
『白聖女と黒牧師』最終話(第12話)放送後インタビュー:監督・野呂純恵さん|「心の結びつきを重視した恋愛表現を心掛けていました」
アベルの影のあるイメージを石谷さんが見事に表現してくれた
――ローレンスとセシリア以外で印象に残ったキャラクターもお聞かせください。
野呂:アベルですね。聖女の加護、フレデリカの事、ローレンスの体質…唯一すべてを知っている人物なので、物語を進める上で重要な存在でした。
それと6話のアベル回は原作の時から好きな話だったのでアニメに組み込めて良かったです。彼は幼い頃に家族に見捨てられた過去を背負っているので、明るく振る舞っていてもどこか影があるイメージなんですが、それを石谷さんが見事に表現して下さって。
もともとアベルの過去については伝えてなかったので、きっと相当研究されたんだと思います。
――第8話&9話あたりのフレデリカとギーゼルベルト関連のエピソードは少し印象が違ったものになっていたように思えました。この話数はどのような点に意識して制作されたのでしょうか?
野呂:7話後半から9話までの西の街編は、ローレンスとセシリアにとって転換点となる話にしたかったので、これまでの日常とは違ったロケーション、キャラクター、そして聖女の加護とは何か?という今まで曖昧にしてきた部分に触れさせて、主人公たちに新たな刺激と、二人の関係がどうあるべきかの課題を与える役目を持たせていました。
特に8話と9話では、悲恋に終わったフレデリカとギーゼルベルトのストーリーを知り、似た立場で今を生きるセシリアとローレンスがどう受け止めて、どう生きていくのか、というところに焦点を当てて、ただの切ないサイドストーリーで終わらせないよう、今後の進展につながるきっかけになるよう組み込みました。
――物語も終盤に入った10話以降では、セシリアとローレンスの関係性にもようやく少し変化が見えてきました。このあたりの掛け合いを作る上ではどんなことにこだわりましたか?
野呂:この辺りからずっと鈍感だったローレンスが少しずつセシリアを意識し始めるので、彼の主観を増やしていきました。
西の街以降徐々にセシリアとの関係性に形を求めるようになっていくのですが、自分がセシリアと一緒にいたいと思うのはセシリアが聖女で守るべき人だから、という思い込みに疑問を抱きはじめ、ぐるぐると悩む姿を見せることでローレンス側の変化を感じさせるようにしました。これまでデレ表現を禁じてきた効果もこの辺から発揮してきます。
この物語は二人が自分たちの関係に一つの形を見出すまでの流れを描いているので、実は関係自体は1話から最終話まで変わってはいないんです。それでも物語が進展して見えたのは、ローレンスの心情変化にフォーカスしたからじゃないでしょうか。
――最後に最終話まで視聴してくださった視聴者のみなさんへのメッセージをお願いします。
野呂:アニメ「白聖女と黒牧師」最後までご視聴いただき誠にありがとうございます。少しでも皆様の心に残る作品となっていたら幸いです。原作の方はまだまだ続いてますし、アニメで語られていないお話もたくさんありますので、引き続き楽しんでいただけたらと思います。