
BL作品へのアプローチは“自分だったらどうするか”。『黄昏アウトフォーカス』土屋真央役・松岡禎丞さん、大友 寿役・内田雄馬さんインタビュー│尊い、寿と真央の関係性
「お互いに表現し切れているな」というところまで到達できたのは没入感のあるフルカラー映像のおかげ
――真央と寿の二人にフォーカスしたお話で印象深かったシーンや見どころは?
松岡:真央と寿が作った制約が、結果的に二人の足かせになってしまって。お互いのことが段々と大切になっていけばいくほど、二人共、自分自身を苦しめていくところが、僕の心もざわつかせました。BL作品を演じさせていただく時は、恋愛対象をあえて男性として捉えないようにしていて、「自分だったら好きな異性にどうアプローチしていくのか」と考えながら演じています。だからこの作品ではとてもじれったくて。
内田:そうですよね。自分で決めたのに、気持ちがどんどん募っていって。
松岡:寿も真央の心にどんどん入り込んできて。
内田:一緒にいる時の居心地の良さがあるんでしょうね。
松岡:「俺の心に入り込んでくるな!」と。
内田:「約束しただろう!」って(笑)。自問自答を続けているんですよね。
松岡:更に寿は言葉数が少ないからどう思っているのか、わからないし。もやもやして。結構ムズムズしますよ。でもそれがいいんだと思います(笑)。
内田:確かに真央からすれば、すごくムズムズしますよね。寿からすれば、真央の考えていることはわかりやすくて。気持ちが表情に出るので、声から「今そわそわしてるな」とか「ちょっと寄り添いたいのかな」とわかりやすいから、寿なりに上手に距離感をコントロールしていて。たぶんそれは傷つくのが怖いからでもあり、真央を傷つけたくないという優しさでもあって。
でも、その距離感ゆえに、真央もやきもきするわけです。そこが「早く気持ちを言ってほしいな」とか「お互い、素直になればいいのに」というムズムズ感につながるんじゃないかなって。だけど、ちょっとしたバランスで、二人の関係性が保てている部分もあって。それは二人の繊細さゆえで、「二人ともすごく気を遣い合っているな」と思うし、とても尊いなと思いました。
――アニメの映像をご覧になった感想をお聞かせください。
松岡:実は、最初の収録で使った映像から既にフルカラーでした。
内田:第3話くらいまで色が付いていたと思います。
松岡:最初にも言いましたが、原作の絵がそのまま動いていることにまず驚いて。感情の機微や瞳の動き、手などの体の動きを見て、「これはスタッフさんの中に『黄昏アウトフォーカス』がとても好きな人がいるな」と思うくらい、再現度が高く、繊細な動きをされていて。「この映像に声をあてることができるんだ」という感動とプレッシャーがありました。
また今回初めて音響監督の矢野さとしさんとご一緒させていただいたのですが、いざ収録が始まると、いろいろなことを容認してくださる方でやりやすかったです。また雄馬と掛け合いをしていく中で、「お互いに表現しきれているな」というところまで、できました。それは間違いなく、あの映像がなければ到達できなかったと思います。
内田:ドラマCDで演じていましたが、フルカラーの映像を見て、「こういう環境で、こういう距離感で、こういうふうに学生生活を送っているのか」という情報を視覚からたくさんもらうことができて、ありがたかったです。実際に収録すると没入感も違いました。作品自体が繊細に表現されていたので、スタッフさんもそういうところを大切にしようと思いながら作られていたんでしょうね。特に表情は丁寧に表現されていたので、「こういう時にはこんな顔をするんだ」とか情報をいただけたことで、僕らキャストも「丁寧に作るぞ!」という気持ちで演じていました。
やりたい放題を許してくれた音響監督のおかげで楽しかったけど、フルカラー映像ゆえの難しさも
――収録の中で楽しかったことや難しかったことはありますか?
松岡:キャスト陣は、役の範疇でやりたい放題していましたが、それは音響監督の采配だったのかなと。他の現場で同じようにやったら、「松岡! 何やってんだ!」と怒られると思います。でもこの現場は笑って許してくださって。「それは振りですか?」と尋ねたら「振りじゃないのよ。本番ではやらないで」と(笑)。全員、自分がやりたいことを精一杯やっているのが楽しかったです。難しかったことは(収録時の映像が)フルカラーだったことです。
内田:昨今のアフレコ現場では珍しいですよね。
松岡:これは声優あるあるなのですが、フルカラーってめちゃめちゃ難しいんです。普段だと線画や絵コンテを見ながらやっている時はボールドと呼ばれる指標が出ているので、タイミングがつかみやすいんです。フルカラーの場合は、口パク合わせになってしまうので。だから生アフレコが苦手なんです(笑)。
内田:生アフレコをする時はだいたいお客さんの前だし。
松岡:だから絶対に失敗できない。ただ逆に視覚から入ってくる情報量はとんでもなくて。線画や絵コンテの時は、頭の中で自分が補完しなくてはいけないし、「作画さんすみません。あとはお願いします」と頼ってしまうことも(笑)。
内田:そこはスタッフさんとの信頼の中でやっている部分もありますね。それにフルカラーだと、引きのめっちゃ小っちゃい顔でもパクがついていることもあって。手元と奥を行き来するようなカットもあるので、技術的な難しさはあります。
松岡:ズームしないと。「あれ? 今、かすかに動いた気がする」って(笑)。一番いいと思うのはフルカラーで、ボールドが付いている映像。
内田:確かに!
松岡:まさにパーフェクト・セル!
内田:完全体になっちゃった(笑)。みんながやりたいことをやっていたというのは本当にそうで、現場の空気感がすごく良かったので、みんな遠慮なく出し切って、重ねていく、みたいな感じで良かったです。
作品が部活動のお話でもあったので、チーム感も出ていて。寿は映画部の部員じゃなかったけど役者として呼ばれ、アウトローな寿に対しても、温かく迎えてくれるところも、収録現場の雰囲気の良さがお芝居の中に表れていて。作品が少しシャープで、ミステリアス感があるので、お芝居が温かくなるのは、アニメとしての新しい魅力につながったのではないかなと思っています。
――改めて『黄昏アウトフォーカス』という作品に対して魅力を感じる点をお聞かせください。
松岡:純粋にこの世界のどこかに本当に ありえそうなストーリーだということでしょうか。お互いに綺麗な心の持ち主たちが引かれ合い一緒になり、自分たちがかけがえのない存在になっていく。とても綺麗なストーリーだなと思います。
内田:キャラクターの表情ひとつひとつが美しく、そして色っぽい。彼らの繊細な心の描写にどんどん惹き込まれていくんですよね。
――アニメの放送を楽しみにしている原作ファンの方、アニメで初めて触れる方へそれぞれメッセージをお願いします。
松岡:本当に緻密に、繊細に作らせていただいたので、原作ファンのみならずアニメで初めて触れられる方にも満足していただける作品になっています。展開といたしましても各々ペアとなる人がいて、その2人がどういった物語を紡いでいくのかを毎週楽しみにしていただけたらなと思います。皆で精一杯表現させていただいた黄昏アウトフォーカスを、よろしくお願いいたします!
内田:表情やしぐさまで、繊細に表現されています。TVアニメでも真央達の物語をお楽しみください。『黄昏アウトフォーカス』、原作とTVアニメーション、どちらもどうぞよろしくお願いします!
作品情報
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あらすじ
不良で一匹狼の寿と、映画部で寿を撮影することになった真央。寮で同室の二人が交わした「約束」が、やがて二人を甘く縛りつけて――。
映画部部長で人気者の仁と、仁に対抗心を燃やす後輩の義一。ぶつかりながらも、やがて二人は惹かれ合い――。
無口で不愛想だが信頼の厚い副部長の礼と、季節外れの新入部員・詩音。
不意のキスから、二人の「お付き合い」が始まって――。
キャスト
(C)じゃのめ・講談社/「黄昏アウトフォーカス」製作委員会