『夜のクラゲは泳げない』連載第9回：美術監督・金子雄司さん｜より人物の感情に寄り添った風景になってほしい

印象に残っているシーンは、第1話の渋谷の街並み

ーー全体を通して、美術監督目線で見てほしいシーンなどがありましたら教えて下さい。

金子： それぞれのキャラクターの部屋が出てきますが、平澤さんの美術設定も素晴らしく、色の面でも人の家だなぁというような雰囲気が出たらいいなと思っておりました。また、見慣れた場所、実際行けるところを描いていることが多いので、全体像もそうですが、ちょっとしたZOOMのカットなどでも見たことのある風景になるよう心掛けました。

また、青写真という背景スタジオとしては、若手がたくさん活躍してくれた作品でもあり、ドン・〇ホーテの売り場や、MIYASHITA PARKの商店街など、通常わざわざ絵に描くことがないようなものがたくさん出てくるので楽しんでもらえると嬉しいです。

ーー第9話では壁画のシーンなどもありましたが、この話数での美術のこだわりのシーンがありましたら教えて下さい。

金子： いよいよクライマックスに向かうためのちょっと悲しいお話でした。ラストの花音の部屋が月明りで照らされているシーンなどは撮影さんにもきれいに撮っていただき、すごく雰囲気が出ていたと思っています。途中のギャグパートでの某ホラー漫画的な演出がありますが、この作品では珍しくトバした感じのイメージ背景にできたなと思います（笑）。

ーー金子さんが、ここまでで印象に残っているシーンがありましたら教えて下さい。

金子： やはり、ゆとりもあったことから第1話の渋谷の街並みでしょうか。やりすぎじゃないか心配でしたが放送後の感想などを拝読して、良き感想をいただきとっても安堵しました。また、ストーリーが後半に向かうにつれて、刻一刻の時間経過を出したくて夕日の描き方を丁寧に演出できるよう工夫しましたので見てもらえると嬉しいです。

ーー最後に『ヨルクラ』のファンへ、メッセージをお願いします。

金子： いよいよ、物語もクライマックスに向かいます。

スタッフとしてもとても面白い作品だなと感じているので、物語の行く末を楽しんでくださいませ。

作業が完了後、普通に楽しいもんで自分は何度も見返しているのですが、この作品一気見していただきますと、また違った良い印象を持たれるかと思いますので、ぜひ何度も楽しんでいただきたいです！

［構成・塚越淳一］

TVアニメ『夜のクラゲは泳げない』作品情報

あらすじ

“私”も誰かみたいに輝きたい。

明日話すべき話題も、今週買うべき洋服も、
全部スマホ（ルビ：トレンド）が教えてくれる。
何者かになってみたい——そんな願いを持つ間もないほどこの世界は忙しい。

活動休止中のイラストレーター“海月ヨル”
歌で見返したい元・アイドル“橘ののか”
自称・最強Vtuber“竜ヶ崎ノクス”
推しを支えたい謎の作曲家“木村ちゃん”

世界から少しだけはみ出した少女たちは匿名アーティスト“JELEE”を結成する。

自分じゃない“私たち”なら——輝けるかもしれない。