春アニメ『夜のクラゲは泳げない』連載第1回:監督 竹下良平× 脚本 屋久ユウキ|強い想いをぶつけ合って創り上げた第1話、一番意識していた部分は「運命」
光の演出、キャラクターの芝居、こだわりが詰まったエンタメ
――過去回想の入れ方も印象的で、本人がいる状態で、子供の頃を描写していく見せ方というのは新しさも感じました。しかもそれがOPのアニメーションにもつながっていきますし。
竹下:ありがとうございます。第1話はとにかく会話劇が多く、映像として物足りなく感じるかもしれないと思っていたんですね。だから回想シーンも、面白い回想への入り方を模索して、映像の幅を広げたいと考えていました。
屋久:あの回想の入り方には、僕もすごく助けられたという気持ちがあって。やはり第1話は説明しなければいけないことが多いから、キャラクターの説明として、この子はこういう悩みを持っているんだよ、というところを理解してもらわないといけないんです。しかもオリジナルアニメなので、一話の終わりでしっかりヤマを作りたいとなると、序盤にキャラの説明と悩みの説明を終わらせないといけないので、セリフが多くなりがちなんですよね。
その中で、ああやってスッとエンタメ性のある見せ方をしてくれると、ただの会話に映像としての面白さが加わって、グッと見やすくなるんです。だからすごく大事なアイデアだなと思いました。
竹下:それも、まひると花音が出会うまで、ですけどね。2人が出会ってしまえば、屋久先生の楽しいキャラ同士の掛け合いで物語が転がっていくので。だから出会うまでのシーンは、そこへ上手く繋げるまで視聴者の興味を保ち続けるようにと、とても悩みましたね。
――また、夜の印象が強い作品ですが、ハロウィンの上空から見たシーンなど、すごく映画っぽくて、色彩設計や撮影の力を感じました。夜の描き方に関してはいかがですか?
竹下:ヨルクラの1話では、ライティングが演出に沿うように計算しています。2人がどこにいて、立ち位置がどうなっていれば思い通りの光の当たり方になるのかコンテ段階から決め込んでいます。実際に渋谷に行ってロケハンをした上で、シーンを構築したりしているんです。
――だからあんなに光の入り方が印象的なのですね。
竹下:ライティングが演出意図に添っていないと、ただチカチカした派手な映像になるだけだと思うので、光源が通常のシーンと、ライティングを見せるシーンで差別化して演出しています。
――歩道橋のシーンなどはまさにそうですね。その意図をまたアニメーションに落とし込めるのが素晴らしいです。
竹下:撮影監督の桒野貴文さんも、光の演出がすごく得意な方なんです。美術監督の金子さん達が上げるそのままでも美しいライティングの背景を上手く活かして、完成画面に導いて下さいました。
屋久:本当に映画みたいでしたよね。
竹下:メインアニメーターの3人(太田慎之介、Saurabh Singh、中尾和麻)が、第1話を合わせて200カット以上担当してくれているんですよ。映画のようにレイアウトや芝居が決まっているのは彼らの誠実な仕事と、そのレイアウトに素晴らしい修正を入れて下さった作監の谷口さん、中島さん達の功績です。
――作画で言うと、まひるがベッドで起き上がる動きとかもすごく印象的でした。
屋久:わかります! (渡瀬)キウイとまひるの電話シーンですよね。ホントにすごかった! ちょっと左手でグッてする芝居。ただ見せるだけだったらなくてもいいのに、あんな風にこだわって描いてくれるのはすごいです。
竹下:そこも太田さんが描いてくれてます。
屋久:太田さんかぁ。あそこは僕もすごく印象に残っています。
――第1話は何度も観たくなるし、何度観ても飽きない、新たな発見があるエピソードでした。ただ、あのクラゲの壁画は、決して変ではないですよね(笑)。
屋久:実際、もっと変にしたほうがいいんじゃないか、みたいな話もあったんですよ(笑)。
竹下:もちろん、別に僕も変ではなく美しい絵だと思っています。難しいですよね、「変」と呼ばれる絵を描くのは。
――子供の感性で、たまたま変に見えちゃっただけかもしれない。
屋久:確かに。しかも同時に、花音が惹かれる絵でなければいけないですからね。難しい。
――まひるは、子供の頃の友達の何気ないひと言に傷ついた子でしたが、花音はネットの炎上と、SNS時代だからこそのテーマも見え隠れしました。このあたりは今だからこその話になりますね。
屋久:今ってSNSがあるから、昔と違って世界全体が大きな教室みたいになっているように感じてるんです。SNSで顔とかもアップするし、生活も映すから、そこで格差みたいなものが必要以上に可視化されて、それに苦しんでいる人が多いじゃないですか。
以前はスクールカーストものが若者に刺さって、その時代を反映したテーマとして、ラノベやアニメでもそういった作品が増えましたけど、今はインターネットを通じた世界全体を『学校』としたときのスクールカーストみたいになっていると思っていて。この作品は、そこに直面した今の人の悩みを描いている部分があるのかなって思います。
――それでは最後に、第2話以降の見どころをお願いします。
竹下:ここからもっとたくさんのキャラが出てきて、世界が広がって派手な要素が増えていきます。自分としては、第1話だけを他の話数と雰囲気が違う映像に仕上げてるつもりで。だから、第2話以降のエンタメ要素がさらに強くなって、キャラの掘り下げも深くなっていく、そんなヨルクラを楽しみにしていて下さい。
屋久:僕も似た印象で、第2話以降はポップ色が強くなるし、話が進むごとにどんどんと濃いキャラが出てくるので、そこも楽しみにしてもらえたらなと思います。
[文・塚越淳一]
TVアニメ「夜のクラゲは泳げない」
2024年4月6日より放送中!
放送情報
TOKYO MX, BS11:毎週土曜25:00~
関西テレビ:毎週日曜25:59~
AT-X:毎週日曜22:30~
HTB北海道テレビ:毎週月曜26:25~
※放送日時は編成の都合等により変更となる場合もございます。予めご了承下さい。
配信情報
毎週土曜25時より
dアニメストア、DMM TV、U-NEXT、アニメ放題にて最新話地上波同時・先行配信
※U-NEXTは非会員も常時第一話無料&最新話1週間無料
毎週金曜24時より最新話順次配信
NETFLIX、ABEMA、Amazon Prime Video、AnimeFesta、auスマートパスプレミアム、バンダイチャンネル、FOD、HAPPY!動画、Hulu、J:COM STREAM、Lemino、milplus、ムービーフルplus、ニコニコチャンネル、ニコニコ生放送、TELASA、YouTube(有料配信)、クランクイン!ビデオ、ふらっと動画(ネットカフェ)
Introduction
“私”も誰かみたいに輝きたい。
明日話すべき話題も、今週買うべき洋服も、
全部が教えてくれる。
何者かになってみたい——そんな願いを持つ間もないほどこの世界は忙しい。
活動休止中のイラストレーター“海月ヨル”
歌で見返したい元・アイドル“橘ののか”
自称・最強Vtuber“竜ヶ崎ノクス”
推しを支えたい謎の作曲家“木村ちゃん”
世界から少しだけはみ出した少女たちは匿名アーティスト“JELEE”を結成する。
自分じゃない“私たち”なら——輝けるかもしれない。
STAFF
原作:JELEE
監督:竹下良平
シリーズ構成・脚本:屋久ユウキ
キャラクター原案:popman3580
キャラクターデザイン:谷口淳一郎
サブキャラクターデザイン:中島千明/朱里
衣装デザイン:葛原詩乃/長澤翔子
プロップデザイン:服部未夢
総作画監督:谷口淳一郎/豊田暁子/鈴木明日香
メインアニメーター:太田慎之介/Saurabh Singh/中尾和麻
劇中イラスト原案:はむねずこ
美術監督:金子雄司
美術設定:平澤晃弘
色彩設計:石黒けい
撮影監督:桒野貴文
編集:木村佳史子
音響監督:木村絵理子
音楽:横山 克
音楽制作:キングレコード
アニメーション制作:動画工房
MUSIC
オープニング主題歌:カノエラナ「イロドリ」
作詞・作曲:カノエラナ 編曲:永井正道
エンディング主題歌:ツルシマアンナ「1日は25時間。」
作詞・作曲・編曲:40mP
CAST
光月まひる:伊藤美来
山ノ内花音:高橋李依
渡瀬キウイ:富田美憂
高梨・キム・アヌーク・めい:島袋美由利
みー子:上坂すみれ
瀬藤メロ:岡咲美保
柳桃子:首藤志奈
鈴村あかり:天城サリー
佳歩:松浦愛弓
美音:安済知佳
亜璃恵瑠:東山奈央
小春:瀬戸麻沙美
雪音:甲斐田裕子
保奈美店長:椎名へきる
コミカライズ
漫画アプリ「マガジンポケット」にて2024年4月よりマンガ連載開始。コミカライズを担当するのは藤居にこ先生。
ノベライズ
小学館「ガガガ文庫」にて5月・6月・7月の3ヶ月連続刊行。
著・屋久ユウキ イラスト・popman3580