アニメ映画『傷物語 -こよみヴァンプ-』尾石達也監督×石川達也制作Pインタビュー|「役者さんたちは二度とできない演技をしてくれている」
2016年から2017年にかけて展開された映画『傷物語』3部作。それらをひとつの作品として再構成したアニメ映画『傷物語 -こよみヴァンプ-』が、2024年1月12日(金)に公開となりました。
本作は、西尾維新先生の小説を原作に2009年の『化物語』からスタートしたアニメ『〈物語〉シリーズ』のひとつで、主人公・阿良々木暦(CV:神谷浩史)が怪異と関わる発端となったエピソードを描いています。
アニメイトタイムズでは、その公開を前に尾石達也監督と石川達也制作プロデューサーへのインタビューを実施しました。
3部作当時の苦労や今回の『傷物語 -こよみヴァンプ-』に際して行われた再アフレコの裏話など、気になる話題が目白押しとなっています。シリーズを追いかけてきた方のみならず、これからアニメ『〈物語〉シリーズ』に触れる方もぜひ鑑賞前にチェックしてくださいね!
『傷物語』は17年間生きてきた阿良々木暦の価値観がひっくり返るお話
――まずは、おふたりがアニメ『〈物語〉シリーズ』に関わることになったきっかけをお教えください。
尾石達也監督(以下、尾石):2008年頃にシャフトでアニメ化するという話になり、シリーズディレクターをやってみないかと相談があったことがきっかけです。その時に初めて西尾さんの『化物語』を知りました。
――『化物語』当時はどのような苦労がありましたか。
尾石:やっぱり膨大な台詞量に驚きましたが、読んでみたら凄く面白かった。それまでは漫画原作ばかりで文字だけの媒体をアニメにするのは初挑戦だったので、西尾さんの会話劇をアニメにするのはやり甲斐がありました。
――石川さんはいかがでしょうか?
石川達也制作プロデューサー(以下、石川):僕は『傷物語』がアニメ『〈物語〉シリーズ』での最初の仕事なので、2016年から『〈物語〉シリーズ』に関わっています。本作では制作プロデューサーを担当していますが、3部作当時はアシスタントプロデューサーをしていました。
アニメ『〈物語〉シリーズ』は、弊社の岩上敦宏がシャフトさんと立ち上げた企画です。そんな岩上が『化物語』のヒットからどんどん忙しくなっていったので、制作現場と二人三脚で走れる人間が必要になったことが自分が関わるきっかけだったと思います。
僕たちの仕事は、シャフトさんや尾石さんたちとアニメ『〈物語〉シリーズ』を制作する中で生まれた、「こういう風に作りたい」とか「こういう風に見せたい」というファンのみなさんへの届け方をプランニングすることが中心です。
後は、音楽周りなど映像以外でフィルムを構成する要素かなと。シリーズの音楽を手がける神前暁さんに、どんな曲を発注するか段取りを決めたりしています。
――2024年で『化物語』から15年目になるかと思います。この間にアニメ『〈物語〉シリーズ』に関わって印象に残った出来事は?
石川:僕は「staple stable」「恋愛サーキュレー ション」といった楽曲たちをまとめたライブイベント「〈物語〉フェス」を2019年に開催できたことですね。自分が真ん中に立ってやらせてもらったので、死ぬほど辛かったことが印象に残っています。ですが、僕は『〈物語〉シリーズ』を見て業界に入ったといっても過言ではないので、今こうやって作品に携わらせていただけて嬉しいです。
尾石:『化物語』当時は本当に時間がなかったので、毎日机の下に入って寝て、起きたら作業をしての繰り返しでした。ただそんな辛かった日々も、月日が過ぎると楽しかったなっていう気持ちになってしまうんですよね。時間がないからこそ100%自分の色に染め上げてやるという決意も達成できたと思っていますし、そうやって追い詰められるほどに自分の中の回路が開いていく感覚があったことも覚えています。
とても印象に残っているのが、原作からある国道沿いのミスタードーナツの描写です。それをアメリカのデスヴァレーとかグランドキャニオンのような荒野の絵にしたところ、「あれは誰が考えたの」とオンエアを見た新房昭之さんが驚いてくれました。自分としてはナチュラルな仕事をしたつもりだったのですが、今から思うとハイになっていたのだろうなと。
――アニメ『化物語』における尾石監督のお仕事というと、オープニングの「staple stable」「sugar sweet nightmare」があると思います。ああいった映像を制作する上でのこだわりも伺わせてください。
石川:「sugar sweet nightmare」の映像は『傷物語』と通ずるところがあると思います。
尾石:モチーフをそのまま使っていたりしますしね。
僕はその時の自分の基準で、格好いいものを作りたいと考えています。だから『化物語』当時の基準があのスタイルで、それを基に一生懸命作ったのだと思います。この仕事はサービス業だと思っているので、視聴者の方に驚いてほしい、喜んでほしいという想いもありました。振り返るとやっぱり思うことはあるのですが、過去に戻ってやり直したいと考えたことはありません。ベストを尽くしていたからこそ、自分としても気に入っています。
――ありがとうございます。それでは映画『傷物語』についても伺わせてください。3部作の制作時にはどんな苦労がありましたか?
尾石:『傷物語』は自分としてもかなり重たい内容だと感じていたので、絵コンテの作業に入るまでかなり悩みました。17年間生きてきた阿良々木暦くんのそれまでの価値観がひっくり返るお話なので、その感覚を掴むまでにとにかく時間がかかったんです。
後は色々な人をお待たせしているプレッシャーですね。今だから話せているのですが、当時は本当に色々な方にご迷惑をおかけしてしまいました。それでも作り切らせてもらえたのは本当にありがたかったです。ひとりで絵コンテの作業している時は辛かったけれど、スタッフが集まって制作現場が動き出してからは本当に楽しかったことを覚えています。
西尾さんには本当に申し訳ない気持ちがあったのですが、『鉄血篇』の完成試写で久々にお会いした時に、西尾さんから右手を差し出して握手してくださりかなり気持ちが救われました。本当に辛抱強く待っていてくださったと思います。今回の『傷物語 -こよみヴァンプ-』も色々ありましたが、良かったと思ってもらえると嬉しいです。
――『〈物語〉シリーズ』は会話劇が魅力のひとつです。『傷物語』ではキャラクターたちの掛け合いにどんなこだわりを持っていたのでしょうか?
尾石:『化物語』の会話劇を作り上げる中で、映画とアニメはメディアが違うと感じました。『〈物語〉シリーズ』の特徴的なところに阿良々木暦くんのモノローグがありますが、『傷物語』では暗闇の中で2時間スクリーンと向き合うことになるので、映画としてのアプローチをしたかった。また、この作品をご覧になるみなさんに暦と同じ体験をしてほしかったので、あえてモノローグを切ることで彼の行動を追体験できるようなものも目指していました。