“原作の第1話を読んで、アニメ化したいと思った”──本作への思いや「金曜ロードショー」が決まるまでの経緯をプロデューサーが語る! アニメ『葬送のフリーレン』プロデューサー・田口翔一朗さんインタビュー
「週刊少年サンデー」で連載中の『葬送のフリーレン』がTVアニメ化! 2023年9月29日に日本テレビ系「金曜ロードショー」で初回2時間スペシャルが放送され話題となり、以降、日本テレビ系全国30局ネット『FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)』にて金曜よる11時から放送中。
物語の舞台は、勇者のパーティーによって魔王が倒された“その後”の世界。パーティーの魔法使いで千年以上生きるエルフのフリーレンは、共に冒険をした勇者・ヒンメルの死をきっかけに、人間を知るための新たな旅路に向かいます。
今回、アニメイトタイムズでは本作のプロデューサーを務めるTOHO animationの田口翔一朗さんに、アニメ化までの経緯や目標、さらに、アーティストやキャストに関するエピソードも伺いました。
さらに、史上初の試みとなる「金曜ロードショー」での初回放送や、原作の第1話の段階でアニメ化をしたいと思ったという本作の魅力をプロデューサー視点で語っていただきました。
原作第1話の段階で考え始めたアニメ化企画
──早速、作品との出会いを教えてください。
田口翔一朗プロデューサー(以下、田口):新たなアニメ企画を考えていた中、当時、「週刊少年サンデー」に掲載されたばかりの『葬送のフリーレン』を読みました。
第1話から感動的な内容で、まさかいきなり泣くとは思ってもいなかったです。そこからすぐに社内企画会議で「新連載、すごい漫画が始まりました」とプロデューサーチームに報告しました。原作の第1話の段階でアニメ化をしたいと考えはじめていました。
──それはやはり珍しいのでしょうか。
田口:珍しいと思います。が、社内でも「ぜひ前向きに考えるべき作品だ」という話になりました。普通は第1話で注目したとしても少し様子を見ることも多いのですが、『葬送のフリーレン』に関しては早い段階で動き始めました。
──第1話の段階で先々の面白い展開が見えたんですね。
田口:非常に完成度が高い1話で、「この先どうなるんだろう?」とワクワクしました。本当に素晴らしかったので、単純に「続きが読みたい」という楽しみがありました。
今作は魔王を討伐した後のアフターファンタジーですが、似たジャンルの中でもあれだけのドラマが作り込まれている作品はなかなかないと思いました。そういった唯一無二の点も素晴らしいと感じていました。
──いち読者目線でも第1話は衝撃的でした。
田口:『葬送のフリーレン』という作品は、仲間の想いであったり、出会った人々の意志、やまごごろをを紡いでいく物語だと感じています。
この作品にまだ触れていない皆さんも、日常生活において忘れていたり、ないがしろにしていた誰かの“想い”を再発見していただくことで、人を想う気持ちであったり、時間の考え方、今をどう生きるか、という部分を考えさせられるんじゃないかなと思います。
また、作品を見て、最初にアベ(ツカサ)先生の美麗なイラストに引き込まれました。そして、原作第1話では回想をはさみながらフリーレンやヒンメルたちの旅路が描かれましたが、山田(鐘人)先生のセリフ回しがすごいと感じて。
さらに、強烈に印象に残る見開きがあったりして、めちゃくちゃインパクトがありました。絵とセリフ回し、物語の構築の仕方にグッと惹かれ、うるっときました。
“アニメーションプロデューサーによって作品の仕上がりが変わる”
──田口プロデューサーはどういった立ち位置で制作に携わられているのでしょうか?
田口:企画と製作がメインになります。こういうアニメ作りをしたいからこういうスタジオとご一緒して、こんな目標のもとお客様にお届けしたい、という大まかな地図を企画書として社内に提出をしました。
小学館さまにアニメ化の許諾をいただいた後は、劇伴作家さんのご提案や、主題歌のご相談など主にそういったことの検討に製作委員会のみなさまと一緒に注力しました。
──アニメ化にあたって大事にしたことを教えてください。
田口:アニメ化を企画するにあたり、私としては「どのアニメーションプロデューサーと組むのか」という部分を非常に重視しました。私はもともとアニメ制作スタジオで制作進行をしていました。だからこそ、“アニメーションプロデューサーによって作品の仕上がりが変わる”という認識がありましたし、企画する側としてそこに注力しました。
今作でアニメーションプロデューサーを務められているマッドハウスの福士(裕一郎)さんは前職時代から存じ上げていて。福士さんのモノ作りにかける情熱は業界内でも有名で、確かなものなんです。
私自身、いつか仕事をご一緒したいという思いがあり、良いタイミングで『葬送のフリーレン』の話があったのでご相談させていただきました。実際、斎藤監督をはじめ素晴らしいスタッフのみなさんにお声がけいただき、福士さんと中目(貴史)さん両アニメプロデューサーには熱意溢れる素敵な現場を構築いただきました。
──マッドハウス側にはどういった要望を?
田口:私は『葬送のフリーレン』の魅力は大きく分けて3つあると思っていまして。ひとつ目は、先ほどもお話した、他者を想う気持ちやまごころを紡ぐ物語というドラマの部分です。
そんなフリーレンたちの世界の魅力をお客様にしっかり届けられるような丁寧な美術や芝居、演出表現ができたら素敵だなと。あと、『葬送のフリーレン』という作品は大人向けなハイファンタジーだけではなく、、素晴らしい少年漫画だとも捉えていまして。
──少年漫画ですか?
田口:ドラマだけではなく、『葬送のフリーレン』は少年漫画らしい魔法やバトルアクションの要素も含まれています。そして、それらは、動きと音楽や効果音が付くアニメーションだからこそ、原作のもつ魅力をよりいっそう引き出せると感じました。それが2つめの魅力です。
マッドハウスさんは『ワンパンマン』(第1期)も作られていますが、とてつもないクオリティで衝撃を受けました。夏目真悟さん、久保田誓さんらメインスタッフをはじめとして、各話にも佐藤利幸さん、すしおさんといった素晴らしいアニメーターの方々が多数参加されていて、どうやってこんなすごいスタッフを毎回集められたんだろうと衝撃を受けました
『葬送のフリーレン』ではそういったマッドハウスさんのアクションを描く力も思う存分発揮していただけると思います。
そして、3つめの魅力は、愛嬌あふれるキャラクターたちです。回を重ねるごとにフリーレンたちの表情が豊かになっています。
フェルンとシュタルク、ヒンメルもそうなんですけど、ユーモアあふれるキャラクターたちが愛らしく、みんな愛嬌があって。視聴者の皆さんに彼らの魅力を知ってもらい愛してもらえたら嬉しいです。
そのようなドラマ・アクション・ユーモアの3本柱を大事にしてマッドハウスさまにも作っていただいています。
──たしかにユーモラスな場面も多い印象です。
田口:アニメでは原作の良さがさらに引き立つように演出を加えているところもあるんですけど、そこはアニメーターさんたちの遊び心がとても素敵に光っています。色んなキャラクターたちの芝居や表情に、クスッと笑ってしまうようなところもたくさんあります。特に点描シーンは大好きです。ぜひそんなところも注目してほしいです。