『江戸前エルフ』安齋剛文監督インタビュー|小糸とエルダは親密ではあるけれど、あくまでも“巫女”と“御祭神”の距離感
毎回流れるオープニングに寿命の違いがわかるカットを入れるようにしたんです
――小糸についてはどのような女の子だと捉え、どのように描いていこうと考えられたのでしょうか?
安齋:400年以上続いている神社の娘で巫女さんでもあるので、生まれ持った清潔感や上品さはあるだろうなと思いました。また下町生まれの江戸っ子気質というところで、芯が通った実直な子なのだろうな、と。
言いたいことは言うけれど、ただ気が強いだけではなく優しさもある。そういう子に見えたらいいなと思い、例えば誰かと会話をするときはしっかり相手の目を見て話すような画づくりを意識しています。
――キャラクターの性格が画づくりにも現れているんですね。
安齋:これは樋口先生のデザインのおかげでもあります。小糸であれば目や髪型、エルダであれば背の高さや猫背なところ。ビジュアル的な特徴と性格、人間性がぴったりハマっていて、絵コンテを描いていてまったく違和感がありませんでした。
――もとより性格とビジュアルが合致していると。
安齋:そうなんです。例えば、小糸はいろいろとツッコミどころの多い子ですが、高麗ちゃんにツッコミを入れられてもめげませんよね? 懲りずに背伸びしようとする。小糸がもしサラサラのロングヘアだったらちょっと違和感があったと思うんです。短めで癖毛っぽいところが背伸びしがちな性格とぴったりで、素晴らしいデザインだと思いました。
――では、エルダについてはいかがでしょうか?
安齋:樋口先生もおっしゃっていましたが、怠惰なところはありながらも決して下品ではなく、所作が美しいというのは意識しました。
――猫背だけど上品、みたいな。
安齋:そうですね。あとは600年も生きていると、悟りを開いて口数も少なくなりそうですが、エルダはそうでもありませんよね。自分が好きなことはたくさん喋るんですよね。
――いわゆる「オタク特有の早口」みたいなところもあります。
安齋:つらい別れをするなら引きこもっていたい、人と出会いたくない。一歩引いた感情がベースにありつつも、「せっかくなら」と時代の流行に乗ってみたり、オタク趣味に没頭したりと、「悲しんでばかりでも仕方ない」という柔軟性を感じます。そういった意味での前向きさは大事にしました。
――小糸とエルダの距離感や関係性については、どのようなことを大事にされていますか?
安齋:ことわざにもある「親しき仲にも礼儀あり」が2人のベースにあるように感じたんです。突き放したツッコミを入れることもあれば、手を繋ぐくらい親密なところもある。でも、2人はお互いに巫女と御祭神としての関係を大事にしている。なので、あまりずかずかと距離を縮めることはしないようにしました。例えば、本殿(エルダの部屋)での構図はだいたい小糸が入り口側に立つようにしています。
――なるべく小糸が下手側になるように。
安齋:もちろんエルダが入り口側に立つこともありますが、なるべく小糸がエルダを立てるような構図を意識するようにしています。
――変にいちゃいちゃしていないところが、またいいなと思いました。
安齋:僕の癖でもありますが、関係性を一歩引いた視点でとらえることが多いんです。そのほうが見ている方が自分なりの解釈で楽しめると思うので、あまり画面の構図で正解を絞り込まないようにしています。
――オープニングで、2人が並んで歩くところもいいですよね。エルダは年を取らず、小糸だけが成長していくという、見方によってはもの悲しくも見えるカットですが……。
安齋:最初から見てくださっている方は2人の寿命の違いもわかっていると思いますが、途中から見始めたという方にはわかりにくいかと思い、毎回流れるオープニングに寿命の違いがわかるカットを入れるようにしたんです。それが皆さんに気に入っていただけたみたいで、「泣ける」という感想を結構いただきました。すごく嬉しかったですね。
――オープニングで一番グッとくるポイントですね。
安齋:お話が悲しいから泣ける、悲しい画づくりだから泣けるというのでは、当たり前というか、捻りがないですよね。それよりも、何気ない日常的なカットを組み合わせていって、全体を流れで見たときに泣けるということがやりたいんです。なので、「わからないけど何故か泣ける」と言っていただけると「してやったり」といいますか(笑)、演出冥利につきます。
――小糸は尾崎由香さん、エルダは小清水亜美さんという配役ですが、どういったところに惹かれたのでしょうか。
安齋:尾崎さんは、小糸の素直さ、優しさ、頑固さがまっすぐに伝わってきたところです。僕自身は、初めは少しふんわりした声を想定していました。でも、尾崎さんの自然体かつはっきりしたトーンが女子高生としての小糸の性質とピッタリ合って。それで尾崎さんにお願いすることになりました。
小清水さんはとにかくエルダへの読み込みが深いですね。芝居のバリエーションが豊かなうえに、どれもエルダっぽくて、説得力がある。さすがだなと感心させられました。タイヤから空気が抜けるような話し方がすごくエルダっぽいです。本当におふたりともハマり役だったと思います。
――では、第10話以降の見どころを教えていただけますでしょうか。
安齋:第10話は、実は僕のほうからヤスカワさんにリクエストした唯一の話数なんです。これだけは絶対にやりたいとお願いした話数なので、ある意味、一番緊張しています(笑)。3組のエルフと巫女の今まで見られなかった一面が見られると思います。そして今後重要になってくるのが、エルダが小糸のために何をするのか。どうやって一肌脱ぐのか。そこに注目していただけたら嬉しいです。
TVアニメ「江戸前エルフ」作品情報
2023年4月よりMBS・TBS・BS-TBS “アニメイズム”枠ほかにて放送中!
放送情報
MBS:毎週金曜日 深夜2時25分〜
TBS:毎週金曜日 深夜2時25分〜
BS-TBS:毎週金曜日 深夜3時00分〜
AT-X:毎週火曜日 夜11時30分~
【リピート放送】
毎週木曜日 朝11時30分~/毎週月曜日 夕方5時30分~
配信情報
dアニメストアにて 毎週金曜日 深夜3時00分〜 配信中
◆毎週火曜日 正午〜 配信中
Amazonプライムビデオ、U-NEXT、アニメ放題、ABEMA、DMM TV、Hulu、FOD、バンダイチャンネル、ニコニコチャンネル、MBS動画イズム、クランクイン!ビデオ、HAPPY!動画
◆毎週火曜日 夜10時30分〜 配信中
ニコニコ生放送
◆毎週水曜日 正午〜配信中
Lemino
◆毎週水曜日 深夜0時00分~ 配信中
J:COMオンデマンド、auスマートパスプレミアム、TELASA、milplus、Google Play
イントロダクション
東京都中央区月島。
江戸時代より400年以上の歴史を刻む『髙耳神社』。
祀られたるそのご神体は、異世界から召喚され、すっかりひきこもったエルフでした。
ご神体のエルフ・エルダに仕えるのは、高耳神社15代目巫女の小金井小糸。現代文明とオタク趣味をエンジョイするエルダに振り回されながらも、彼女が教えてくれる江戸の文化に胸をときめかせ、連綿と紡がれる月島の人々とエルダのつながりにほっこり。
でもやっぱりこのエルフ、ぐうたらすぎる!
しかも他の神社のエルフ&巫女コンビまで現れて……!?
江戸と令和をつなぐゆったり下町コメディ、始まります。
スタッフ
原作:樋口彰彦(講談社「少年マガジンエッジ」連載)
監督:安齋剛文
シリーズ構成・脚本:ヤスカワショウゴ
キャラクターデザイン:小田武士
総作画監督:小田武士、中尾隆文、SAI
プロップデザイン:横山友紀
色彩設計:最相 茂
美術設定:近藤由美子、柴田千佳子
美術監督:アトリエマカリア
撮影監督:久保田 淳(CUE)
撮影:シアン
特殊効果:久保田 淳(CUE)
編集:山岸歩奈実
音響監督:藤田亜紀子
音響制作:INSPIONエッジ
音楽:松田彬人
音楽プロデューサー:斎藤 滋
音楽ディレクター:タノウエマモル
音楽制作:ハートカンパニー
アニメーション制作:C2C
製作:「江戸前エルフ」製作委員会
オープニングテーマ:「奇縁ロマンス」/ナナヲアカリ
エンディングテーマ:「おどる ひかり」/Cody・Lee(李)
キャスト
小金井小糸:尾崎由香
エルダ:小清水亜美
桜庭高麗:相川遥花
小金井小柚子:関根 瞳
アニメ公式サイト
作品公式ツイッター(@edomae_elf)
推奨タグ:#江戸前エルフ
WEBラジオ情報
TVアニメ「江戸前エルフ」高耳神社のご神体ラジオ ~私、ご利益ないけどな!~
■パーソナリティ:尾崎由香さん(小金井小糸 役)、小清水亜美さん(エルダ 役)
■配信日時:毎週木曜日配信中
■配信サイト
YouTube「日活アニメチャンネル」
インターネットラジオステーション<音泉>
書籍情報
■コミックス(マガジンエッジコミックス/講談社刊)
「少年マガジンエッジ」にて連載中
コミックス第1〜7巻 好評発売中!
著:樋口彰彦