冬アニメ『僕の心のヤバイやつ』第2期 連載インタビュー第4回:小林 ちひろ役・朝井彩加さん×関根 萌子役・潘めぐみさん×吉田 芹那役・種﨑敦美さん|山田と市川のお芝居の時は良い緊張感があります。守りたくなる気持ちになりますね。
アフレコ現場は「教室のような雰囲気」
――13話〜16話までを振り返ってみるとどのようなご印象がありますか?
潘:12話までの間に、萌子たちと市川の距離感が近づいたような気がしていたんです。でも冬休みを挟んだら、またちょっと(前の関係に)戻ってるなと思って(笑)。でも学生時代ってそうだったよな……!と。萌子たち的には、山田を思っての助太刀的な感じで「ちょっとイッチ!」って声をかけてるつもりなんですけど、市川はビクッとしてしまう。せっかく近づいた距離感がまたイチに戻ってしまったなとも思ったんですけど……そのあと、山田のことを市川から知っていくたびに、距離は近くなっていくんですけど、近くなったり、離れたり、戻ったりという、距離感を感じました。
――学生ならではなのかもしれませんね。
潘:そうかもしれません。大人になってから学生時代の友だちに会うとあまり時間を感じないじゃないですか。でも当時の冬休みって結構長くて、一度築いた関係性もリセットされてしまうんですよね。「どういう距離感だったか忘れてしまった!」というか。それもすごくリアルで、演じる身になって改めて気づいた距離感でした。
朝井:第2期のアフレコでは、(コロナ禍による)規制が緩和されたことで、一緒に録れる人数が少し増えたんです。第1期の時はマックス4人まで一緒に録っていたんですけど、最近は足立チームとも一緒に録れていて。だからより流れを掴むことができています。みんなで録れていることもあって、録り終わったあとにみんなからも感想がぽろっと出てくることもあって。「めっちゃええやん」「ヒューヒュー」とか(笑)。本当に教室のような感じです。
潘:今の話を聞いてすごく感じたのが……第1期の時もかなりの緊張感ではあったんです。でも8人で囲う2人(市川・山田)は、人数が多いからこその緊張感があって。
朝井:うんうん!
潘:ふたりが演じているときは「唾を飲み込む音すら入れてたまるか……!」「この2人の空気を守ってみせる!」って(笑)。良い緊張感があります。守りたくなる気持ちになりますね。
朝井:それと、第2期に入ってから山田と市川の距離がより近づくことによって、こっち(女子チーム)も市川との距離が物理的に近づいていって。小林の……純粋な棘といいますか(笑)。
潘:(笑)
朝井:ぽろっと出す言葉が市川をぐさっと刺す。
――小林は無邪気ですよね(笑)。そこに悪気はないというか。
朝井:そう、ある意味無邪気! でもその言葉が市川にとってはナイフとなってしまう。「コラッ!」と思っています(笑)。「本当にごめん……」と。
潘:チョコ作りの時もね……。
朝井:本当にひとりだけ空気が読めないというか、察せないというか。でも、そこが小林の可愛いところなんですよね。女子チーム3人の心の内が分かる部分もあって。そこも良いなと……語彙力がなくなってきた(笑)。
――種﨑さんはどうですか?
種﨑:二人の会話の勢いがすごくて聞きいっていました(笑)でも話を聞きながら「私も一緒だなぁ」と思っていました。吉田はそんなにセリフも多くないので、最初は抜き録りも多かったんです。でも13話以降はみんなで録れることも増えていって。セリフの数自体はそんなに変わってないのに、前よりも「一緒にいる感」があるというか。みんなの空気感がより分かるようになりました。で、それによって気づいたのが……「小林ヤバイ」。
一同:(笑)
朝井:小林、ヤバイやつ説?
種﨑:はい。
朝井:「はい」(笑)。
種﨑:さっきも言ってましたけど、空気の読めなさが本当にかわいいなと思って。鈍感であることがこんなにも愛しく思える子いないよな、僕ヤバという作品に無くてはならない子だな…という発見がありました。というか第1期のとき以上によりそう感じるようになりました。
潘:合コンの数合わせの話とかね……本当にね(笑)。「今するなよ!」っていうこともある。逆に言うと、小林の純粋な棘がないと、進まないふたりでもあるような気がするんですよね。
朝井:そこに救われているエピソードもありましたし。
潘:あったあった。市川もその刺さったものに対して、進まなきゃいけないわけだから。勇気というか、きっかけになるんじゃないかなと。それこそバレンタインでの芹那の「よくないと思うなあ」とか、良いなって。なんだかんだ察してるじゃないですか(笑)。
朝井:(自分を指して)ここ以外は…(笑)
潘:そうね(笑)。
――芹那は鋭いイメージがあります。
種﨑:いちばん察してると思います。空気を読めるというか。
潘:3人ともキャラクターは違いますけど、山田にあのままでいてほしいって思いは共通している気がします。
朝井:親衛隊っぽいところがあるよね(笑)。
潘:それこそ、市川が「友の壁」というようなことを言ってましたけど、そんな感じするなって。その中でも萌子は、ちょっと空気を読まずに楽しんでいるところがあって。いいヤツなんですけどね(笑)。
「出番がなくても毎回来たい」と思えるふたりのお芝居
――改めて第16話のお話の印象や、アフレコの思い出についても教えてください。
潘:バレンタインの思い出が色濃くて。うちらなに話してたっけね(笑)。足立もちょっとやきもきしてて。そこで足立が「俺は関根のことをよく知らないし、何をあげたら良いか分からない」って感じになっているのが、真摯でかわいいなって思っていました。
朝井:足立はいい男なんですよね……! 「適当にはできない」っていう。
潘:そうそう! カッコいい! 何をお返ししたら良いかわからないから足立はナンパイに聞きにいったのに、ナンパイを超えた回答をしてて。本当に良いやつ。
朝井:私が記憶に残っているのは、最後の(山田がナンパイに言う)「あ、さよなら」のシーン。何回か録ってたんです。信長さんと一緒に録っていたんですけど、「何回もさよならと言われる俺の気持ち……」と言ってて。
潘:秀逸なディレクションだなぁと思ったのが……(羊宮さんに対して)「ナンパイに向けて言わないで下さい。興味のない、無機物なものに対して言うつもりで」って(笑)。
朝井:そうなんです! で、そのディレクションが信長さんに刺さるっていうのが面白くて(笑)。でも信長さんもナンパイマインドと似ているのか「まあ、いいけどね」と、サラッとした感じで言ってて「ナンパイやなぁ!」って感じていました(笑)。
潘:良い「さよなら」でした。
朝井:良かったです。完成が楽しみ! アフレコの時点ではまだ想像がつかないんですよね。アニメーションになるともっともっとエモくなるので、早く見たいです。
――種﨑さんがお話を聞きながらうなずかれていましたが……。
種﨑:私はもともと16話にはセリフはなくて。でもアドリブをわざわざ用意してくださって出番はあって、でもみんなと一緒には録れていないんです。だから放送が楽しみだなぁと思っていました。でもその信長さんの話は、私が一緒にアフレコした時も言われていたのでナンパイは本当にいいキャラクターだなぁと改めて噛み締めてました……(笑)。その後、久しぶりに一緒にみんなで録れたときに私思ったことがあって。スタジオ内で思わず隣にいた朝井さんに耳打ちしてしまったんですけど……「出番がなくても、私毎回来たいんだけど」と。
遠藤プロデューサー:そう言ってもらえると……うれしすぎます。
種﨑:それくらい、堀江さんと羊宮さんのお芝居が毎話素晴らしすぎて。セリフを読んでいるというよりも「(市川と山田が)もうそこにいるじゃん! 二人がいるじゃん!」という。そんな二人の空気とお芝居を汲んでディレクションも「ボールド気にしなくていいんで。羊宮さんの間で良いので」と言ってくださるという……この空間の全てが最高!って。
朝井:(笑)。タイミングは気にしなくていいから自由にやっていいよ、って言われるって役者としてはすごくうれしいことですよね。それを言ってくださる現場もすごいし。
種﨑:そういっていただける信頼関係はもちろん、その委ねてもらえることをプレッシャーに感じることもなく羊宮さんが「その瞬間の山田」を感じるままに出してくれるから……もう全て!全部良い!ありがとう!って。
一同:(拍手)
朝井:確かに、『僕ヤバ』の感想って「ありがとう」に尽きるんですよね。
潘:うんうん。
――素晴らしい。種﨑さんが「全話アフレコに来たい!」と思ったのは、いつぐらいの出来事だったんですか?
種﨑:二人のお芝居を目の当たりにする度に毎回思うんですけど、改めてそれをより思ったのは18話です。どんなお話かはまだ言えないんですけども、本当に素晴らしくて早く放送で見たいです。
3人の中の『心のヤバイやつ』
――最後に……この連載インタビューでは自分の心のヤバイ部分をうかがうのが恒例となっていまして、ぜひ皆さんにもお答えいただけたらなと。
潘:私、最近ゲーム廃人の素養があることが分かりました。ゲームをやっていた全盛期って小学生のころだったんですよ。スーファミ、ロクヨン、ゲームボーイ、ワンダースワン、プレステ……っていう。そのときに「人生のゲームはすべて消化した! ふぅ!」って子供ながらも訳のわからない満足感があって、、大学3年生まではまったくゲームに触れてこなくて。大学時代も友だちに進められたゲームを2本やりきっただけでハマるということはなくて……でも最近RPGをやりはじめてから廃人どころか、灰になるって思って(笑)。
「ゲームやりたいから宿題頑張ろう!」みたいな子ども時代と同じ感覚です。仕事があるからなんとか人の形を保っているけど、大きな休みをもらえたら、人じゃなくなってしまうなと思うくらい(笑)。そんな状態なのに、今度はMMORPGに興味を持ち始めてしまって……多分ヤバイと思います。人の形を保てるように、事務所に管理してもらわないとダメだなと。でもこの歳でハマるともう一生抜け出せないなと思っています。
――朝井さんも種﨑さんも長考されていますが……。
種﨑:今話を聞いていて、そこまで熱中することないなって。なんだろうなぁ……嗅ぎたいわけじゃないのに何故かクサイものに惹かれてしまう…とかでも良いですか。
朝井:えっ、それは事実なんですか?
種﨑:はい。たまに、たまにですけど。香ばしいかほりをマスク越しでもキャッチしてしまう時があって嗅ぎたいわけではないのに、確認したくなってしまってわざわざマスクを外して嗅いでしまう(笑)。自分だけ……?
――私は猫の肉球を嗅ぎたくなってしまいます。
種﨑:私はダイレクトにお尻を嗅いじゃう時があります(笑)。「ああ、愛しい……! お前の臭い〜!」ってなります。
朝井:いいですね!!! ああ、私はなんだろうなあ……。昔は片付けができない人間だったんですけど、スイッチが入ると今まで捨てられなかったものも断捨離することができるんですよ。
潘:断捨離のゾーンがあるんだね。
朝井:いきなり断捨離したくなります。今までそんなに気を使っていなかったのに……QOLっていうんですか。ズボラ人間なので、より自分が快適に過ごすためにはどうすれば良いのかっていう、ズボラのための片付けのような感じなんですけど。そのおかげで、ヤバイ部屋から脱することができました(笑)。
――(笑)多岐にわたるお話をありがとうございました!
[文・逆井マリ]
作品情報
あらすじ
美少女らしからぬ行動を繰り出す山田に、市川は目を離せずにいた。
そんな市川の恋心を知ってか知らずか、山田は天真爛漫に近づいて来る!!
全く違う世界にいたはずの2人。しかしその距離は、徐々に近づいていき……。
キャスト
(C)桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会