この記事をかいた人
- 阿部裕華
- アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター
――画眉丸の感情の揺らぎはどのように声で表現しているのでしょうか。
小林:揺らぎはそんなに意識していないかもしれません。たしかに、原作の第1話の時点で、「画眉丸はいろんな感情の側面が出てくるな……」と思ったのですが、だからと言って演じている時に考えていたかというと意外とそうでもなくて。
それはたぶん、画眉丸を「等身大の16歳であり、人間として成熟しきっていない」と念頭に置いたことが大きいと思っています。相手の言葉に怒ったり、自分の気持ちに素直になれなかったりする。その気持ちは僕自身もすごく分かるから、あまり考えずに感情のまま演じられた気がします。ディレクションでも、作品づくりでは欠かせない「別のニュアンスも聞かせてほしい」「そこは感情を抑えすぎ(出しすぎ)」というのはあっても、それ以外は割と自由に演じさせてもらいました。
――それは画眉丸だからそういうお芝居ができたのか、普段から感情のままに演じることが多いのか、どちらでしょう?
小林:作品によるところはありますが、基本的にそこまで事細かに考えてはいないですね。あくまでも自分が演じるキャラクターがどんな状況下に身を置いているかくらいで。地上なのか、空中なのか、船の上なのかで話す時の重心が変わったり、言葉をかける相手がいるなら言葉をかける対象によって声の出し方が変わったり、苦しいのか楽しいのか悲しいのかで声色を変えたり、そういう基本的なことはしっかり考えて臨みます。だけど、「このワンセンテンスでこう感情が変わって……」とまでは考えなくて。
僕は、キャラクターが大事にしているものさえ失わなければ大丈夫だと思っているんですよ。画眉丸なら、「妻が大切である」という軸があればいい。細かく求められる作品であればもちろん対応しますけど、『地獄楽』に関してはあまり難しく考えず、自由度高く演じさせてもらいました。
――ということは、共演者の方との空気感も大事にされているのでしょうか?
小林:そうですね。相手がこういう距離感や感覚のお芝居で来るなら「じゃあ僕はこうしようかな」と考えてお芝居をします。そういうところにお芝居の面白さがあるとも思います。(民谷)巌鉄斎(演:稲田徹)とのシーンで、ワーワー言ってくる巌鉄斎に対して画眉丸もちょっとムキになるのも面白いし、逆に16歳なのに大人の巌鉄斎を相手にのらりくらり交わすのも画眉丸らしいし……と一つひとつのシーンとか、掛け合う人物とか、役者さんごとに可能性が色々あるので、僕自身もその都度楽しみつつ演じています。
――ここからは『地獄楽』にちなんだ質問をさせていただきます。小林さんがもし死罪人になったら、どの執行人と組みたいですか?
小林:士遠(演:小林親弘)もいいけど……典坐(演:小林裕介)とも組みたいですね。死罪人と執行人という関係性だとどうしても上下関係が生まれてしまうから、殺されないようにこびへつらってしまいそうだけど、典坐はすごく正義感に熱く義理に厚く優しい人だから、僕のことを許して同じ目線で一緒に戦ってくれそう。戦闘力の高さだけではなく、同じ目線で物事を考えてくれる存在ってすごく心強いし、頼もしく、楽しいと思うんですよ。一緒にいてポジティブな気持ちになれそうだなと思います。戦いが終わった後のアフターフォローもしっかりしてくれそう(笑)。
それは士遠も同じだと思うのですが、やっぱり典坐は師匠である士遠の教えを受け継いでいるんですよね。この2人は本当に大好きなので、一緒に行動するならどちらかがいいなと思います。
――では逆に、小林さんがもし執行人なら、どの死罪人と組みたいですか?
小林:巌鉄斎ですかね。僕、典坐と士遠が大好きなのですが、巌鉄斎も好きなんですよ。巌鉄斎は直情的でコントロールできないように見えるんですけど、意外とおだてると調子に乗ってくれる、転がしやすい人だと思うので(笑)。それに意外と情に厚い部分があるから、一緒に行動するならそういう人間臭い人の方が嬉しいし頼もしい。そういう意味でも巌鉄斎と組みたいですね。
――『地獄楽』に登場するキャラクターたちは一人ひとり信条を持って生きています。それにちなみ、小林さんの持つ信条を教えてください。
小林:仕事のことで言うなら、「自分が好きだと思うお芝居を信じて、その道を歩むこと」ですかね。忙しい時とか、自分の培ってきたテクニックに委ねて楽な表現を選ぶこともできます。人それぞれのやり方があるからそれを否定しようとは思わないけど、僕は自分が好きな表現を追求していきたい。それは、自分がこれまで「好きだな」と思ってきたお芝居を続けてきた結果、今の自分があると思っているので、これからもその信条だけはブレないように守り抜きたいです。そのためにも、自分の許容量を超えた仕事をすると、信念にある好きなことができなくなると思うから、自分の無理のない範囲で仕事をすることも大切にしています。
あとは、試行錯誤や挑戦する心を失わないようにすることも大切にしているかもしれません。
――『地獄楽』で試行錯誤、挑戦したことはありますか?
小林:『地獄楽』に限らずですが、自分の中でキャラクターを型にはめすぎず、思い切り演じるようにしています。そうしないと表現の幅が増えないし、自分の視野の範囲でしか演じることができないから、まずはできる限り思い切り演じてみて、音響監督や監督から「それはキャラクターから逸脱している」「気を抜きすぎている」とか言われたら修正していく。
例えば画眉丸なら、最初にすごく子どもっぽく演じてみるとか。それに対して「画眉丸にしてはちょっと子どもっぽいよね」と思われることもあるけれど、人間誰しも幼い部分ってあると思うから、幼さを出してみてもいいんじゃないかなと考えて演じてみるんですよね。もしかするとすごく甘えているような声に聞こえるかもしれない。だけど、演じてみないと分からないじゃないですか。せっかくアフレコブースの隣には判断してくれる人がいるんだから、とりあえず「こういう画眉丸でもありかな?」とやってみる。『地獄楽』は全巻読んでいたので、どこまでやったら大丈夫なのかがなんとなく分かっていたから、臨みやすかったのもありますけどね。どう受け取ってもらえるか楽しみながら、自分の中で表現を更新させてもらっています。
――それでは最後に、原作を読んでいてアニメを楽しみにしている人たち、原作を読んでいないアニメから触れる方たち、それぞれに向けて『地獄楽』をオススメするポイントを教えてください。
小林:マンガはモノクロで声がついていないので、読者一人ひとりの想像上のアニメの形があると思います。なので、アニメを見た時に、各々想像していたものと違う部分もあるかもしれません。でも、キャスト・スタッフ一同、原作へリスペクトを持って臨んでいますし、原作の迫力・魅力に負けないクオリティになっていると思います。「こういう『地獄楽』もあるんだ」と楽しんでいただけたら嬉しいです。また、キャスト発表になっていないキャラクターもいるので、そのキャラクターがどう喋って、どう演じられるのかも楽しみにしていてもらいたいですね。
原作未読の方には、『地獄楽』は単なるアクションもの・時代劇というわけではなく、いろんな角度から楽しめる作品だと思います。謎や伏線がたくさん張り巡らされており、魅力的なキャラクターもたくさんいます。一度、「この子いいな」と思ったキャラクターが出てきたら、そのキャラクターの掘り下げが待っているので、ぜひ続けて見ていただけると嬉しいです。キャラクターを知れば知るほど、その印象も変わってくると思います。一度見たら病みつきになると思いますので、ぜひ見ていただけたら嬉しいです。
[インタビュー/阿部裕華]
アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター。Webメディアのディレクター・編集を経て、フリーライターとしてエンタメ・ビジネス領域で活動。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。
2023年4月1日(土)より毎週土曜23時~
テレビ東京系列他にて放送
※放送日時は変更の可能性がございます
2023年4月1日(土)より毎週土曜24時~
Prime Video、NETFLIX、ひかりTVにて配信
※配信日時は変更の可能性がございます
時は江戸時代末期。
抜け忍として囚われ死罪人となった元・石隠れ最強の忍“画眉丸”は、極楽浄土と噂される島から「不老不死の仙薬」を持ち帰れば無罪放免となれることを告げられる。
画眉丸は最愛の妻と再会するため、打ち首執行人“山田浅ェ門佐切”とともに仙薬があるという島へ向かうことに。
島に上陸した画眉丸と佐切に立ち塞がったのは、同じく仙薬を求める死罪人たち。
そして、島に潜む未知の生物、人工的で不気味な石像、島を統べる仙人たち……
謎多き島で、果たして画眉丸は仙薬を見つけ出し、生きて帰ることが出来るのか——!?
原作:賀来ゆうじ『地獄楽』(集英社 ジャンプ コミックス刊)
監督:牧田佳織
シリーズ構成:金田一明
キャラクターデザイン:久木晃嗣
音楽:出羽良彰
アニメーションプロデューサー:川越恒
制作:MAPPA
企画:ツインエンジン
原作協力:少年ジャンプ+編集部
millennium parade × 椎名林檎「W●RK」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
画眉丸:小林千晃
山田浅ェ門佐切:花守ゆみり
亜左弔兵衛:木村良平
山田浅ェ門桐馬:小野賢章
杠:高橋李依
山田浅ェ門士遠:小林親弘
山田浅ェ門典坐:小林裕介
ヌルガイ:小市眞琴
民谷巌鉄斎:稲田徹
山田浅ェ門付知:市川蒼
山田浅ェ門仙汰:山下大輝
公式サイト
公式ツイッター(@jplus_jigokurak)
公式Instagram
ハッシュタグ:#地獄楽
『地獄楽』全13巻&関連書籍好評発売中!
2009年第14回SQ.グランプリ佳作受賞『おもいで税関』でデビュー。「ジャンプSQ.」「ジャンプSQ.19」などで読み切りを数本発表後、2013年より「ジャンプSQ.」にて『FANTASMA』を初連載。2018年より「ジャンプ+」にて『地獄楽』を連載開始、2021年1月に堂々完結。2021年11月より「週刊少年ジャンプ」で『アヤシモン』(全3巻)を連載。