この作品をアニメ化しようと思った人たちはチャレンジャーだと思います──ジェットコースタークライムサスペンス『マイホームヒーロー』哲雄役・諏訪部順一さんインタビュー

「義辰は理解はできるけど共感はできない」

──ここからは敵対するキャラクターたちについても教えてください。哲雄とはまた違うタイプの狂気の愛を持っている義辰については、諏訪部さんから見てどのように映っていますか？

諏訪部：彼が息子に対して深い愛情を抱いていること自体は良いと思うのですが、そのこじらせ具合がいただけないですね。純粋に愛しているというより、崩壊してしまった幸せな時間と自身を繋ぐものとして、息子を手放したくない。精神安定剤として、心の拠り所として、執着しているような印象を自分は持っています。彼が本当に愛しているのは自分自身だけのような気がするんですよね。

同じように、我が子に対して愛情を抱いている哲雄とはベクトルがちょっと異なるように思います。哲雄は、理解もできるし共感もできる。義辰は、理解はできるが共感はできない。そんな感じですね。

義辰は不器用な人なのだと思います。哀れみも覚えますが、作品世界の人間たちを見るのはやはり哲雄の目線になってしまうので…… 本当に目障りなヤツですね！（笑）。

──哲雄を追い詰めてきますからね。

諏訪部：本当に。窪より嫌ですね（笑）。

──恭一とのやりとりも楽しみです。

諏訪部：恭一役の伊東健人さんとは、序盤に一度だけ掛け合って収録できた回がありました。バディ的に立ち回ることになるので、生で雰囲気を感じる機会があって良かったです。

しかし、恭一も義辰と同じく目障りなヤツ（笑）。客観的に見れば結構いい人なんですけどね。息詰まる駆け引きにご期待ください！

いち読者としては「原作と合わせて楽しんで欲しい」

──原作は第3部まで続いています。アニメでどこまで描かれるのかが楽しみなところなのですが……。

諏訪部：どこまでやるのか、気にされている原作ファンの方は多いのではないかと思います。今回のシリーズは1クール予定なのですが、とりあえず物語的にひと区切りつく感じでまとまっているので、これだけでも消化不良感はないと思いますが…… できることなら原作がある分はすべてアニメ化して欲しいですよね。ハードルはどんどん上がると思いますが（笑）。

音や動きがあり、時間の制約もある映像作品にするためには、原作を再構成したり、時には部分的に削ぎ落としたりする必要があります。ですが、ならではの面白さというものも間違いなくあって。原作漫画とアニメは相互補完の関係にあると思います。表現方法の異なる両者をお楽しみいただくことで、作品の世界の解像度はより一層上がるはずです。

今回、シリーズ構成・脚本を担当している喜安浩平さんは、演者として共演したこともある古い知人です。まさかこのような形で一緒に仕事をする日が来るとは。非常に感慨深いものがありますね。この作品をまとめ上げるのは難儀だった思いますので、心から「お疲れ様でした」と言いたいです（笑）。

──最初から最後まで、見逃せない作品になっているんだろうなと思っています。

諏訪部：いま話している時点では、まだ完成したアニメ本編をすべて鑑賞できていないのですが、きっとそうなっているはずです！作品により入り込む要素として、声優として関わった音による表現がしっかり機能していることを祈ります。

──さきほどものづくりのお話がありました。哲雄を演じたことで、今後のものづくりに役に立ちそうだなと思ったところはありましたか。

諏訪部：どうでしょうか？（笑）。主人公ですし、見せ場も多い作品なので、自身のキャリアにおいてマイルストーンのひとつになるのではないかと。

いろいろ作品に出演させていただいていると、やはり「この人はこういう声、こういう演技」という固定イメージがついてくるもので。そういう決め球的なものがひとつでもあると認識していただけるのはありがたいことなのですが、そこに縛られ続けるのは決して好ましい状況ではなくて。実際はいろいろな役を演っているのですが、ご覧いただく方の視聴傾向もありますし、すての人に出演作をすべてご覧いただけているわけではありませんので、仕方のないことなのですが（苦笑）。そういった意味で、鳥栖哲雄は「よくある諏訪部」ではないテイストのキャラクターだと思いますので、「マイホームヒーロー」をより多くのみなさんにご覧いただいて「アイツ、こういう引き出しもあるんだ」と思っていただけたなら幸いです。

──諏訪部さんの新しい一面を知ることができるということですね。

諏訪部：年齢とキャリアを重ねていくと、どうしてもアニメではメインの役は演じる機会が減っていきます。若い登場人物が多いですからね。もちろん、いつまでだって10代、20代の役もウェルカムですが（笑）。そんな中、自分と年齢感の近いキャラクターが主人公の作品というのは貴重な存在。ご縁があって本当に良かったです。

──（笑）。最後に、放送をされているファンの方にメッセージをお願いします。

諏訪部：すでに世に出ているキャッチコピーを見ていただければ分かる通り、かなり物騒な作品ですが、家族を愛するひとりの中年男性が奮闘するエンタテインメント作品です。原作を未読の方も既読の方も、ぜひ手に汗握りながらお付き合いくださいませ。よろしくお願いします！

[取材・文／逆井マリ]

TVアニメ『マイホームヒーロー』作品情報

放送情報

2023年4月2日（日）より TOKYO MX、ＢＳ日テレ、チャンネル NECO、AT-X にて放送開始
TOKYO MX 4月2日より毎週日曜23時30分～
ＢＳ日テレ 4月2日より毎週日曜23時30分～
チャンネル NECO 4月2日より毎週日曜 24時00分～
リピート放送：4月7日より毎週金曜 24時05分～
AT-X 4月5日より毎週水曜 20時00分～
リピート放送：4月7日より毎週金曜 8時00分～、4月11日より毎週火曜 14時00分～
※放送日時は変更になる場合がございます。

配信情報

・先行配信
U-NEXT 4月 2 日より毎週日曜 24 時 00 分～
d アニメストア 4 月 2 日より毎週日曜 24 時 00 分～
DMM TV 4 月 2 日より毎週日曜 24 時 00 分～
・下記配信サービスでも順次配信
4 月 7 日より毎週金曜 24 時 00 分～以降順次配信予定

Amazon Prime Video、WOWOW オンデマンド、ABEMA、バンダイチャンネル、Hulu、TELASA、J:COM オンデマンドメガパック、milplus、au スマートパスプレミアム、dTV、ニコニコ生放送、ニコニコチャンネルほか

イントロダクション

「47 年間、一度も刑法を犯さずに生きてきた。だけど、今日から殺人鬼だ。ああ……」人が人を殺してしまうとき、一体どんな気持ちでいたのかを、しがない会社員、47 歳の鳥栖哲雄は、ふつふつと煮えていく死体を前に思っていた──。

さかのぼること、わずか数時間前。哲雄は、反抗期の娘・零花に煙たがられながらも、愛する妻・歌仙と共に、彼女の成長を誰よりも願い、日常を送っていた。ある日、哲雄が一人暮らしを始めた零花を訪ねると、その顔に殴られたようなアザがあることを見つける。

問い詰めても零花は答えない。意を決した哲雄は零花の家に忍び込み、クローゼットに身を隠す。そこで目にしたのは、零花に手を上げた“半グレ”彼氏・麻取延人。さらに延人は元カノを殴り殺した過去を持ち、ヤクザと共に、零花を貶める“ある計画”を進める超危険人物だった──！

「零花だけは守らなきゃ。たとえ僕たち夫婦に、最悪の結果が訪れても……‼」愛する家族のため、“ただの弱いおじさん”は、裏社会の猛者たちを相手に、命と知力を賭けた闘いを始める！

スタッフ

原作：山川直輝・朝基まさし（講談社「ヤングマガジン」連載）
監督：亀井隆
シリーズ構成・脚本：喜安浩平
キャラクターデザイン：野口征恒
美術デザイン：阿部行夫
総作画監督：野口征恒、内田裕、大下久馬、蓮生霞、諸葛子敬、Song jin hee、Ryu seung cheol
撮影監督：内田奈津美
3DCG：エレメントファクトリー、バイブリーアニメーション CG
音楽：川井憲次
音響監督：伊藤巧
音響効果：川田清貴
アニメーション制作：手塚プロダクション
オープニングテーマ：「愛の歌」／藤川千愛
エンディングテーマ：「Decided」／Dizzy Sunfist