迅火、真介の激闘・成長が描かれた第12話は、印河の言葉に“むなしさ”も感じた――『戦国妖狐』真介役・木村良平さんインタビュー|みんなで仕上げた第一部を最終回までぜひ見届けてほしい
真介は、序盤は視聴者目線的なキャラクター。中盤以降、徐々に役割を持った存在に
――演じる真介の印象と魅力を感じる点、ご自身と似ている点などをお聞かせください。
木村:最初は視聴者目線的な役割だったかなと。真介を通して、迅火たちの戦いのすごさや違和感みたいなものを感じられるし、視聴者は物語上、部外者でもあると思いますが、真介も段々部外者から役割を持った登場人物に変化していくのが好きです。まだ詳しくは言えませんが、第二部以降では更に皆さんにいいものを見せてあげられると思うので、ご期待いただければと思います。
――真介は本当に真っすぐで熱い男ですね。
木村:それでいて不器用で。でも気持ちはすごくわかるんですよね。
――第7話で灼岩が大きな岩に変わってからは、目がすわった感じになりました。
木村:見逃しがちではありますが、序盤からちらちら見え隠れしていたものを見ていると実はヘビーな男なんだなとわかると思います。なので、仮に灼岩のことがなくても、いずれはヘビーな部分が出てきたんじゃないのかなと。彼が目指しているものは美しく、きれいな剣豪になることではなくて、元々持っていた負の葛藤からの強くなりたい欲求だったので、いずれは乗り超えなくてはいけないものだったのかなと思っています。それをドロっとしたままいくのか、うまく消化できるのか、みたいなところが分岐点だったのかなと思います。
――演じる際に意識された点や受けたディレクションなどをお聞かせください。
木村:キャラクター性はオーディション時にある程度できたと思うので、現場でも方向性については特になかった気がします。
――灼岩役の黒沢ともよさんは「良平さんは手練れ中の手練れなので、逆に『フレッシュさが足りない』と言われながら収録されていて」とおっしゃっていました。
木村:そんなこと言われたかな? 覚えていませんが、数年後の真介の成長を見せるために年齢感みたいなものはあったかもしれません。その時のことも考えて、年を重ねすぎないように、というのはあったかも。
――先ほどのお話にありましたが、収録は迅火役の斉藤壮馬さんや、たま役の高田憂希さんと一緒にされたそうですね。
木村:一緒に旅をしているメンバーや戦う相手もいてくれたので、やりやすかったですね。
――斉藤さんは、尊敬する木村さんと「迅火と真介のような関係性でご一緒するのが久しぶりで、心で掛け合いができて、ぶつかり合えたのがとても嬉しかったです」と。
木村:彼は本当に気持ちよくしゃべらせてくれますね(笑)。
彼がデビューしたての頃から飲みに行ったり、付き合いがあったんですが、がっつり絡む機会は意外と少なくて。今回に関して言えば、彼は元々この作品が大好きで、主人公として序盤を引っ張ってくれたので、ありがたかったです。たぶん高田さんもそうだったんじゃないかな。
――高田さんは、木村さんとがっつりご一緒するのは今回が初めてだったそうですが、「魂がこもったお芝居をたくさん見られたことは刺激的でしたし、一緒に演じられて良かった」とおっしゃっていました。
木村:序盤から中盤にかけて、真介が作品のテンポを作るところにいたので、余計そう感じるんじゃないかな。
――この作品はキャストの皆さんのお芝居が素晴らしいんですが、特に木村さんのお芝居には毎回感動していました。
木村:ありがとうございます。あれだけいろいろな表情を見せてくれる役だと、こっちとしても腕の見せどころというのはありますね。特に序盤は、たまもクールな側面が多かったので。音響監督に言われておもしろかったのは、真介がダークサイドに入った時に「真介が驚いてくれないと盛り上がらないんですよね」と。確かに、「なにぃ~!?」って真介が言うとすごいシーンなんだなと思えるんですよね。
――たまや迅火と掛け合いをされた感想をお聞かせください。
木村:壮馬に関してはお互いのことをよく知っているし、割とわかっていましたが、高田さんはすごかったですね。がっつり絡むのは初めてでしたが、「こんな役者さんいるんだ」と思うくらい、小気味いい芝居をするなと。特に第一部の最終話は、俺も壮馬も高田さんに引っ張られましたよ。すごく素敵でした。そして黒沢は黒沢で、たいしたもんです(笑)。
――斉藤さんと高田さんの対談時に、黒沢さんのインタビュー時のエピソードを雑談で話したら、斉藤さんは「黒沢は盛りグセがあるからな」とおっしゃっていました(笑)。
木村:盛りグセに関して言えば壮馬も負けていないですよ(笑)。黒沢とはあまり一緒に録れなかったんですよね。それがすごく残念でしたが、でも音声を聞いたら素敵だったので。
――黒沢さんは第7話で皆さんの声を聞きながらの収録でしたが、「ここまではやれるなと逆算できるのでやりやすかった」とのことでした。
木村:確かに先に録った音声を聞きながらやる良さがありますね。それに灼岩は二役やるようなものですし。おもしろい役ですね。
真介と千夜のシーンは第二部を演じている今だからこそより印象的に
――第一部で印象に残っているエピソードやシーンを教えてください。
木村:最初に演じていた時はそこまでではなかったんですが、第二部まで演じてしまった今では、千夜とのシーンはまるで違うものに見えるんですよね。収録している時と今回資料としてもらっているものを見た時で、あまりにも違う景色だったのでビックリしました。視聴者の方にはまだ伝わらないとは思いますが、第二部を見れば意味がわかると思うので、この発言を忘れないでほしいです。
――あと真介といえば、烈深(バリー)の攻撃から妊婦を守るために灼岩が大きな岩になってしまったシーンかなと。
木村:正直思い出したくないんですけどね。でもアレははずせないですよね。2回目を見てみると、序盤から段々、灼岩が真介たちにとって大事な存在になればなるほど、しんどくなるところがあって。久しぶりに視聴者として物語を追った時に「どうにかならなかったのかな」って。でも各々の思惑で動いてしまったので、どうにもならなかったですね。だからこそ灼岩は「自分がやるしかない」と腹を決められたのかもしれないけど。半分あら探しのつもりで見たら、逆に納得させられて。だからこそ真介は「自分が力不足だったからだ」と、自分を責める気持ちもすごくわかるし、実際それは事実でもあるので。あの時の迅火も印象的で、たまにとってもそれだけは嬉しい出来事だったのかもしれません。
――全3クールと聞いていたので、こんな序盤で山場みたいなエピソードがきてビックリしました。今後これ以上の出来事が待っているのかと。
木村:そうですよね。僕も「この4人でずっと旅を続けていくんだな」という心構えでストーリーを追っていたら、あんなことになって。また、感情を爆発させるはずの真介が涙も流さずに受け止めて、「人間なんか」と言っていた迅火があれほど慟哭するというのも印象的でした。この後を象徴するシーンでしたし、一行に大きな変化を与えた話数だったなと。
――ご自身のキャラクター以外にお気に入りのキャラクターを挙げるとすれば?
木村:第6話のふこうはすごかったですね。木野日菜さんのお芝居がおもしろくて、「どうやってやっているの?」って思わず訊いちゃいました。元々いいキャラクターだし、いいエピソードだと思うんですが、僕にとっては彼女の芝居があって、より鮮烈に印象に残るエピソードでした。
あと第一部終盤まで見てしまうと、印河ですね。印河はもしかしたら一番共感しやすいというか、普通の人に近いですし。難しいところですが、灼岩も力を得なければあんなふうにはならなかったわけじゃないですか。力を得たから守りたいものが守れたけれど、結局はああなってしまって。「その時に持っている力でできることをする」というのは印河が選んだ道で、彼が思う断怪衆を今後もやっていこうというスタイルはカッコいいと思います。
――登場キャラクターはみんな何かしら背負っているのに、野禅だけ好き放題しているような。
木村:ここまで見る限りではそうですね。でもわかりやすいですけどね。大事なモノは女と仕事みたいな(笑)。
原作を読んでいなくて、アニメでお話を追っている人にはまだわからないかもしれませんが、僕はやっぱり千夜なんですよね。まだ何も言えなくて申し訳ないんですが、第二部以降も見ていただければわかっていただけるかなと思っています。
みんなで食らいついて仕上げた第一部の最終回をぜひ見届けてほしい
――ここでライトな質問も。たまは妖狐ですが「妖怪」と聞いて連想するものは?
木村:僕は世代的にすぐ水木しげる先生が思い浮かびますね。子供の頃に読んでいた妖怪図鑑も、『ゲゲゲの鬼太郎』がらみではないのに水木先生が描いていたりして。
たとえば西洋での悪魔とかは地獄に生きている超常的な存在みたいな感じがしますが、日本の妖怪って身近な感じがするんですよね。あかなめとか。この作品のテーマ的なところである、人と妖怪の関係性にも近い気がするし、だから妖怪ではなく闇(かたわら)という言葉が使われているのかもしれませんね。
――真介はたまたちと旅をしながら、武士の鍛錬も欠かしていませんが、木村さんが今プライベートで取り組んでいる、練習している趣味などあれば教えてください。
木村:去年、車の免許を取ったんですが、まだ運転が下手くそですし、乗らなくなるとどんどん下手になっていくので、なるべく運転するようにしています。
――去年取られたんですね。
木村:それまで車にはまったく興味がなくて。お酒も好きですし、東京は交通の便もいいので必要としていなかったんですが、おととしに犬を飼ってから「犬と出かけるためにも車が欲しいな」と思うようになって。なので最初は犬を乗せる時だけ運転すればいいやと思っていたんですが、運転してみると楽しくて。
でも車を買う時に、愛犬に「この車はお前のだからな」と言ったので、今では仕事で車に乗る時は「借りるね」と言ってから乗っています。
――真介は兜割りを特技としていますが、木村さんご自身は人に自慢できる特技はありますか?
木村:ないですね。自分は芝居しかできないので。強いて挙げれば、これは特技とは言えないかもしれないけど、昔から映画のタイトルを、見たことがなくても映像を見ただけで当てられることでしょうか。
例えば誰かの家に複数で集まったり、実家に帰った時とかに何気なくTVで流れている映画のタイトルを僕が言い当てると、「何でわかるの!?」とよく驚かれます。たぶんシーンから膨らませるのが得意なんだと思います。「こういうシーンがあるということは前がこうで、後ろがこうだから、こういう役割の人がいて……あっ!? あの映画ってそういうストーリーだったような!」って。たぶん物語が好きなんだと思います。
――3月27日に「世直し姉弟編」上巻(1~6話)のBDが発売されました。見どころや注目ポイントのご紹介をお願いします。
木村:ここまでアニメ『戦国妖狐』をご覧になっていただいた方でも、2周目では景色がビックリするくらい変わります。僕が原作を読まずに挑んだからこそ味わえた快感だなと、思わぬ副産物に喜んでいますが、アニメが初見だった方はここまでご覧になっていただいたことを踏まえた上でもう一度見てもらうと、楽しいシーンはワクワクしながら楽しく受け止められるでしょうし、楽しいシーンを知っているからこそシリアスなシーンや悲しいシーンもより胸に迫るものがあると思うので、ぜひBDでしゃぶり尽くしてください。
宣伝担当:上巻の特典になっている水上悟志先生の描き下ろしネーム「くずのはとたま」で、初めてたまの出生の秘密が明らかになります。
木村:それも楽しみですね。
――そして「世直し姉弟編」はついに最終回の第13話が放送されました。
木村:そうですね。お話はまだまだ続いていきますが、第13話で「世直し姉弟編」としては一つの区切りを迎えます。迅火やたま、真介たちがどう動き、どんなことが待っているのか、見届けていただけたら嬉しいです。原作を読んでいる方は第13話にどれだけの魅力が詰まっているのかご存じだと思うので、楽しみにご覧ください。
――斉藤さんが「一緒に収録した僕と高田さん、良平さん、全員が魂を出し尽くせたかなと思う」とおっしゃっていたので、とても楽しみです。
木村:そう思いますね。気持ちの上でも旅が一区切りを迎えたという感じがすごくあったし、結構何度も「もう1回録らせてください」というお願いもさせていただいて。食らいつくのはいいことである反面、何でもかんでもやらせてくれというのはいいことばかりじゃないこともキャストもスタッフもわかっていながら、でも必要なことだったなと思えるくらい、みんなで仕上げた話数です。
そして第2部の「千魔混沌編」もむちゃくちゃおもしろいので、第2部に備えるつもりで油断せずに第13話をじっくり見てください。
――最後に、皆さんへメッセージをお願いします。
木村:ここまでご覧になってくださったのなら僕からは何も言うことはありません。アニメ『戦国妖狐』のおもしろさを十分にわかってくださっていると思います。僕も今アフレコで収録しているところまでしか知りません。ぜひ全3クールの最後まで、一緒に見届けてください。
『戦国妖狐』作品情報
あらすじ
時は永禄七年(1564年)、人の営みの傍らに闇(かたわら)と呼ばれる魑魅魍魎・妖怪変化たちが息づく戦国時代。齢200年を生きる人間好きの妖狐・たまと、縁あって義姉弟となった、人間嫌いの仙道(仙術使い)の少年・迅火は「世直し姉弟」を名乗り、人に仇なす闇・障怪(さわり)退治の旅をしていた。旅の最中、障怪退治を生業とする僧兵集団・断怪衆(だんがいしゅう)と関わった姉弟は、彼らが障怪に対抗するため、人と闇を人為的に融合した存在・霊力強化改造人間を擁していることを知る。人と闇を辱める所業に、義憤の念に駆られたたまと迅火は、その行いを糾すため、武者修行中の自称浪人・兵頭真介と、断怪衆から脱走した霊力強化改造人間の少女・灼岩と共に、断怪衆総本山へと乗り込む。姉弟たちと敵対する形となった断怪衆は、その討伐のため「闇喰い人」を自称する剣士・雷堂斬蔵と、霊力強化改造人間の精鋭・四獣将を差し向ける。
キャスト
迅火:斉藤壮馬
たま:高田憂希
真介:木村良平
灼岩:黒沢ともよ
千夜:七海ひろき
月湖:内田真礼
なう:豊崎愛生
神雲:乃村健次
道錬:稲田徹
烈深:宮城一貴
山の神:高垣彩陽
りんず:鈴木愛奈
野禅:津田健次郎
くずのは:ゆかな
雷堂斬蔵:東地宏樹