求められたのは“昭和30年代の白黒映画”のテイスト――映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』関俊彦さん&木内秀信さんインタビュー|アニメーション的なデフォルメを払い、実写に近い芝居で作り上げた鬼太郎の父と水木の空気感
11月17日(金)より劇場公開が始まった、原作者・水木しげるさん生誕100年記念作品の映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』。
『ゲゲゲの鬼太郎』は墓場から生まれた幽霊族の少年・鬼太郎がさまざまな妖怪たちと繰り広げる物語。1954年の紙芝居から始まり、漫画、アニメ、映画、小説、ドラマ、ゲーム、舞台など、さまざまな関連作品が展開されています。TVアニメ第1期は1968年に放送を開始し、以降第6期までシリーズが放映されています。
漫画作品は第25回(1996年度)日本漫画家協会賞・文部大臣賞を受賞し、テレビアニメ第6シリーズは第57回ギャラクシー賞にて、アニメ史上初となる特別賞を受賞。作品発表から半世紀を超えた今も、多くの人々から愛され続けている作品です。
アニメイトタイムズでは、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の公開を記念し、鬼太郎の父(かつての目玉おやじ)役の関俊彦さん、水木役の木内秀信さんにインタビューを実施。役作りや作品の見どころはもちろん、子どもの頃のお話や『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズの思い出など、余すところなく語っていただきました。
<ストーリー>
廃墟となっているかつての哭倉村に足を踏み入れた鬼太郎と目玉おやじ。目玉おやじは、70年前にこの村で起こった出来事を思い出していた。あの男との出会い、そして二人が立ち向かった運命について…
昭和31年―日本の政財界を裏で牛耳る龍賀一族によって支配されていた哭倉村。帝国血液銀行に勤める水木は当主・時貞の死の弔いを建前に野心と密命を背負い、また鬼太郎の父は妻を探すために、それぞれ村へと足を踏み入れた。
龍賀一族では、時貞の跡継ぎについて醜い争いが始まっていた。そんな中、村の神社にて一族の一人が惨殺される。それは恐ろしい怪奇の連鎖の始まりだった。
鬼太郎の父たちの出会いと運命、圧倒的絶望の中で二人が見たものは――。
大人も楽しめる、ちょっと背伸びした『ゲゲゲの鬼太郎』
――今回の脚本を読んだ時の印象をお聞かせください。
鬼太郎の父(かつての目玉おやじ)役・関俊彦さん(以下、関):最初に台本を3冊渡された時に、「え? 何で3冊もあるの?」と思ったんですが、1、2、3話というわけではなく、あまりに量が多いので3つに分かれていたんです。その台本のビジュアルが怖くて……。
水木役・木内秀信さん(以下、木内):おどろおどろしい、ポスターのやつですね。
関:血まみれの地蔵がたくさんある中に、鬼太郎の父と水木が立ち、鬼太郎がちょこんと座っているという絵がすごく鮮烈に描かれていて、3冊とも少しずつ色合いが違っているんですが、ビックリしましたね。まるで「触ったら血が付くんじゃないの? ウェッ~!」という絵だったので、まず台本に驚かされました。
作品そのものは、監督から「子ども向けというよりも、大人の鑑賞に堪えうる、ちょっと背伸びした『ゲゲゲの鬼太郎』で勝負したい」というお話を聞いていました。
内容的には人間の業、醜さや愚かさというものが描かれています。それに対して、「それでも生きていかなければいけない。我々がそんなどうしようもない、悔しいぐらいにひどい世の中でも、そこに立ち向かっていかなくてはいけないんだよ」という覚悟を観る人に突きつけてくるような、厳しい脚本という印象がありましたね。
木内:確かに作品の絵柄を見ると、子どもの方も見られるような作品という感じはあるんですが、内容を見ると考えさせられるような作品でした。
――木内さんは、脚本の印象はいかがでしたか。
木内:僕が子どもの頃に見ていた横溝正史(※1)の小説をドラマ化したようなサスペンスで、まさにその頃の時代を映した物語だなと思いました。『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』というタイトルからも、「鬼太郎の父たちが昔どういうふうになって、鬼太郎は誕生したか」という物語が描かれていることは知っていたので、「どうやって誕生したのか」と楽しみに台本を読んでいました。
最後にはそれが明らかになるんですが、こういう結末なんだなと……(笑)。今は言えないので、劇場でお楽しみください。
※1:日本の推理小説家。代表作に『獄門島』『八つ墓村』『犬神家の一族』などがある。
――TVアニメ第6期を見ていた人は、最後のシーンとの繋がりも感じられるので、鬼太郎の誕生は気になっていたでしょうし、『ゲゲゲの鬼太郎』ファンの中でも、そこを知らない方はたくさんいらっしゃるかと思います。
木内:僕の友だちにも「目玉おやじは、もともと目玉だった」と思っている人たちもいます。
関:そうですよね。
木内:人間の形をしていたことを知らない人もいるので、驚かれたりもしました。