スナックバス江に招かれた“ふじやん&うれしー”こと、藤村忠寿さんと嬉野雅道さんに、おふたりのファンである阿座上洋平さんが対面! 阿座上さんの反応は……?
阿座上さんさんが『水どう』に出会ったきっかけは?
藤村:(阿座上さんを見て)ところで、『水曜どうでしょう』の何が好きなの?
阿座上:いつも見返すのはクリスマスの回です。『水曜どうでしょう』を見たのはあれが初めてで、もう衝撃的でした。「こんな番組があるのか!」と。しかも最後は酒を飲んで乱入するっていう。ヤスケンさん(安田 顕)も当時はいらっしゃって。これが『水曜どうでしょう』なのか!と。
嬉野:おかしいですよね。駐車場にワゴン車を並べて。
藤村:それを普通にやってたからなあ。
阿座上:わかさぎ釣りも大好きです。本当に面白いですね。
――阿座上さんが『水曜どうでしょう』を知ったきっかけはバイト先だったとか。
阿座上:そうです。バイト先の店長さんが『水曜どうでしょう』のDVDを貸してくれて、それを見ていました。僕は群馬県出身で、群馬テレビで『水曜どうでしょう』の再放送をやっていたんです。当時本編は見られていなかったんですけど、CMは見ていたんですね。そのCMの様子が「ちょっとおかしいぞ」っていう。
藤村&嬉野:はいはい。
阿座上:ただならぬ空気を放っていて。それが小学生のころですね。だから『水曜どうでしょう』のなんとなくのイメージは知っていました。その後、バイト先の店長さんが貸してくれて。
嬉野:店長が「見込みがある」と思ったのかもしれないね。
阿座上:「こいつは分かるやつかもしれない」と。そうかもしれませんね(笑)。当時はお金もないし、仕事もないしでバイトばかりしていて。本当に心の支えだったんですよ。良い作品をいっぱい見て、吸収しなきゃ!と肩ひじ張っていた時期だったんですけども、あの作品を見て「自然体で良いんだ!」と教えてもらったように思ったんです。
藤村:あんな体たらくで良いんだと。それが人を励ますらしいね。
阿座上:それでもこれだけ面白くて、ファンの皆さんがたくさんいて。
藤村:それが人を励ますらしいね。
阿座上:はい。僕自身も元気のないときに見返していますね。
藤村:落ち込んだ時は、頑張りすぎている人を見るのがキツいというもんね。テレビの中では頑張りすぎてしまうところがあるから、そういう社会が見えてしまう。まったくないから。
嬉野:才能を見るのも落ち込むと言うもんね。
藤村:それもないから(笑)。
嬉野:小さい言い合いとかがこっちは面白いと思ってるからね。普段からあんな感じなんですよ。みかんを食べた手で、俺のタオルで手を拭いただろう!とか。
藤村:そこから言い合いがはじまるっていう。そういうのが日常的にあるから。
阿座上:狙っていないところも面白い。
藤村:タオルひとつに火種がある人たちがアメリカを横断したり、ヨーロッパに行ったりするんだから、そりゃいろいろあるよねえ。言い合い出せば格闘技がはじまる。しかも寸止めじゃないんですよ。刺し合ってる。だから踏み込んだトークになってる。
嬉野:ブラジリアン柔術というか。どっちが優勢なのか分からない(笑)。
藤村:だからと言って、楽屋に戻ったときに「さっきごめんね」とかないわけ。そもそも楽屋がないし(笑)。なんか良いところを、とは思いつつだけど。
阿座上:永遠に聞いてられますね、このお話(笑)。
『スナックバス江』は「絵に力がある」
――『スナックバス江』は札幌の北24条が舞台。北24条には馴染みはありましたか?
藤村:うん。俺が北大生だったころは北24条を中心とした場所で飲んでたから。
嬉野:でもスナックは行かなかったんでしょ?
藤村:学生だからね。ただ、当時はカラオケボックスのような場所がなかったから、カラオケバーのようなところに行ってました。ラグビー部だったので、10人くらいで。誰もが言うと思うんだけど、北24条と言えば『うきうきさろん団地妻』と『スナック原価』だと思う。名店とよく聞きますよ。すすきのよりも親しみやすい場所、という感じですね。学生もいるし、いろいろな人がいるというか。
嬉野:知る人ぞ知るという場所という感じ?
藤村:うん。原作のフォビドゥン澁川先生はどのように行かれたのかは分からないけれど、我々もスナックといえば北24条という印象です。きっと先生もスナックには行かれてるんですよね?
スタッフ:行かれているようです。
藤村:たまに行く感じなのかな。そのほうが良いかもしれないね。スナック入り浸りよりも(笑)。
嬉野:いやいや、あなたスナックに通ってないからそう言ってるだけで、通いはじめたら「楽しい場所だー!」ってなってるでしょ(笑)。常に批判的な目を向けてるけど、ころっと変わりますからね。
――嬉野さんが原作をご覧になった印象はどうでしょう?
嬉野:絵のインパクトがすごいなと思いました。
藤村:絵で持っていってるところがあるよね。僕らは似顔絵を描いてもらいましたけども……。嬉しいんだけど、自分たちが描かれているというのはなんだか不思議な気持ちです(笑)。
嬉野:すごい絵だもんね。力がある。
藤村:そう、力がある! 自分たちの絵を飾るかと言えばあれだけども、でも、大事なところに置いておきたい。貴重なものをいただきましたよ。
阿座上:先生の絵は絶妙ですよね。おふたりの特徴を捉えていて。本編では力を抜いたタッチが印象的ですけども、おふたりの似顔絵はまた違う印象がありますね。
――新しいチャレンジを続けるモチベーション……について……うかがえればなと思っていたのですが……。
藤村:あなたそれを聞く気がなくなったわけね。
一同:(笑)
藤村:それが正しいですね。新しいことにチャレンジを続ける、とは思ってなくて。そもそもさ、チャレンジなんていちばんしたくない。失敗するのが目に見えているからチャレンジって言うわけでしょ。
嬉野:なるほど。確かにね。
藤村:6割、7割「できそうだな」と思うことしかやらないから。5分5分ではやりませんからね。YouTubeもしかり。テレビ番組を作るのはお金が作るけど、YouTubeはそこまでだし、好きなことをやってれば良いんでしょ、ってスタンスですから。それを流すだけで金になるっていうなら、やったほうがいいでしょう!と。だからチャレンジでもなんでもないんですよ。
阿座上:でもお二人のYouTubeチャンネルは見ちゃいますよ。
藤村:「やりたい」という若いスタッフがいたんですよね。「藤村さんと嬉野さんと番組を作りたい」と。
嬉野:俺等が何かをやっているわけではないですからね。
藤村:面倒なことは何もしたくないですよ。本も「書いたから」くらいで。舞台役者に関してもそう。それもチャレンジしているわけではなくて「できそうだ」と思ったから。
阿座上:できちゃうっていうのがすごいですよね。
藤村:出演者に対して失礼かもしれないけども、演出するよりかは表にでるほうが楽に見えていたんです。俺は監督やアニメーターも大変だと思うんですよ。だったら声優のほうが良いじゃんって。もちろん、それぞれの大変さはあるだろうし、人からしたら「なめんなよ」って思われるだろうけども。
嬉野:まあ、根幹にサラリーマンがあるからね。だからそう言えるんだろうね。そのスタンスを離さないのも、ね。体質から離れたことはしないというか。
藤村:そうだね。サラリーマンはやめない。それがあるからこそ、自由にやれるところがあるよね。
阿座上:それはすごいことです。我々の場合は必死なので……怪我でもしたら自分で生きていくしかないっていう。
藤村:あなた方は日々の仕事がチャレンジでしょう。我々の場合は、日々の仕事はなんのチャレンジでもないから。
嬉野:別に『どうでしょう』をはじめたのも、チャレンジじゃないもんね。
藤村:チャレンジじゃない。ただただ楽しかった。これで給料をもらえるってことは、これで一生やっていけるってこと? こんな自由はないよね。その時に自由を感じたよ。しかも自分たちの行きたいところにも行けるわけで。でもね、不思議なことに、楽しそうに仕事をしているとヤッカミも出てくるんだよね。アイツらは不真面目だって。
嬉野:そうそう。でもそれはきっと広く社会にあることなんじゃないかな。仕事はやはり大変なもの、と。大変自慢をすることも多いし、大変なことを言ってるほうが可愛がられるところもあるから。それがない。
藤村:テレビ番組なんて特にそう。楽しそうに仕事をしている人ってあまりいないから。「大変大変」ばかりになる。イメージとして、夜中までやって、現場でそのまま寝てる……ってところがテレビの世界にはあったじゃない? でもあれって何が楽しいんだろうって。我々は土日も正月もしっかり休む。海外に行くとなったら喧嘩しながらも楽しくやる。そうすると、真面目にやってるように見えないんですよね。
嬉野:「あんたたちは良いよね」と言われる(笑)。
阿座上:でもそこに結果が出てるということが素晴らしいですよね。
藤村:「やりたくないことをなんでやってるのか」と聞けば「それが仕事なんだよ」と言われる。「それが仕事」って言ってる時点で、う〜んって思っちゃうよね。
嬉野:そう刷り込まれてやってる人が多いもんね。我々もいろいろやってますけど、楽しいことをやって、ノンストレスで好き勝手やってる。社会的にはある意味過激な存在なのかもしれないね。ある意味反社会的な立場……。
一同:(笑)
藤村:しかもこれを30年間もやってて、まだやろうとしてるからね。6年間30分番組を作って、そのあとは不定期で、同じ給料をもらってるわけだから。なんなら上がってる。これはもう反社会的だよね。