映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』戸田恵子さん×中尾隆聖さんインタビュー|「最後に頼るのがアンパンマンというのは、究極じゃないですかね」
戸田さん、中尾さんが語る『アンパンマン』の魅力
ーーこれほど長い間、世界中の人から愛され続けている『アンパンマン』ですが、アンパンマン、ばいきんまんを演じる上で、お二人が大切にしていることは何ですか?
戸田:アンパンマンの必殺技といえば「アンパンチ」です。小さいお子さんが親御さんのお腹に向かって「アンパンチ」をし始めたら、「しめたものだな」と思うんですけど……(笑)。実はそこではなくて、戦う以外の部分を大切にしています。
普段の平和な生活やパン工場での日々の何気ない営み。バタコさんが洗濯物を干す、パンを運ぶのを手伝う、学校にパンを配りに行く、困っている人がいないかとパトロールに行く。そういったなんてことない日々の生活や優しさみたいなものを大事にしていきたいなと。
中尾:この作品で一番重要なのは、ピュアな気持ちだと思っています。毎回ピュアな気持ちになれる瞬間が必ずある。それは、原作者のやなせたかし先生から受け継いだものです。
嫌なこと、大変なこともあるけど、TVを見ているお子さんと親御さんがふとピュアな気持ちになる瞬間を作れたなら、それだけで良いのかなと。スタッフ・キャストもそれを分かっているので、みんな心のどこかにピュアな想いを持って、作品に取り組んでいると思います。
ーーこれだけ長く、多くの人々から愛される『アンパンマン』という作品ですが、お二人から見て、作品の魅力はどんなところだと思われますか。
戸田:ビタミンカラーがあって、まん丸で……。恐らく大抵のお子さんにとって、とっつきやすいですし、お話もとてもわかりやすくて、親御さんも安心して観せられるんだと思います。
今では街中に『アンパンマン』が溢れていて、保育園や小児病棟などでも、アンパンマンの切り抜きを貼ってくれていますよね。最近はサッカー選手の田中碧選手、堂安律選手が「あなたにとってのヒーローは誰ですか?」という質問をされた時に「アンパンマンです!」とTVで言っていたので、思わずその瞬間を写真で撮影したんですけど……。
中尾:(笑)。『アンパンマン』を観た人たちが世界で活躍していると思うと、すごいですね。
戸田:ニューヒーローが私たちをヒーローだと言ってくれるのは嬉しいです。思わず「大谷翔平選手も観ていたのかな?」と期待してしまいます(笑)。そんな誰でも通る『アンパンマン』という作品を担えることを誇りに思いますし、光栄な気持ちです。
中尾:あとは、アンパンマンって(お腹が空いた人たちに自分の顔を分け与えて)欠けていきますよね。自分の身を削っているわけなんですけど、ああいうところも良いんじゃないでしょうか。濡れると弱ってしまいますし、完璧じゃないんです。
戸田:そうですね。こんなに長くやっていられるのは安定の何かがあるんだと思います。『アンパンマン』を卒業した子どもがいれば、また新たに『アンパンマン』を好きになる子どもが出てきて、そのサイクルをずっと繰り返していく。
お子さんが初めて話した言葉が「アンパンマン」だったというお話をよく聞くんですけど、それは作品やキャラクターの力があってこそだと思います。ひと言では言えないんですけど、『アンパンマン』の魅力は、全てやなせたかし先生の魅力なんです。『アンパンマン』=やなせ先生なので、先生が思い描くものが全て詰まっていると感じます。人を喜ばせる喜び、ものを大切にすること、見返りを要求しないとか。
中尾:本当にそうですね。
戸田:いずれはみんな大人になりますし、より尖ったものが好きになっていくんでしょうけど、この世界にいる間は、穏やかな気持ちでいてほしいですね。
[取材・文/宋 莉淑(ソン・リスク) 写真/小川遼]
『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』作品情報
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