『キボウノチカラ~オトナプリキュア’23~』のエンディングを彩る「雫のプリキュア」について、キュア・カルテットの五條真由美さん、うちやえゆかさん、工藤真由さん、宮本佳那子さんが熱く語り合う!
正直な命がそこにある
――宮本さんも歌詞を読まれたときに、只野さんらしさを感じられました?
宮本:そうですね。私はこうやって歌わせていただいていますが、根は役者だと思っていて。だから歌詞をもらった時に、どういう主人公が、どういう状況で、どういう気持ちで歌っているのかを考えるんですけど……。一筋縄では読解できない、いろいろなことを考えさせられる歌で。
工藤:うんうん。この歌詞を見て、のぞみちゃんたちは色々あったんだろうなぁって想像ができました。だけど、根っことなる部分はきっと変わっていなくて。
宮本:葛藤が描かれているよね。でもどこか前向きで、強い女の子。
工藤:そうそう。
――おふたりが歌われている<正直ないのちが>という言葉は特に印象的です。
宮本:この言葉の解釈については、実はさっきも話し合っていたんですよね。
うちやえ:そうなんです。その後につながる<ここにいる>という言葉を私が歌っているんですけども……<正直ないのち>が<ここにいる>と歌っている。その前には真由ちゃんが<そこにいる>、佳那子ちゃんが<そこにある>とそれぞれ歌っていて。
Dメロは重要なポイントですから、もしかしたら別の言葉にすることもできたと思うんです。でもあえて、この重要なメロディーの部分で、<そこ><ここ>とそれぞれが歌っている。『プリキュア』の歌ではあるんですけども、それぞれの歌い手の生き方も乗せていいよ、と只野さんから言われているような気がしました。真由ちゃんが見えて、佳那子ちゃんが見えて、そして五條さんが締めてくれて……。
五條:私は最後の<立ち向かってる>だったから、その時は単に<立ち向かってる>という言葉に力を入れて歌っていました(笑)。やえさんにその話を聞くまで、その深い意味に気づいていなかったんですよ。言われてみれば、この大切な場所に<ここ><そこ>という言葉を入れるってすごいなって。
工藤:最初のレコーディングで、<そこにいる>という言葉を少し重めに歌ってしまったんです。そしたら「もうちょっと軽めに」というディレクションを受けました。その後、佳那子のレコーディングを聴いていたら<そこにある>を弾むように歌っていて。軽やかだけど、しっかりと前に出てくる。すごいなと思いました。言葉としては短いじゃないですか。
宮本:そう! 言葉が短いんですよね。あっという間に過ぎていくから。
うちやえ:でもその短い言葉に深い意味が内包されている。これまでの『プリキュア』の歌は、子どもたちに向けて、ということを意識して歌っていたんです。それは大人の存在を無視していたわけではなくて、子どもたちが分かるように歌おうと思っていました。
でもここでこういう歌詞を届けられたことで、いろいろな人を迎え入れることができるんじゃないかなって。感動しました。歌詞を書かれたとき、歌いわけまで意識されていたかは分からないですけども「きっとそうなるであろう」と思いながら作ってくださった部分だと思います。只野さんが私たちのことを思って作ってくださったんだろうなと……。
工藤:歌割りに運命のようなものを感じました。この15年間過ごしてきた方たちの中には、楽しいことだけじゃなく、つらいこと、哀しいこともあったと思います。それは私も一緒なんです。「雫のプリキュア」には、いろいろなことを経てきた今の自分にとって、必要な言葉がいっぱい詰め込まれていて、中でも私自身が欲しい言葉が自分に与えられているように思えたんです。もしかしたら、それは私だけじゃなく皆さん感じられているのかなって。
特に佳那子が歌う<大きくなっても なりきれない心に子どもの私がいる>という部分がすごく好きで、似合っているなって。佳那子が歌うと知って嬉しくなってしまいました。
宮本:大人に……なりきれてないってこと?(笑)でも私は、2番はオトナになっての感想だと思ってます。
五條:うん、そうだよね。
宮本:つまりオトナなんです!
五條:でも子どもの私がいる(笑)。
宮本:(笑)
工藤:私からすると、佳那子って実はオトナな部分をたくさん持っているんですよ。でも佳那子は自分で「オトナになりました」とか言っちゃうから(笑)。でもその変わらなさが好きなんですよね。昔の佳那子もいるんだなと安心します。
宮本:それは私の子ども時代を皆さんが知ってるからそう思うんですよ。……なんか、当時を知ってくれている方々と歌うのはやはり良いですね(笑)。
五條:オトナになってから会った人は“オトナ”の宮本さんだもんね(笑)。
変わっていくことと変わらないこと
――『ひろプリ』ライブのリレーインタビューの時に、うちやえさんが「変わっていくところは変わっていく、変わらないところは変わらない、この『プリキュア』のスタイルを(「雫のプリキュア」で)改めてまた勉強させてもらいました」とおっしゃっていました。今のエピソードには、そのお話にも通じるものがありますね。
うちやえ:そうですね。『プリキュア』は時代と共に変化していますが、スタイルを変えつづけていくことって、とても勇気がいると思うんです。でも蓋を開ければ変わっていないところもある。『キボウノチカラ』を見たときにも、「雫のプリキュア」を聴いたときにも、きっと同じような感覚になるんじゃないかなと思います。
それと私が印象的だったのが、20周年を記念した広告があったじゃないですか。
――プリキュアの日を記念して作られた、『プリキュア』20周年記念の描き下ろしキャラクター広告ですね。
うちやえ:そうです。私は五條さんと一緒に新宿のビジョンを見に行ったんですけど、女性の皆さんが立ち止まってくれていたんです。きっと、あの当時見てくれていた子なんだろうなと思うと、すごく嬉しいものがあって。
五條:嬉しかったよね。「DANZEN!」が流れていたから、振り付けをその場で撮って動画で上げようか、なんて話もしていたんです。でも人が多くて、恥ずかしくなってしまって(笑)。諦めて帰りました。
――五條さん御本人がその場で振りをされる可能性が……!
うちやえ:堂々とやっていいのに、なんて思っていたんですけど。本人は恥ずかしがり屋なので(笑)。でも本当に、私たちが想像する以上の方たちが足を止めて見てくださっていていました。
子どもの頃に『プリキュア』を見て育って、大人のお姉さんになって、そして今一生懸命頑張っているんだなと実感することができて。『プリキュア』の歌は全部幅広い方たちが聴ける曲にはなっていると思うんですけども……一生懸命頑張ってきた女の子たちが「雫のプリキュア」を聴いて「明日頑張ろう」という気持ちになってもらえたらと考えながら歌っていましたね。
宮本:『プリキュア』を見て育ったけど、そこから少し期間が空いてしまった人も「プリキュアってたしかにそこにあったよね」「プリキュアはこういう感じだったよね」と懐かしい気持ちになってもらえるんじゃないかなと思います。ちょっと離れていた友だちに会うような、そんな気持ちで聴いてもらえたらと。
うちやえ:うんうん。テレビだけだと全部は聴けないので、ぜひCDで、歌詞を読みながらじっくりと聴いてもらいたいですね。