そうです。その光景を見て「『アキバ冥途戦争』という作品を作りたい」と思ったんです。でも実は14、5年前くらいの話。当時はメイドカフェが大ブームだったんですよね。絵に描いたかのように、均等な間隔でビラを配っていて。ここに不可侵な領域があって、誰かが入ってきて、(作中のように)殺し合いが始まったらどうなるんだろう……。それを考えたのが、最初のきっかけでした。
だから最初に提案したときは、「夜な夜なメイドたちが殺し合いをしている」といった企画だったんですよ(笑)。それをもっと日常に根付かせた結果、今の『アキバ冥途戦争』が誕生したんです。
[インタビュー・逆井マリ]
連載バックナンバー
TVアニメ「アキバ冥途戦争」作品情報
2022年10月6日(木)~TOKYO MXほかにて放送
放送情報
TOKYO MX・サンテレビ・KBS京都・BS11
10月6日より 毎週木曜 24:00~ 放送開始
AT-X
10月7日より 毎週金曜 21:30~ 放送開始
リピート放送:毎週火曜9:30~ 毎週木曜15:30~
配信情報
ABEMA:10月6日より 毎週木曜 24:00~
dアニメストア:10月9日より 毎週日曜 24:00~
ほか 各配信プラットフォームにて 10月12日(水) 24:00以降、 順次配信予定!
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Hulu
U-NEXT
ツイキャス
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J:COMオンデマンド メガパック
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ビデオマーケット
Google Play
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Rakuten TV
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クランクイン!ビデオ
スタッフ
原作:ケダモノランド経営戦略室
監督:増井 壮一
シリーズ構成:比企 能博
キャラクターデザイン・総作画監督:仁井 学
美術監督:本田 こうへい
美術設定:伊良波 理沙
色彩設計:中野 尚美
プロップ設定:入江 健司、 鍋田 香代子
撮影監督:石黒 瑠美
3D監督:小川 耕平
特殊効果:村上 正博
編集:高橋 歩
音楽:池 頼広
音楽制作:Cygames
音響監督:飯田 里樹
音響効果:中野 勝博
音響制作:dugout
アニメーション制作:P.A.WORKS
キャスト
和平なごみ:近藤玲奈
万年嵐子:佐藤利奈
ゆめち:田中美海
しぃぽん:黒沢ともよ
ゾーヤ:ジェーニャ
店長:高垣彩陽