共演を通して感じた心強さと親和性。周りの人たちの優しさに応えたい――『エクソシスト 信じる者』アンジェラ役・佐倉綾音さん×キャサリン役・鬼頭明里さん吹き替え声優インタビュー
1973年に公開(日本公開は74年)されたホラー映画の金字塔『エクソシスト』。その新章である『エクソシスト 信じる者』が、2023年12月1日(金)より公開中です。
ある日、森の中で姿を消したアンジェラとキャサリン。3日後に戻ってきた彼女たちの様子はどこかおかしく……。それは、やがて少女の家族たちが対峙する“比類なき恐怖”の前兆でした。
本稿では、吹替版で悪魔に憑りつかれるふたりの少女を演じた佐倉綾音さんと鬼頭明里さんのインタビューをお届け。共演の感想や今作に感じた魅力などを語っていただきました。
“ひとりじゃないこと”の心強さを感じた
ーーホラーが苦手なおふたりでも、今作はかなり楽しんで観られたそうですね。
アンジェラ役・佐倉綾音さん(以下、佐倉):(ホラー的な場面の)「今からいきます!」という空気感が分かりやすかったので、そこは助かりました。前触れのない恐怖シーンは、そこまで多くなかったかなと。個人的には、冒頭で突然出てくる蛇が一番怖かったです。
キャサリン役・鬼頭明里さん(以下、鬼頭):たまに大きい音が入ってくるとめちゃくちゃびっくりするよね。リラックスして観ていたら、急にきて「おお!」みたいな(笑)。
ーー今作をきっかけにホラー映画を観ることも増えそうですか?
鬼頭:今回で「意外と私はホラーが楽しめるんだ」とわかりました。1人ではまだ無理なんですけど、かなりいける気がしています!
佐倉:『エクソシスト』は、どちらかと言うとビギナー向けだから。ホラーって“超常現象系”と“グロ系”があるけど、どっちの方が得意?
鬼頭:『エクソシスト』は超常現象だよね。ならそっちの方がまだいけそう。
ーー佐倉さんはグロ系も観られるのですか?
佐倉:いえ、私は平等に苦手だなぁと思っています(笑)。ただ、和ホラーやモキュメンタリー系に少し興味を持っていて。詳しい人に話を聞きながら、最近ちょこちょこ観ています。詳しいのは漫画家の友達なのですが、その人は怖いという感覚がおかしくなっていて、オススメを1作だけ観たらとても怖かったんです。「怖くないしグロくないって言ったじゃん!」と言ったら、「ごめん。大丈夫なものとして換算してたわ」と(笑)。
ーー(笑)。プライベートでも仲の良いおふたりが、親友という役どころで出演している今作を楽しみにしているファンも多いと思います。改めて、今作での共演はいかがでしたか?
鬼頭:楽しかったです! ホラーで求められるお芝居は「いつもと違うのかな」と思っていたし、怖がらせる役なので、プレッシャーも凄かったんです。だからこそ、“ひとりじゃないこと”は大きかったなと。お互いの演技を聞きながら進められたので、とても心強かったです。
佐倉:吹き替えの台本は独特な台詞回しや言葉遣いが多く、日本人に馴染みのない会話やテンポ感も多数存在するんです。また今作のキリスト教信仰といった要素も、日本の作品ではあまり見ないものが多くて。掛け合う相手が慣れ親しんでいる明里の声だと少し安心感や親和性が高まる気がしていました。
加えて、私が先に出演の連絡をもらっていたのですが、「どっちの役をやるんだろう?」と気になっていたんです。相手が明里になったと聞いて、「それなら私はアンジェラかな」と想像していたんですけど……。明里は明里で「私がアンジェラかな」と思っていたらしくて(笑)。
鬼頭:私も「綾音がキャサリンをやるだろう」と思っていたから、「綾音そっちなんだ!?」って驚きました。
佐倉:そりゃ私でしょう(笑)。最近はもう可愛い声の役をやることも減っているから。
鬼頭:いやいや! 自分の地声から想像して、「アンジェラはこのままいけそうだな」と思ったんです。
佐倉:たしかに、地声は明里の方が低いんだけど、役の声は私より高いんだよね。明里が役に入ったときの声の変わり方には未だにびっくりします(笑)。逆に地声で演じるキャラクターっている?
鬼頭:いるにはいるけど……綾音と共演するときにはないかも。
佐倉:他の作品を観ていて、明里の声に気づかないことも多いんです。いつも凄いなと思っています。
子役たちの芝居を必死に追いかけたアフレコの裏側
ーーアンジェラとキャサリンは森で行った降霊術をきっかけに、悪魔に憑りつかれてしまいます。見方によってはかなり可哀想なキャラクターでもありますよね。
佐倉:『エクソシスト』の一作目もそうでしたよね。人間って、小さなきっかけで突然人生が変わったりするから。
鬼頭:悪魔にとって、人間の過ちの大小なんて関係ないんだろうなと。ある意味、災害のようなものだと思います。
ーー悪魔に乗っ取られていく過程を演じるうえでは、どういったことを意識されたのでしょうか?
佐倉:どこからが本人でどこからが悪魔なのかが、意外とわからないんですよ。
鬼頭:台本を読んでいても難しかったです。
佐倉:結局のところ、本国の俳優さんのお芝居が拠り所になります。吹き替えは本国で叩き出された正解のお芝居に、もう一度正解を与え直さないといけないので、かなり難しいです。今回も本国の俳優さんの表情や声色をよく観察しながら、演じていました。
鬼頭:一作目を観たときも思ったのですが、『エクソシスト』は子役たちのお芝居が凄くて! それを必死に追いかけながら、声を当てていました。
ーー憑依が進むにつれて、容姿も徐々に変化していきます。
佐倉:それも一作目を踏襲しているようなボロボロになり方なんですよね。現代でやっている演出や特殊メイクを60年前に遜色ないクオリティで叩き出せていたのはすごいなと改めて感じました。