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『映画プリキュアオールスターズF』田中裕太・板岡 錦 対談インタビュー

『映画プリキュアオールスターズF』 インタビュー 監督・田中裕太さん、総作画監督・キャラクターデザイン・板岡 錦さん対談で明かされた制作秘話【ネタバレあり】

 

78人のプリキュアがいる中で個々のキャラクターをどう活かすか

──その大変さについても、ぜひうかがいたいのですが……オールスターズはまず人数的なところ、そしてそのキャラクターたちをどのように活かすか、という壁があるかと思います。

田中:そうですね。やはり大変だったのは、たくさんの人数がいる中での見せ方というところでしょうか。やりたいことや見せるべきものというのも、人数に比例してどんどん増えていくけど、映画の尺は70分程度で増やせませんから。そうすると、圧縮しなきゃいけなくなるんですよね。

そうなるとシナリオも組みにくくなってきます。アクションにしろ、ドラマにしろ、ひとりあたりの見せ尺が減ってくる中で、個々のキャラクターをどう立てていくべきか。当然それはシナリオの進行にも嚙み合っていなければならないのです。そのバランスの取り方、取捨選択は難しかったです。

それでも、なるべく公平にというのは意識していました。いろいろな人たちが作ってきた作品を預かるわけなので、特定の作品を贔屓して、ってことはできない。自分が関わってない作品も多かったので、自分の理解度が足りているかは不安がありました。できたかどうかは、今も不安なところですけども。

自分の勝手知ったる作品は今となっては結構古いシリーズなので、現在はあまり前に出しにくいんですよね。メインターゲットを考えるとやはり比較的近作を中心に構成しなきゃいけなかったから「大丈夫かな」ってところはありました。

 

 

──そういった部分を板岡さんに相談されることはあったんですか?

板岡:まったく無かったですね。

田中:それは作画に入る前の段階なので。シナリオやコンテは自分との戦いでしたね。コンテ段階は特に。今回は僕ひとりで全部絵コンテを描きました。

自分も全部把握してるとは思わないですけれど、「じゃあもっと詳しい人が他にいるか」と言えば、正直思い当たる人があんまりいなくて。こういう言い方するとおこがましいですが、ひとりで描いた方が早いかも、と。

誰かに頼んでも、多かれ少なかれ結局修正に時間を取られてしまうと思ったので、自分で描いてしまうのが、いちばん時間が掛からないかなと判断しました。その代わり演出はなるべくパート演出にお願いして、実務的な部分は持たないように……結局持たざるを得なかったのですが(笑)。

──(笑)。今キャラクターの理解度というお話があったのですが、『Go!プリンセスプリキュア』のキュアフローラ/春野はるか役の嶋村 侑さんが「私の田中監督だと思ってたのに他のキャラクターにもあんなに詳しいとは」という話をされていました(笑)。

田中:あははは、そうでしたか。

──そしたらキュアウィング/夕凪ツバサ役の村瀬歩さんがすかさず「はるはるの田中さんですよ」と添えつつ「田中監督は本当に造詣が深くて」とおっしゃっていました。

田中:まあまあ、フローラに関してはね、(シリーズディレクターを担当したので)よく知っているので好きに動かせますけど、プリキュアシリーズのいろいろなキャラクターを預かるので、逆に「よその子に恥かかせられない」というか。他のシリーズに関しては、キャラクターをより尊重しつつ、きちんと見せて、とは思っていましたね。

 

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絵コンテの面白さを画面に

──板岡さんが難しかったと感じるのはどういったところでしょうか。

板岡:物量が多かったことですね。それに尽きるんじゃないですかね。何をどう描くかというのは、キャラクター表に沿って描けばいいことだけども、単純に物量が多くて。

時代ごとにパーツの捉え方、特に目の描き方が全然変わってくるから。「まつ毛何本でどっちにあるんだっけ?」と逐一確認していました。

それが大変と言えば大変だったけど、監督の苦労に比べたら全然だと思いますよ。監督の場合は、ゼロからイチを生み出すわけだから。いちばんしんどいと思います。各キャラクターのこともすべて理解しなければいけないですしね。

それに対して、どう画面に出そうかな、肉付けしていこうかな、と考えるのが自分の仕事なので。なるべく監督が目指している画面に近づけるように、ということを考えています。

 

 

──コンテを読まれてどのような印象がありましたか。

板岡:「コンテの段階ですでに面白いな」「すげえな」って。アニメの面白さは、ほぼコンテで決まるような気がするんですよ。コンテで面白ければ面白いんです。

言葉が悪いですけど、よほど作画がひどくない限りはね。あとはその面白さをなるべく画面にしよう、と集中していました。

──ここは田中監督ならではだな、と感じた部分はありましたか。

板岡:面白い絵コンテを読んでると、キャラクターの声が聞こえる感じがするんです。全部のコンテにあるとは思わないんだけど、声が聴こえたり、情景が浮かんだり、空気を感じたりね。そういうのを感じるんですよね、見てて。

 

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