人を惹きつけてやまない『鬼滅の刃』――竈門炭治郎の生き様から気付く幸せのヒント｜家族愛、謙虚な姿勢、向上心、彼の言動から人生を振り返る

臨機応変に考える力

炭治郎は鬼と戦う度に、相手がどんな血鬼術を使ってくるか、その鬼相手にどんな戦い方をしたらいいか、常に考えながら戦い、戦いの最中にもどんどん成長していきます。

　
刀鍛冶の里での戦いでは、鬼の半天狗から分裂した積怒が雷（いかづち）で攻撃しようとした時に、炭治郎は分裂した鬼・空喜の足で攻撃を止めます。その際に、「この小僧勘がいい　戦いの機転がきく」（コミック13巻第110話引用）と積怒に警戒されます。

その後も積怒は「あの童　さっきよりさらに速くなった　いやそもそも会った時点であの方からの情報よりも　桁違いの反射　戦いへの適応　瀬戸際での爆発的な成長」（コミック13巻第114話引用）と、ヒノカミ神楽を繰り広げる炭治郎を評価しています。状況を把握しそれに合わせた戦い方を見出し、戦いながら成長する炭治郎の姿は、鬼さえも圧倒し、諦めずに常に考え抜くことの大切さを教えてくれますね。

人間らしさ

無限列車編

任務で向かった無限列車では、炭治郎達が力を合わせ下弦の壱・魘夢（えんむ）を討伐しましたが、その後上弦の参・猗窩座(あかざ)が突然現れます。そして炎柱・煉獄杏寿郎と猗窩座の熾烈を極めた戦いの末、煉獄さんは命を落とします。

それまで仲間の死を無念に思いながらも受け入れてきた炭治郎も、その時はさすがにひどく落ち込みました。共に療養していた仲間の善逸も「炭治郎でも落ち込んだりだめかもしれないと思っちゃうことあるんだな」（コミック8巻第67話引用）と心配するほどに。

鬼殺隊に入り心身ともに鍛え、また元から前向きな性格の炭治郎でさえも、深く落ち込んでしまうような、誰もが持ち合わせる弱さがあります。炭治郎が順調に成長していく強い主人公という訳ではなく、このように打ちのめされる描写が描かれているからこそ、炭治郎が、そして『鬼滅の刃』がより心に響き、炭治郎と共に涙し共に前を向こう、と自然にストーリーに引き寄せられるのではないでしょうか。

一方煉獄さんは、無限列車では乗客二百名余りの命を守り抜き、そのまま突入した猗窩座との戦いでは後輩の炭治郎達を守り、鬼殺隊の未来を託し、家族を思いながら最期を迎えます。「心を燃やせ」を始め数々の心に響く言葉を遺し、人間の弱さと儚さを愛し守ろうとする煉獄さんの生き様は、死してなお隊士の心を支え、鬼殺隊の仲間だけでなく私たち読者の心に生き続けています。

刀鍛冶編

刀鍛冶編にて、太陽が昇ってきた際に、禰豆子を守るか、里の人たちを守るか炭治郎は「決断できない　決断…」と苦しみます。鬼を倒すこと、人の命を守ることが自分の使命であり、今までそうしてきた炭治郎。しかしこの時ばかりは、自分が行ってしまったら太陽の陽に焼かれてしまうだろう、たった一人の生き残った肉親の禰豆子から離れる事が出来ませんでした。

この時決断をしたのは、鬼の禰豆子。自らが陽の光で燃え始めているにも関わらず、炭治郎を突き放し笑顔で見送ります。この時炭治郎も覚悟を決め、今なお里の人を襲おうとしている半天狗を「命をもって罪を償え！！！」（コミック15巻第126話引用）と追い込み鬼を滅します。この禰豆子の勇姿、そして炭治郎の覚悟はスクリーンでも放送され、涙無しでは見られない名シーンとなりました。

炭治郎と幸せのヒント

鬼に家族を奪われ鬼殺の道を進む主人公・炭治郎。まだ少年の身でありながらも、辛い事を何度も何度も乗り越え、その中で希望を見付け出し、前を向いてきました。そのような彼の行いは、主人公にふさわしい立派なものですが、同時に仲間の死に打ちのめされ、自分の力不足を嘆くような、私たちと変わらない弱さも持ち合わせています。そんな炭治郎だからこそ、応援したくなり、私たちも励まされ、そして炭治郎がいるからこそ、辛い描写からも目を離さずにこの『鬼滅の刃』を読み進める事ができたのではないでしょうか。そしてそんな炭治郎の姿はたくさんの気付きと幸せになるためのヒントを教えてくれるように思います。

便利な物に溢れた今を生きる私たちと、大正に生きる炭治郎。便利で物が豊富でも、良い事ばかりではない現代ではありますが、今ある当たり前の幸せを一度振り返り、幸せを感じてみると、きっと見えてくる世界が変わってくると思います。

この『鬼滅の刃』という作品が吾峠呼世晴先生の手で生まれ、沢山の人たちが尽力して作り出された映像に声、音楽が重ねられ作り出されるアニメや映画。更に『鬼滅の刃』の舞台や宴、コンサートを観ることができる今。そしてそれが日本だけでなく世界中で愛されている。そんな今を生きられている私たちは、とても幸せですね。

柱稽古編が終わり、遂に無限城の戦いへと突入していく『鬼滅の刃』。これからは今までより更に過酷な戦いが待ち構えていますが、私たちに沢山の事を教えてくれた炭治郎を、最後まで、共に見届けていきたいですね。

劇場版鬼滅の刃無限城編

作品名劇場版鬼滅の刃無限城編放送形態劇場版アニメシリーズ鬼滅の刃スケジュール未発表キャスト未発表スタッフ原作：吾峠呼世晴（集英社ジャンプコミックス刊）アニメーション制作：ufotable(C)吾峠呼世晴／集英社・アニプレックス・ufotable『劇場版鬼滅の刃無限城編』公式サイト『鬼滅の刃』ポータルサイト『鬼滅の刃』公式X（Twitter）「劇場版鬼滅の刃無限城編」のグッズを探す

鬼滅の刃

『鬼滅の刃（きめつのやいば）』は、吾峠呼世晴による漫画作品。こちらでは、テレビアニメ『鬼滅の刃』のあらすじ、キャスト声優、登場人物、スタッフ、関連商品、オススメ記事をご紹介します。『鬼滅の刃』各作品の詳細についてはこちら

［文／西澤あさこ］