『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』最終回放送後インタビュー:古賀葵さん(秋里コノハ役)×阿部敦さん(六田守役)|最後の守のセリフは、もはやプロポーズ!? 収録を終え、おふたりが感じたこととは
最後の守のセリフは、もはやプロポーズ!? 収録を終え、おふたりが感じたこととは
――第13話について語っていきたいのですが、第12話で空から助けに来たのは、エコーたちでした。
阿部:出てきたと思ったら、「あなたのファンです」と言って、コノハに「サインをください」って言ってくるという。
――しかも大ファンらしいですからね。これからコノハが作るゲームにサインを書いていましたね。
阿部:あれ、古賀ちゃんが書いていたよね?
古賀:書きました!! サインとゲームの名前を書いたんですよ。
阿部:確かアフレコ後に、打ち上げに行く前だったかな? そこで書いていて、いいね〜、エモいねって話していた気がする。
――アニメの中に自分の書いた文字が出てくるのは思い出になりますね。それに『わたしの大切なもの』がどんなゲームなのかを詳しく明かさないところもいいなと思いました。ただ、想像力で満ち溢れているゲームだという表現も良くて。
古賀:ヒロインにしたいってコノハちゃんが夢見ていた子が、ヒロインなんですよね。
阿部:きっと奇をてらったようなゲームじゃないんだろうなぁ。王道というか。めちゃめちゃヒットしたかどうかはわからないけど、きっとすごく素敵な作品なんだろうなと思ったし、好きな人はめちゃめちゃ好きな作品だったんでしょうね。
――それによって、秋葉原が元に近い状態に戻るわけですからね。
阿部:最後の世界線も、アキバタワーみたいなものはあるけど、でじこ(デ・ジ・キャラット)もいるっていう。このでじこのために本物の真田アサミさんが来てくださるっていうのも良かったです。
古賀:本当にすごいことですよね!
阿部:でじこだ!って思ったもん(笑)。
スタッフ:ちなみにでじこの絵は『令和のデ・ジ・キャラット』を描いている方に描いていただいています。
阿部:そうなんですね!
古賀:本当にすごい作品だなぁ。
阿部:ちょこちょこ本物が出てくるんですよね。セイバーの声も、川澄綾子さんがやっていたし。
――アニプレックス作品でなければ実現しなかったようなネタですよね(笑)。あと、あったかもしれない世界として、アメコミ風の絵柄が主流になる世界が描かれていましたが、実際日本のアニメを元にした美意識って、そう簡単になくなるのだろうかっていう気持ちは正直あったんです。3Dも2D風に見せる国ですから。
阿部:日本のその感じも、いいガラパゴスだなと思っていて、アメリカとかっていろいろなものを受け入れて、世界の文化を作っている部分があると思うんですが、逆に受け入れすぎたために丸くなっている気もしていて。日本って島国で、そういうのがなくて独自の進化を遂げて、今それが世界でウケていたりする。
海外にお仕事で行く機会が最近は多いんですが、向こうの方の日本の作品に対するリスペクトってすごいんですよ。ちょっと前に行ったところだと、冗談交じりで、向こうのスタッフさんが「日本ってマジで神の国だと思っている」と言っていたんです。そういうコンテンツを生み出せる国だと思っていると聞いて、へ〜ってなったんですよね。
――結構、日本の作品に影響を受けている映画とかもたくさんありますからね。
阿部:日本も改善しなくてはいけないことがたくさんありますが、この文化はこの文化ですごくいいなって思うんです。
――同感です! 第13話の話に戻しますと、タイムリープの醍醐味で、最後にもう一度時代を遡り、歴史を変えに行く展開になりました。
阿部:タイムリープをどう捉えるかは、第10話で、コノハがタイムリープして歴史を変えても、改変された先に戻るという説明をしていたんですが、最後にアルコールソフトのみんなとゲームを作ったあと、マモルは、そのゲームを出すために99年にコノハを送り出すんですよね。
――99年のマモル宛への手紙を託して送り出しましたね。
阿部:そこで「またな、コノハ」って言うんですが、ト書きに“絶対また会えると信じているマモル(いい表情で)”とあるんです。そこで「ちょっと待って」と思ったんです。今送り出したマモルは、『ラスト・ワルツ』をコノハと一緒に作ったところから地続きのマモルだから、もうここで同じ時間を過ごしたコノハとは二度と会えないわけですよ。それもわかったうえでマモルは送り出しているんだろうなと考えたときに、切なすぎるな!と思って。
――そうですね。
阿部:で、99年に戻ったコノハは、そこから別会社を作るとかして、影響を打ち消す新しいゲームを発表するので、最終的に最後に出会うマモルくんとコノハちゃんは同じ時間軸を過ごしてきた2人になるんでしょうけど、今のコノハとマモルではなくなっちゃうと思うんですよ。
――世界線が変わった2023年に、コノハは戻ってくるわけですしね。
古賀:記憶はあるんですかね?
阿部:マモルくんはワンチャンあるのかな? でも、コノハを送り出して新しい世界線を作っちゃうと、もう自分の知っているコノハはいなくなってしまうわけだから、それをわかった上で送り出しているんですよね。だからその前も、「ボクらに熱があれば絶対に忘れない… 試してみるか? お互いのこと、覚えているか?」とか、あえて希望を持たせるようなことを言っているんですよね。でももう会えないじゃないかていうところで、少しカラ元気なんです。だからここは切なかったです。
――でもやっぱりマモルって、常にコノハのことを考えて言ってくれるんですよね。
阿部:だからマモルは、20年間結婚をしなかったと思うんですよね。コノハだけが理由ではないかもしれないですが、大企業の社長でも結婚していなかったわけだから。
古賀:いろんな女子たちが放っておくわけないのに。
――そうなると第11話のやり取りですよね。「ずっと一人で暮らしてるの?」ってコノハが聞くところですけど。
阿部:それですよね!
古賀:ずっと1人だと知って、「マモルくんは期待通り!」みたいなことを言ったあとに、マモルくんが複雑な表情をするんですよね。
阿部:そうそう。
古賀:そこは、どんな気持ちで!って思ってしまって。気づいているのか気づいていないのかわからないけど、もし結婚していたら、もうコノハの知っているマモルくんじゃないじゃないですか。だから、え?どんな気持ちなの!って思いました。
阿部:ト書きでは、「一人かぁ」って言ったときに、“ちょっと嬉しい”って書いてあるんだよね。
古賀:コノハは気づいていないかもしれないけれど、人から言われたら一気に意識しちゃうくらいまでは来ていたと思うんですよね。
阿部:コノハちゃんって恋愛とかもそんなにしてきてないだろうしね(笑)。
古賀:確かに。美少女が一番!と思っていたから(笑)。
阿部:だってまだ19歳だもんね。
古賀:お友達はいたでしょうけど、第1話で働いていた仕事環境を見ても、人付き合いもそこそこで、ちゃんと取り合ってくれない人が多かっただろうし、コノハの話を聞いてくれて、会話をしてくれる人って、アルコールソフトの人だったんですよね。マモルくんにもいろいろな影響を受け合っていたから、やっぱりマモルくんはコノハちゃんにとって、特別な存在なんですよ。好きとかは置いておいたとしても、同じ熱を持ってモノ作りをしてくれた人だから、その特別な人に特別な人ができてたら……っていうモヤ〜っとしたものはあったのかなって思います。
――第10話と第11話あたりは、実際この2人はどうなの?というところに注目して見てしまいました。
阿部:第10話からは登場人物も少なくなるので、2人の関係を掘り下げることができたなって思いましたね。
――そんなやり取りをした2人とは違う世界線なのかもしれないですが、第13話のラストはいかがでしたか?
古賀:もう、めちゃくちゃ良かったですよ! あれは!!
阿部:あそここそ、ただのプロポーズでしたよね。第6話のラストも告白っぽかったですが、これは完全にプロポーズだなって思いました。
古賀:PCに「WELCOME BACK KONOHA」って書いてあって、そこから走り出すところからもう好きでした! で、屋上で、あ〜マモルくんがいる!!って思ってからの、「とことん待たせやがって」ですから(笑)。
阿部:ここで「さぁ、ゲームを作るぞ」って言ってるのに、最後にもう一度「一緒に、ゲーム、作らないか?」って言うんですよね。こっちのセリフは、もうプロポーズだと思っています。最終話のアフレコでテストが終わったあとに、「これ、プロポーズだよね?」と言ったら、福島潤さんが「お幸せに!」って(笑)。
古賀:あはははは(笑)。
――この2人の関係が曖昧なまま終わっても別に不思議じゃないんですが、ちゃんと2人のドラマも着地させてくれて、見ていて良かったなぁって思いました。では、『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』を見て、この連載を追ってくれた視聴者へ、お二人からメッセージをお願いします。
阿部:僕的に、演じる年齢の幅とかもそうですが、役者としても新たなものを求められた作品でした。この頃の秋葉原もギリギリ知っている世代なのですが、その懐かしさ、ネタっぽさはありつつ、それだけではない、そこにいる、モノを作る人たちの喜びと苦悩と楽しさ……そういったものをない交ぜにして、プラスSF要素があったので、どの世代の方が見ても楽しめる、全く死角がない作品だったのではないかなって、個人的には思っています。
各話の終わりで盛り上げてくれて、特に最終話は何が起こるかまったくわからない中で見ていただいたと思うので、僕的には一気見をおすすめしたいです。一度流れを知ったあと、もう一回一気見をしていただいたら、たぶん違った感想が出てくるんじゃないかなと思います。だから何度でも楽しんでください!
古賀:あっという間でした。すごく走り抜けた感があります。自分にとっては、90年代のシーンがすごく新鮮で。その時代のアキバに行ったことはないし、美少女ゲームというものもやったことがなかったので、いい刺激をいっぱいもらえたなと思います。
何より、好きなものに対する熱意、想いっていうのはどの時代にも通ずるものがあって、たとえ生きた時代が違っても、その共通の想いがあることが、いいなと思いました。通じ合えるものがある人がいるというのはすごく素敵なことだと思います。
第8話で出てきたキラキラとした想像力という人間が持っている力は、きっと機械では出せないものだし、生きているって素晴らしいなって改めて思える作品でした。なので、皆さん、生きているうちに好きなことをたくさん作って、やりたいことはいっぱいやってしまってください。
キャスト陣も先輩と後輩がいて、真ん中の世代もいて、この作品にすごくぴったりのバランスで組まれていたんですが、本当に世代を越えて、たくさんの方に楽しんでいただけたらと思います。
――キャストの話が出たので、最後にもう一問よろしいですか? 時をかけてゲームを作ったコノハとマモルを演じてきたお互いに、どんな言葉を贈りたいですか?
古賀:お、おそれ多い……。
阿部:僕はもう最初から言っているんですが、普通にめちゃくちゃうまいなと思っていたんです。我々の3倍くらいあるセリフを倍速でしゃべっているだけでもすごいのに、そこにしっかりメリハリも付けているんですよね。マモルくんとの会話も、最初はちょっと齟齬がある感じだったけど、第10話あたりからは、ほぼほぼ2人の会話になり、掛け合いがかなりあったんです。そこを演じているのがやっぱり楽しくて。アフレコが終わったあとに「大変だったけど、楽しかったね」って言った気がするんですが、一緒にやれて本当に良かったです。
古賀:ありがとうございます。嬉しいです。
阿部:いい刺激をもらいました。
古賀:ありがたい言葉をいただいて本当に恐縮です。私としては、阿部さんが出ている作品もたくさん見ていたので、隣でお芝居させていただけたことが、本当に本当にとても財産になりました。
コノハちゃんは前半は未来人だし、わ――って感じだったけど、結局マモルくんが一番理解してくれる人だったんですよね。後半、コノハちゃんの気持ちがしっちゃかめっちゃかになっているときも、マモルくんが支えてくれたのがすごく心強くて! 阿部さんが演じるマモルくんのセリフが、感情を引き上げてくれたんです。第6話のラストも、後半もそうでした。それはマモルくんを阿部さんが演じてくださったからだと思います。
だから、ものすごく助けていただいたし、引っ張っていただいた気持ちが強いです。アフレコで私が直しのメモが追いつかなかったとき、ここの何カット目と何カット目がヌキで録るところだよって助けてくださったのも、ものすごくありがたかったです! それをさらっとやってくださるところがカッコいいし、私もこんな先輩になりたいなと思いました。
阿部:あははは(笑)。とんでもないとんでもない。でも山根綺ちゃん以外、みんな歳上の現場だったもんね。
古賀:そうですね。でも皆さん本当に優しくて、すごく良い現場でした。先輩ばかりに囲まれる現場というのも、なかなかないので、本当にいい経験になりました。
――たくさん語っていただき、ありがとうございます!
『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』作品情報
あらすじ
ある日、ひょんなことから過去の名作美少女ゲームをゲームショップの店主から譲ってもらうことに。美少女ゲーム黄金時代に思いを馳せ、『同級生』のパッケージを開くと突如まばゆい光に包まれ、気づくとコノハは過去にタイムリープをしていた!
行きついた先は1992年!世は美少女ゲーム黎明期!アルコールソフトという会社で働くことになったコノハは、美少女を想い、美少女を描き、美少女を創りあげていけるのか!?
圧倒的な美少女への愛でお送りする、ひとりの少女の物語――『じゃ、始めるね!』
キャスト
(C)若木民喜/みつみ美里・甘露樹(アクアプラス)/16bitセンセーションAL PROJECT