冬アニメ『俺だけレベルアップな件』連載インタビュー:アニメーションプロデューサー 金子敦史|出会いや別れ、強敵との戦闘を経て旬がどこに向かうのかを見届けてください
アニメ各話の見どころや裏話を紹介
――1~7話までのお話でそれぞれ1番注目して欲しいシーンと、スタッフとのやり取りで印象に残っているエピソードをお聞かせください。
・1話
アバンの架南島レイドの過去回想で多くの原作ファンを良い意味で裏切れたと思います。
劇中の白川と颯樹のコンビネーションはまさにスタジオで徳田大貴さん(絵コンテ・作画監督)と鳥居貴史さん(キーアニメーター)が劇中さながらの作画コンビネーションを発揮してくれました。丸山大勝さん(キーアニメーター)が担当された雫の初登場シーンも美麗かつ圧倒的な存在感で描いてもらえて感謝です。
須藤智子さん(作画監督)・古住千秋さん(作画監督)・徳田さんの総作監チームに「作画監督」として走り切っていただけたのも非常に嬉しかったですね。いろんな意味でとても贅沢な話数になったので胸を張って観てもらえる話数になっていると思います。
・2話
とにかく人間の痛覚に訴えかけようと逃げずに挑んだ回です。コンテ演出の堀内勇冶さんに難しいシナリオをまさに「逃げずに」担当してもらいました。
特にE級旬のラストは作画の白石創太郎さん(プロップデザイン)をはじめ原作コミック以上に徹底的に痛々しい描写にした結果、瀕死の彼がそれでもまだ「生きたい」と強く感じさせる映像になっているのではないでしょうか。「もし人生に2度目があったら?」と考えさせられる話数です。
・3話
社員演出の菊池貴行さんの計算されたコンテと演出が冴え渡っている話数です。アニメオリジナルの道門の初登場シーンは少ない描写ながら強く印象に残るものにしてくれています。
またハンターとしてリスタートした旬の周りに起きている謎を丁寧に見せつつ、「まだ超人的でない」旬のゴブリン戦を中川 肇さん(キーアニメーター)が敢えて弱々しい動きで恐ろしい尺で描いてくれました。最後の方はゴブリンを描き過ぎてご本人も参っていたらしいです(笑)。
・4話
参加アニメーターはもちろん、何より菅野芳弘さん(アクションディレクター)の「アニメ力」がコンテから爆発した話数です。
原作コミックの戦闘描写を更にグレードアップするため、コンテの段階で地下鉄というロケーションを巧みに使って旬が必死に足掻きながら立ち上がるまでの過程を、非常にカタルシスを感じさせる見せ方で表現できたと思います。
アイデアもさることながら菅野さんの絵を描くスピードは超人的で、ここまで手が速いアニメーターに自分は会った事がありません(笑)。個人的な趣味ですがラストの観月の旬を見つめる眼差しも非常に魅力的です。
・5話
新たなキャラクターたちが登場し新章に突入したというテイストで、旬の見た目もさることながらガラッと雰囲気が変わる様な方向性を狙った話数です。
事実上この話数から旬は際限なくレベルアップしている設定なので、ちょっとした戦闘描写でも力加減の難しさを感じた話数ですね。とにかく団体戦の作画は大変なので抑える所は抑えつつ……この話数はTVシリーズのコンテ演出は初の早瀬真紀子さんが頑張ってくれました。
ラストの巨大毒グモは堀 光明さん(作画監督)の作画が非常に気味の悪い存在感を放って動き出していたのが印象的です。
・6話
間違いなく旬のターニングポイントになった話数です。システムの命令とは言え非常に肯定しづらい選択を迫られる旬をコンテは菅野さんと共同で佐久間貴史さん(絵コンテ・演出)が演出で担当してくれました。これまでの話数にない挿入歌も非常に印象に残っています。
本話数は若手原画マンの参加が多かったのですが、久し振りの登場となった雫を社員の橋元快斗くん(キーアニメーター)が少ないカット数ながら頑張って担当してくれました。いろんな魅せ場が有りますが本話数はラストシーンが素晴らしいです。
曇天の下、雨が降り出しつつも綺麗な夕陽が差し込む空を見上げながら葵を想う旬の後ろ姿に皆さまは何を感じたでしょうか?
・7話
新たな変化が起きた旬を葵が温かく迎える冒頭のシーンやギルド参加の話を健気に持ちかける諸菱と、Aパートは作中の若いキャラクターが印象的な話数です。母を目覚めさせる手掛かりも手にしつつ……Bパートはとにかく暴力的なまでに大変な戦闘で前半と後半で全然違うアニメになっていますね(笑)。この話数も2話を担当した堀内さんが鬼のローテ演出で頑張ってくれました。
6話までの戦闘を経て無敵にも感じるような強さを持った旬が、ケルベロス戦で瀕死を迎えるという意外性と言うか裏切りを良い意味で感じてもらえたのではないでしょうか。
出会いや別れ、強敵との戦闘を経て旬がどこに向かうのかを見届けてください
――思い入れのあるキャラクターを教えてください。
金子:E級の旬と観月絵里が個人的に好きです。特に観月はB級ヒーラーとしての能力を持ちながらも精神的な弱さを内包していて非常に人間らしい。自分はすべてを手にしていたり、完成され過ぎているようなキャラクターに疑問を感じやすく……情けなくも克服したいと思っているようなコンプレックスを抱えた人間に魅力を感じるので、この2人がお気に入りです。
――8話以降のアニメの見どころや注目ポイントのご紹介をお願いします。
金子:更に熱くなるアクション描写はもちろん、その先に待ち構えている出会いや別れ、強敵との戦闘を経ての旬の成長がどこに向かうのかを是非とも追っていただきたいです。ここでは語れなかった7話までの各話スタッフの熱量や思いを改めて観直していただきつつ、更に楽しんでいただけたら幸いです!
作品情報
あらすじ
ハンターはその力を使い、ゲート内のダンジョンを攻略し対価を得ることを生業としているが、強者揃いのハンター達の中で、「水篠 旬」は人類最弱兵器と呼ばれる低ランクハンターとして生活していた。
ある日、低ランクダンジョンに隠された高ランクの二重ダンジョンに遭遇し、瀕死の重傷を負った旬の目前に謎のクエストウィンドウが現れる。
死の間際、クエストを受けると決断した旬は、自分だけが「レベルアップ」するようになり—。
キャスト
(C)Solo Leveling Animation Partners