中国で大ヒットしたアニメ映画の日本語吹き替え版が公開! eスポーツに人生をかけた若者たちの青春と激闘を描いた中国で大ヒットしたアニメ映画『マスターオブスキル -For the GLORY-』──主人公の葉 修(イエ・シュウ)役を演じる中村悠一さんへインタビュー!
中国の文化に触れるおもしろさと、吹き替えならではの難しさも!?
──映像をご覧になった感想は?
中村:制作した国の文化が作品にも表れているのは興味深かったです。ハリウッド映画の吹き替えを演じる時も同じなんですけど、制作した国では当たり前のことや常識が、日本にはなかったり、もちろん逆もしかりで。
この作品では例えばバケットとチキンのパーティバーレルを抱えて友人の家を訪れるシーンが何度もあるんですけど、そういうことは僕の感覚にはなくて。
(同席していた映画の中国人スタッフの方へ)中国では当たり前なんですか?
スタッフ:マクドナルドの限定メニューで、家族みんなで食べれるようになっています。
中村:なるほど。決して日本人は家族をないがしろにしているということではありませんが(笑)、そういうシーン1つ見てもおもしろいですね。
実写だと俳優さんを見れば、日本と違う国と文化なんだと受け入れやすいけど、アニメの場合はずっと慣れ親しんできたものなので、先入観なく見れてしまうため、ふいに文化や感覚の違いが垣間見えてくるのがおもしろいなと思いました。
収録が(郭 宇明[グオ ミンユー]役)の福山(潤)さんと一緒だった時に話したのが、自分たちだけだとわからない表現がいっぱいあるから、言葉1つとっても僕らが考える意図とは違うかもしれない。普通だったらこんな言葉を投げかけるかなと思ったとしてもその文化圏では当たり前の会話なのかもしれないねと。おもしろい点でもあり、読み取る作業がちょっと多く、難しい点でもありました。
──わからない部分はスタッフの方に尋ねたり、確認されたり?
中村:制作している方がいれば尋ねますが、洋画の吹き替えの時と同様に向こうで完成しているものなので、監督がいないため、演出意図などは日本にいるスタッフだけで考えなければいけないのが難しかったです。
──早朝に公園で太極拳をしている人がいたり、朝食に葉 修たちが点心を食べたりと私たちがイメージする中国像が描かれつつ、高層ビルが立ち並んでいたり、進化を遂げている今の中国を感じられた気がします。
中村:ハリウッドで作られた作品では、かつて日本がスチームパンクの世界観で描かれている時代がありました。街中に湯気が立ち上っていたり、怖いお兄さんがそこら中にうろうろしていたりして、僕らは「そんなことないのにな」と思いながら見ていましたが、今作は中国で制作されているので描かれているものはリアルだし、誇張する必要もなくて。だから作品を通じて、中国の文化に触れる楽しみもあると思います。
──ちなみに収録はどなたと一緒にされたのでしょうか?
中村:(蘇 沐秋役の)内田雄馬くんと福山 潤さんと一緒に収録しました。内田くんとはドラマを作っていく上で大切なシーンが録れたので良かったのですが、終盤のバトルシーンでは掛け合いできなくて。
でも吹き替えということで、原音があったので、相手役の声や息を聴いてお芝居させていただきました。他の皆さんも原音に沿いながら自分のカラーを出されていると思います。
日本のアニメとの違いは音の付け方!?
──キャラクターの動きやバトルシーンの迫力、街並みの描写など映像のクオリティの高さを感じました。
中村:そうですね。それと作り方にも日本のアニメとは違う特色みたいなものもあって、一番違うなと思ったのは音楽の付け方でした。
バトルシーンなどゲームの中で起きていることは現実的ではないし、現実のシーンであってもアニメなので、多少オーバーな表現や演出になっているところもありますが、SEなどの音素材が生っぽくて、リアルな音を付けている印象があります。
日本のアニメであれば、結構オーバーで派手な音が付くことが多くて、どちらがいい、悪いではなく、そこも感覚の違いであり、おもしろさも感じました。
──また史実をテーマにした戦記ものや拳法ものなどを生み出している国らしく、手に汗握るバトルシーンの描写や演出はさすがだなと思いました。
中村:長い歴史を感じられる部分がありますね。文化が形成されていく過程で、教えや経験したものがあると思うし、音ひとつとっても独特の文化や歴史などが感じられるのではないでしょうか。
──終盤のバトルシーンは長尺で圧巻でした。
中村:バトルシーンは冒頭を含めても結構な量があると思います。
ドラマの部分のゆったりした時間の流れと激しくてテンポの速いバトルシーンのバランスや緩急をかなり考えて作られていると思うので、見てくださる方を飽きさせない作品になっていると思います。
──ぐっとくるせつないシーンがあったり、バトルの激しさなど感情を揺さぶられました。
中村:なぜチーム皇風が強いのか、またゲームキャラの詳しいスキルなどゲーム内の設定がわからなくても、内容はわかるように作られているので、安心して見てほしいです。
そして見て気になったところがあれば、小説やコミックなどで意味を理解することでより楽しめるのではないかなと思います。
伝えたいのはゲームを通してのドラマ。劇場では集中して、明るくなるまで見てください
──ゲーム内の派手で迫力のあるバトルも見どころの1つですが、チームメイトとの関係性などドラマ部分も繊細な心の動きも魅力かなと思います。
中村:ゲームの作品というよりもチームスポーツものとして見ていただきたいです。ゲーム自体はこの作品の架空のものであり、プレー中もゲーム画面を映しているのではなく、アニメとして描いているので、ゲームの設定などはさほど重要ではないと思っています。
伝えたいのはゲームを通しての人間関係や各キャラクターの成長などドラマの部分なので、そこをしっかり見てもらえたら。葉 修と蘇 沐秋の友情、蘇 沐秋の妹の蘇 沐橙(スー ムーチェン)との心の交流なども監督や制作された方は見てほしいのではないかなと思います。
──皆さんへメッセージをお願いします。
中村:皆さんに楽しんでもらえるように、ニュアンスを汲み取ったり、時には追加したりしながら表現していますので、そこを楽しんでもらえたらいいなと思っています。
あとeスポーツ特有の専門用語が多かったり、日本人には耳なじみがない人物名だったりするので、いつも見るアニメよりも更に集中していただいたほうがいいかも。
あと本編が終わってもEDクレジットが終わって、劇場が明るくなるまではスクリーンを見てください。次につながるシーンがあったりするので……。劇場で見て確かめてください。
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