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『響け!ユーフォニアム3』石原立也監督が最後の演奏シーンに込めた想いとは【連載07】

最後の演奏シーンに込めた北宇治高校吹奏楽部の「今までと未来」――『響け!ユーフォニアム3』石原立也監督インタビュー|アニメの中に残すことができた宇治の情景も楽しみながら、これからも何度も観返してほしい【連載第7回】

2015年にスタートしたアニメ『響け!ユーフォニアム』の最終楽章として、2024年4月からNHK Eテレにて放送されてきた『響け!ユーフォニアム3』。

6月30日(日)に放送された第13回で、全国吹奏楽コンクールでの金賞を目指してきた北宇治高校吹奏楽部、黄前久美子たちの物語は、大団円を迎えました。

第3期の放送開始前からアニメイトタイムズにて実施してきたインタビュー連載も最終回。最後は、第1期から監督を務めてきた京都アニメーションの石原立也監督に、ラストシーンまでのすべてのネタバレを一切気にせず、自らコンテと演出を担当した第13回のこだわりポイントや、作品完結に対する想いなどを語っていただきました。

 

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響け!ユーフォニアム3
高校3年生になり、部員90人超となった北宇治高校吹奏楽部の部長に就任した、黄前久美子。久美子たち3年生にとっては最後となる吹奏楽コンクールを控え、練習にも熱が入る。悲願の「全国大会金賞」は達成できるのか? 部長として踏み出した久美子、高校生活最後の熱い青春を描く!作品名響け!ユーフォニアム3放送形態TVアニメシリーズ響け!ユーフォニアムスケジュール2024年4月7日(日)〜2024年6月30日(日)NHKEテレにて話数全13話キャスト黄前久美子:黒沢ともよ加藤葉月:朝井彩加川島緑輝:豊田萌絵高坂麗奈:安済知佳黒江真由:戸松遥塚本秀一:石谷春貴釜屋つばめ:大橋彩香久石奏:雨宮天鈴木美玲:七瀬彩夏鈴木さつき:久野美咲月永求:土屋神葉剣崎梨々花:杉浦しおり釜屋すずめ:夏川椎菜上石弥生:松田彩音針谷佳穂:寺澤百花義井沙里:陶山恵実里滝昇:櫻井孝宏スタッフ原作:武田綾乃監督:石原立也副監督:小川太一シリーズ構成:花田十輝キャラクターデザイン:池田晶子 池田和美総作画監督:池田和美楽器設定:髙橋博行楽器作画監督:太田稔美術監督:篠原睦雄3D美術:鵜ノ口穣二色彩設計:竹田明代撮影監督:髙尾一也3DCG監督:冨板紀宏音響監督:鶴岡陽太音楽:松田彬人音...

 

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2015年にスタートしたアニメ『響け!ユーフォニアム』の最終楽章として、2024年4月7日(日)からNHKEテレにて放送中の『響け!ユーフォニアム3』。6月23日(日)に放送された第十二回では、吹奏楽コンクールの全国大会に臨む北宇治高校吹奏楽部の演奏メンバーが決定。黄前久美子と黒江真由が競ったユーフォニアムのソロ奏者は、全部員の投票による覆面オーディションの結果、真由に決まりました。そして、6月30日(日)放送の第十三回(最終回)では、北宇治高校吹奏楽部にとって2年ぶりとなる全国大会が描かれます。アニメイトタイムズの『響け!ユーフォニアム3』インタビュー連載企画の第6弾では、「北宇治カルテット」が集結! 第1期からメインキャラクターの4人を演じてきた黄前久美子役・黒沢ともよさん、加藤葉月役・朝井彩加さん、川島緑輝役・豊田萌絵さん、高坂麗奈役・安済知佳さんら「北宇治カルテット」に、第12話までの振り返りや、1年生から3年生までキャラクターを演じてきた中で感じたこと、シリーズの集大成となる第13話の見どころなどを語り合っていただきました。 前回の記事 久美子と麗奈のシーンは、しびれる展開だった――『響け!ユーフォニアム3』も残すところあと1話...

 

久美子と麗奈が喧嘩できたのは、仲が良いからこそ

――『響け!ユーフォニアム!』の最終楽章であるこの3期では、主人公・黄前久美子のどのような姿を描いていきたいと考えていましたか?

石原立也監督(以下、石原):原作の感想のようになってしまいますが、部長になったことによる、いろいろな試練などを描いていきつつ、(未来の)久美子がどういう道を選ぶのかも描いていけたら良いなと思っていました。

――最初に全体のシリーズ構成を固めていく際には、どのようなことを意識されたのでしょうか?

石原:今回は、何度も演奏シーンを入れるのではなくて、今、お話ししたように、今回のメインは久美子の部長としての苦労話になるので、そちら主体の描き方で行こうという話になりました。

 

 

――ドラマを描くことにより多くの尺を使いつつ、演奏シーンの回数は絞っていったのですね。

石原:はい。例えば、(第4回の)「サンフェス(サンライズフェスティバル)」のマーチングのお話に関しても、今までだったら、少しだけでも演奏シーンがあったりしたんです。でも今回は(月永)求の話の方を描いている。そういう形で、よりドラマ主体の構成になっています。見せたいものをはっきりさせて、演奏する場合はより意味合いを考えて効果的に、ということを意識しました。

――久美子と、親友でドラムメジャーの高坂麗奈の関係性の変化や描き方に関しては、どのようなことを意識しましたか?

石原:麗奈は、何としても全国で金賞を取りたいし、(自分が)努力家の天才型なので、「みんなも練習すれば確実に成長する」みたいな考え方。久美子も、金賞は取りたいのですが、部長なので、部員たちのケアとかもしていかなきゃいけない。そういうところの考え方の違いがあって、物語の後半では喧嘩もしますが、2人がああいう風に喧嘩できたのは、仲が良いからこそだと思うんですよ。そんなに深い仲でなければ、あんな風にはぶつからないでしょうし。

――たしかにそうですね。久美子と麗奈は、3年間一緒にいて、お互いに影響を与え合いながらも、結局、久美子は久美子で、麗奈は麗奈だったというのが個人的な印象でした。

石原:今回、改めて思いましたが、麗奈は絶対に(自分を)曲げない。それは彼女の魅力だと思いますが、そうであるが故に、第12回のクライマックスでは究極の選択を迫られる。そこは面白いところかなと思います。

久美子の方は、1年生の時よりは、かなり考え方が変わったし、しっかりしてきたかなと思います。そのあたりの2人の対比も面白かったですね。

 

 

――人にも自分にも厳しい麗奈は、描き方次第で、すごく難しい子に見えてしまう可能性もあったのかなと思うのですが、特に気をつけたことなどはありますか?

石原:今、「曲げない」と言ったように、麗奈はガチッと固い子なんだけど、いつか、どこかでぽきっと折れそうな感じもあって。そういう危うさも麗奈の魅力かなと思うので、そこは意識していました。第12回では、彼女的に自分を曲げなかったけれど、心はちょっと折れちゃっていたのかもしれませんね。

――久美子と麗奈が喧嘩をしたときも、よりダメージが大きいのは、実は麗奈なのかなと想像していました。

石原:これは僕の考えというか、ただの想像ですが。(第9回で)麗奈が「部長失格ね」と言ったところ。あそこは久美子の視点でしか描かれていないわけですが、たぶん、麗奈は「ああ、久美子に言ってしまった。どうしよう……」とか思っていたんじゃないかなと。僕はそう思っています(笑)。

 

久美子の心の変化をアニメでより分かりやすく描ける展開に

――(全国大会での)ユーフォニアムのソロ奏者を決めるための覆面オーディションと、その結果は、アニメならではの展開になっています。このあたりの流れは、やはり構成の段階から考えられていたのですか?

石原:はい、構成からですね。久美子と(黒江)真由の2人だけのオーディションを行って、最終的に久美子が負けるという展開は、初期の打ち合わせの段階から挙がっていました。(シリーズ構成の)花田(十輝)さんが、原作準拠版とアニメ版の2案の構成を出してくれました。

元々、僕はどんな作品でもそうなのですが、原作準拠型の人間なので、最初にそのアイデアが出た時は色んなことを考えましたが、最終的には、北宇治のあるべき姿や久美子の成長などをより分かりやすく描ける展開を採りました。

あとは、この形にしたことで、先ほどお話しした、麗奈が究極の選択を迫られる彼女自身の信念やそこを乗り越えていく久美子の強さ、映像で描くドラマとしての面白さや、真由の救済なども描けたのかなと思っています。

 

 

――アニメの場合、この展開にすることで、北宇治が全国大会で金賞を取るまでの物語の中、さらにたくさんの要素を描けると考えて決断したわけですね。

石原:もちろん、いろいろな議論をしましたが、最終的にアニメとして作ることを考えたときに、より面白く、テーマをはっきり描けるのではないかなと考えて、この形にさせていただきました。

あと、久美子と麗奈は、卒業後は別々の道へ進むことになるのですが、たぶん麗奈は、久美子にも奏者の道に来て欲しかったのだと思うんです。でも久美子は、部長になったことも関係しているのかもしれませんが、指導者の方に興味が向く。そういった久美子の心の変化を描くのにも、アニメではこの展開の方がより分かりやすいだろうと判断しました。

――第1期で、麗奈と(中世古)香織の2人が行った「1対1のオーディション」が、このクライマックスでまた行われるという展開も熱かったです。久美子にとっても、強く心に残っていた出来事だと思うので。

石原:それが今度は、久美子自身に降りかかってくるのも面白いところですね。

――中学生のときに麗奈が言った「悔しくって、死にそう」というセリフを、『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』で久石奏が言い。今作で、ついに久美子が「死ぬほど、悔しい」と泣く。この流れもアニメならではですね。

石原:そのあたりも、花田さんにシナリオに盛り込んでいただいて、いわゆるアニメで描いてきたことの“回収”になっています。

 

 

(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024
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